波よ聞いてくれ(1) (アフタヌーンKC) 沙村広明による青年漫画『波よ聞いてくれ』に登場するこの台詞には、学生時代からラジオに慣れ親しんできたひとりとして、思わずハッとさせられた。 そう、ラジオというのは、「脱線」こそが魅力なのだ。パーソナリティの人柄やスキルにより、時に意図的に、あるいは偶発的に発生する「脱線」。それを経験した話し手と、無事に聴き届けたリスナーが、一種の共犯意識を持つ。何度もそれが行われ、地層のように積み重なり、やがて番組のカラーが決定されていく。まるで、リスナー各人も番組制作に一枚噛んだかのような錯覚。ここに、ラジオの醍醐味があるのではないだろうか。 そんな醍醐味こそを個性とするのが、2014年より『月刊アフタヌーン』で連載中の漫画、『波よ聞いてくれ』である。舞台は現代、北海道札幌市。スープカレー屋で働く主人公・鼓田ミナレは、飲み屋で語った失恋の愚痴を秘かに録音され、