哺乳類の細胞が、酸素だけでなく、食物に含まれる硫黄を使った呼吸(硫黄呼吸)をしていることが分かったと、赤池孝章・東北大教授(生化学・微生物学)らの研究グループが27日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表した。硫黄呼吸は原始的な細菌だけが行っており、進化の過程で失われたと考えられてきたが、ヒトなどでも生命維持に不可欠だという。 細胞レベルでは、呼吸はエネルギーを作り出す活動を指す。生物は細胞内にあるミトコンドリアで、主にブドウ糖と酸素からエネルギーを作って利用している。研究グループはヒトやマウスのミトコンドリアを詳しく調べ、アミノ酸の一種のシステインと硫黄が酵素の働きによって結びついて活性化し、エネルギーを生み出していることを見つけた。硫黄呼吸をできなくしたマウスの寿命は約10日しかなかった。
発表者 高場 啓之(東京大学大学院理学系研究科 生物化学専攻 大学院生) 西住 裕文(東京大学大学院理学系研究科 生物化学専攻 助教) 坂野 仁(東京大学大学院理学系研究科 生物化学専攻 名誉教授) 発表のポイント どのような成果を出したのか 獲得免疫を持つ脊椎動物の中で最も進化的起源が古いとされる無顎類のヌタウナギにおいて、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の有力な候補を同定し、ALAと命名した。 新規性(何が新しいのか) 無顎類ヌタウナギにおいても、自己に反応するリンパ球を排除する負の選択機構が存在することを明らかにし、また、ヒトのMHC(HLA)に相当する候補分子としてALAを同定した。 社会的意義/将来の展望 今回の発見は、獲得免疫・自己免疫寛容の理解やMHC分子の起源に迫る重要なものであり、将来、組織移植時の拒絶反応や自己免疫疾患の理解にも繋がることが期待される。 発表概要
今回発見したたんぱく質を与えて育てたミツバチ(右列)と、与えなかったミツバチ(左列)。体の大きさに明らかな違いが生まれた=鎌倉講師提供 ミツバチの幼虫を女王バチへと育てるたんぱく質を、富山県立大の鎌倉昌樹講師(発生生物学)が特定した。驚異的な産卵能力を持つ女王バチは海外から輸入している養蜂家も多いため、女王バチを人工的に大量生産することで、養蜂に生かせる可能性がある。24日付の英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。 ミツバチの女王バチと働きバチは同じ遺伝子だが、ローヤルゼリーをエサとして育てられた幼虫だけが女王バチになる。働きバチのエサは蜜や花粉。その働きバチが分泌するローヤルゼリーのどの成分が決め手となっているのかは謎だった。 鎌倉講師は、40度で30日間保存したローヤルゼリーではどの幼虫も働きバチになることを見つけた。新鮮なローヤルゼリーとの成分組成の違いを調べ、女王バチへ誘導す
オタマジャクシのような格好をしたホヤの幼生。体長は0.5ミリほど=岡村康司教授提供 背骨のない無脊椎(せきつい)動物のホヤの赤ちゃんが泳ぐ仕組みを、大阪大の岡村康司教授(生理学)らの研究グループが解明した。数少ない筋肉細胞一つ一つの収縮に強弱をつけることで泳いでいた。オタマジャクシのような形をしているが、背骨のある魚やオタマジャクシとは異なる仕組みだった。生物の進化の過程を解明するのに役立つという。24日、米科学アカデミー紀要(電子版)に掲載された。 ホヤ(カタユウレイボヤ)は成長すると岩礁にはりついているが、生後6〜7時間はオタマジャクシのような格好で泳ぎ回る。研究グループは、筋肉を収縮させる働きがあるカルシウムをどう取り込むのかを調べた。ホヤの赤ちゃんは、神経伝達物質の量の違いで開く細胞膜の穴を使って体液中のカルシウムを取り込む量を調節し、個々の筋肉細胞が収縮する度合いに強弱を
前の記事 人間の「クイズ王」と対戦、IBMの『Watson』(動画) 「愛情ホルモン」オキシトシンのダークサイド 2011年1月14日 サイエンス・テクノロジー コメント: トラックバック (0) フィードサイエンス・テクノロジー Dave Mosher 息子を抱く、米国の技術兵。背景に映る重装備軍艦『USS Bulkeley』(DDG 84) に乗り込むところ。画像はWikimedia ホルモン『オキシトシン』は、愛情や信頼などの感情を呼び起こすとされている。しかし、このほどオキシトシを男性被験者に投与した実験によって、この化学物質の「負の側面」が明らかになった。被験者らのエスノセントリック(自民族中心主義)な傾向が増したのだ。 1月10日付けの『Proceedings of the National Academy of Sciences』に掲載された論文によると、たとえば、「暴走列車
実験用マウスは飼育舎で進化、ホルモン「メラトニン」を作らず早熟に -理研が保有する世界中のマウス系統の研究リソースを駆使して発見- ポイント マウスゲノムから、未発見だったメラトニン合成酵素の遺伝子を見つける その遺伝子は、特異なゲノム領域(偽常染色体領域)に存在し、変異が起きやすい 変異が起きてメラトニンが作れなくなると早く性成熟し、飼育者にとっても有利に 要旨 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、医学や生物学の研究で広く用いられている実験用マウス(ハツカネズミ)から、ホルモン「メラトニン」を合成する酵素の遺伝子を初めて発見しました。飼育舎の中で長年にわたって飼育されてきた過程で、メラトニン合成酵素の遺伝子に突然変異が起きてメラトニンが作れなくなり、その結果、オスのマウスが早く性成熟することが分かりました。つまり、メラトニンが作れないマウスの、早く子孫を残すことができる特性が、
ガーナの首都アクラ(Accra)でサッカーをする子どもたち(2008年1月26日撮影)。(c)AFP/ABDELHAK SENNA 【12月10日 AFP】子どもに泥遊びをさせたり床に落ちた食べ物を食べさせたりすることは、成人してから心臓病などの病気にかかりにくくなる可能性があるとの研究が9日、英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society)」(電子版)に掲載された。 研究の主著者である米ノースウエスタン大(Northwestern University)のトーマス・マクデイド(Thomas McDade)准教授(人類学)は「幼少期に非常に清潔で衛生的な環境にいると、成人してから炎症を起こしやすくなり、多様な疾病にかかるリスクが高まる可能性があることが分かった」としている。 研究チームは、フィリピンの大学が行った、子ども時代の環境がタンパク
とある昆虫研究者のメモと日記。主に面白いと思った論文の紹介をしています。リンクフリー。コメント大歓迎。干からびた生物(昆虫)が元どおりに生き返るメカニズムを 物質科学の手法で解明 - 水の代替物質トレハロースが鍵を握る生物の極限乾燥耐性の仕組み - Minoru Sakurai, Takao Furuki, Ken-ichi Akao, Daisuke Tanaka, Yuichi Nakahara, Takahiro Kikawada, Masahiko Watanabe, and Takashi Okuda Vitrification is essential for anhydrobiosis in an African chironomid, Polypedilum vanderplanki PNAS published March 24, 2008, 10.1073/pnas.0
「円偏光」を感知できる特殊生物、シャコ 2008年4月 1日 サイエンス・テクノロジー コメント: トラックバック (1) Brandon Keim Image: Justin Marshall カンブリア紀に出現し、独自の進化の道を切り開いて約4億年。甲殻類のシャコは、今や地球でもトップクラスの奇妙な生物だ。 どこか奇妙かというと、シャコには円偏光というものが見えるのだ。世界中を探しても、この種の光を知覚できる生物はほかに例がない。 新たに発見されたシャコのこの能力については、『Current Biology』誌のウェブサイトに3月20日(米国時間)付けで論文が掲載されている。シャコの目の仕組みや円偏光の特性に興味がある人は、筆者が書いたワイアードの関連記事(英文記事)を読んでほしい。 そちらの記事では主に、シャコに円偏光が見える理由を解明できれば、円偏光の回転を利用して伝送中のデータ損
35時間無睡眠のサルも元気に――脳内ホルモンを鼻内にスプレー 2008年1月 8日 サイエンス・テクノロジー コメント: トラックバック (2) Alexis Madrigal 脳内ホルモン『オレキシンA』を鼻内噴霧すると、睡眠不足のサルを覚醒させる効果がある。オレキシンAには目立った副作用もなく、新しい眠気覚ましとして期待できるかもしれない。 Photo: Flickr/Mayr コーヒーはもう飲み飽きたという多くの人たちにとって、これは夢のような話だ。米国防総省の国防高等研究計画庁(DARPA)から資金提供を受けた研究チームが、眠気を撃退する薬を見つけたかもしれない。 脳内で自然分泌されるホルモン『オレキシンA』を含む鼻内噴霧薬を使うと、サルの睡眠不足が解消され、認知能力テストにおいて、睡眠の足りているサルと同程度の結果を記録したというのだ。 睡眠を30〜36時間取らせずにおいたサルた
Leading EdgeIn This Issuep757,759 [Full Text] [PDF] [Comments]Plant Biology Selectp761,763 [Summary] [Full Text] [PDF] [Comments]AnalysisFrom Exotic Spice to Modern Drug?p765 Seema Singh [Summary] [Full Text] [PDF] [Comments]EssayMolecular Understanding and Modern Application of Traditional Medicines: Triumphs and Trialsp769 Timothy W. Corson and Craig M. Crews [Summary] [Full Text] [PDF] [Comment
Live Scienceのニュース(5/22)から。Finger Length Predicts SAT Performance A quick look at the lengths of children's index and ring fingers can be used to predict how well students will perform on SATs, new research claims. Kids with longer ring fingers compared to index fingers are likely to have higher math scores than literacy or verbal scores on the college entrance exam, while children with the reverse
2006年05月14日 駆虫はアトピーを悪化させるか? [医学・科学関連] かって日本でも重要な治療課題であった腸管寄生虫感染は、むしろアトピー性疾患を防ぐという主張は次第に市民権を得つつあり、日本の数少ない寄生虫研究者のなかには、あえて寄生虫感染を意図的に選ぶ人までいるほどだ。 アトピー疾患と寄生虫感染との逆相関に関しては、今も様々に追試(例えばこういうの)が行われていて、ほぼエビデンツとして確立した感もある。だからといって、人間は多少の寄生虫ぐらい腹に飼っておくのがいいのだというと、それはそれで抵抗があるのも事実である。 一部には、寄生虫は宿主の体格まで影響を与える遺伝子発現作用操作能力があるという主張すらあり、日本人の短足胴長という体型はカイチュウに支配された結果だともいわれている。確かに、単なる栄養とか生活様式の変化だけでは、最近の若い人が急にえらくカッコよくなっていることは説明
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