ボリス・ジョンソン英首相の退場は、自身のカリスマ性や、首相の座を射止める要因となった英国の欧州連合(EU)からの離脱支持で示した大胆さと劇的に釣り合う、歴史に残る出来事だ。在任中の失政は、与党保守党ひいては世界中の保守政党に対して、経済政策の左傾化は敗北につながる戦略だという警告を発している。 保守党が長年にわたり決断できず、分裂した末に、ジョンソン氏は2019年の総選挙でEU離脱(ブレグジット)の実現を公約に掲げて保守党を歴史的な勝利に導いた。保守党は下院で、全野党を80議席上回る過半数を得た。北アイルランド問題ではEUとの対立が続いているが、英国の政治問題としてのEU離脱は解決されたように見える。ジョンソン氏はまた、ジェレミー・コービン氏が率いていた急進的な労働党に政権が移るのを防いだ。これはかなり重要な実績だ。 ジョンソン氏は7日に党首を辞任し、後任が選出されるまで首相の座にとどまる
「世界の王」になりたい ジョンソン一家のなかでも最も自己中心的で、あらゆる注目を惹きつけ、幼い頃から「世界の王」になりたがっていたのは、もちろんボリスだ。彼は保守党党首を決める投票がおこなわれた7月23日、ついに至上の報いを得ることとなった。 長男ボリスは、著名ジャーナリスト、フェイクニュース作成者(とりわけブリュッセルにいた頃)、非常にふざけたコラムニスト、ヘイトメッセージの源、中道派ロンドン市長、ブレグジットをめぐる国民投票キャンペーンでは強硬右派、と代わる代わる立場を移していった。 はっきりと言明されているわけではないが、彼が本能的に抱いている信条は、わりとはっきりしている。経済的な自由主義、そして社会制度についても自由主義だ。
画像説明, EU離脱後のイギリスのビジネスについて、事業主たちは「いらだちが募った。怖かった。売り上げが大きく落ちた。欧州での競争力が落ちた」と語った 化学、金融サービス、航空宇宙、ケータリング、そしてプレゼント用の小さな化粧箱メーカー――。小企業のオーナー12人が、私のパソコンの画面に現れた。みんな穏やかな物腰だ。
英ロンドンの英議会議事堂の大時計「ビッグベン」と英国旗(2020年12月30日撮影)。(c)JUSTIN TALLIS / AFP 【1月1日 AFP】英国は昨年12月31日深夜、欧州連合(EU)の関税同盟と単一市場を離れて「完全離脱」した。 欧州本土の大半の国が2021年を迎える1時間前の31日午後11時(日本時間2021年1月1日午前8時)、英ロンドン中心部、英議会議事堂の大時計「ビッグベン(Big Ben)」の鐘の音が鳴り響き、英国はEU加盟国としての半世紀近い歴史に幕を閉じた。 ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)英首相は国民に向けた新年のあいさつで、EUからの完全離脱について「素晴らしい瞬間」と呼び、英国を「オープンで、寛大で、外向きで、国際主義的で、自由貿易の」国にするものだと述べた。 さらに、「自由は私たちの手中にあり、謳歌(おうか)できるかは私たち次第だ」と呼び
英国が1月31日に欧州連合(EU)を離脱した。離脱を決めた国民投票から約3年半、ようやく達成できたブレグジット(英国のEU離脱)だが、これに伴って足もとの国内が揺れている。 英国という連合王国を形成する「国」の一つ、スコットランドで独立機運が再燃する気配を見せているのだ。スコットランドは人口比でイングランドの10分の1程度の約540万人の「小国」だが、もともと独立志向が強い。2014年に独立の是非を問う住民投票を行い、反対多数となって独立に向けた動きはいったん沈静化した。 しかし、16年のEU離脱を問う国民投票では約62%がEU残留を支持した。英国内の他の「国」に比べてずぬけた「親欧州」であるスコットランドでは今、「独立したうえでEUに再加盟」という考え方が勢いづきつつある。なぜ独立を望み、どうしてそれほど「親欧州」なのか――。探っていくと、イングランドなど他の英国の「国」とは異なった、ス
ついに、イギリスのEU離脱が正式にEU議会で承認された。 この際、議決後に、"Auld Lang Syne"、日本では『蛍の光』として知られる曲を、議会に出席していた議員が手をつなぎながら歌う、という光景が見られた。 最近、これが『蛍の光はもともとスコットランド民謡なのでイギリスとEUの高度な煽りあい』であるとする意見を目にしたのだが、これはシンプルに事実ではない。 BBCやガーディアン、テレグラフなど主要紙のこの件に関する記事を見てもらえばわかるはずだが、この曲に関して皮肉だなどと触れられているものはひとつもない。例えば、Brexit Auld Lang Syne sarcasm(蛍の光 皮肉)などと検索しても何も検索結果にあがらないことからもこれは明らかだ。(BBCはこの日の記事にFond farewell(優しいお別れ)という見出しを付けている) EU側の善意のもとに歌われたこの曲が
何が変わるのか? 何もかもが変わる。そして、何も変わらない。イギリスは今日から、今までとまったく違う方向へと出発する。 私たちはこれまで50年近く、欧州の法的・政治的枠組みの一部だった。それが今、プラグを一つ一つ外すように、イギリスはそこから離れる。これがどれほどの大事か、過小評価してはならない。
ベルギーの首都ブリュッセルにある欧州議会で、ブレグジット協定案の承認後、手をつないで別れの歌を合唱する議員ら(2020年1月29日撮影)。(c)Francisco Seco / POOL / AFP 【1月30日 AFP】欧州議会(European Parliament)は29日、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)協定案を承認した。議場では議員らが別れの歌を合唱するなど、感情的な光景が繰り広げられた。 英国は、時にぎこちない状態に陥りながらも、半世紀にわたりEUの一員としての立場を維持。直近の約3年間は緊迫した離脱協議を続けてきたが、ベルギー時間の2月1日午前0時(日本時間2月1日午前8時)、ついにEUを離脱することとなる。 欧州議会の議員らは賛成621、反対49で離脱協定案を承認。英国は今後、EUの各組織から離脱するものの、今年末までの移行期間中はEUの規則の大半に
中途半端な英語使いが英国からのニュースを東京で読み、あちこちふらふらうろうろ。時々嘘。 はてブ = http://b.hatena.ne.jp/nofrills Twitter = http://twitter.com/nofrills Twitterのログ = http://twilog.org/nofrills ◆「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月) ◆「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月) ◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください
「ブレグジットをやっちまえ(Get Brexit Done)」というジョンソンの訴えがイギリス人に響いた(12月11日) Hannah McKay−REUTERS <イギリス人は3年前の国民投票でEU離脱を選択してしまったことを後悔していると思ったが、フタを開ければ、強硬離脱派のジョンソンが歴史的大勝を収め、再度の国民投票を提示した労働党は大敗した。一体何が起こったのか> イギリスで12日、下院(定数650)総選挙が行われ、ボリス・ジョンソン氏が率いる保守党が単独過半数を超える365議席を獲得して、圧勝した。ここまでの議席数は、1987年のマーガレット・サッチャー首相以来。今年7月末の首相就任時には「イギリスを壊す男」とも言われたジョンソン氏はなぜ勝てたのか。 一方、社会主義的政策で若者層を中心に人気を得ていた労働党のジェレミー・コービン党首。世論調査では保守党との差を当初の20ポイントか
保守党を大勝に導いたのはジョンソン首相の剛腕なのか?(12月14日、支持者に演説) Lindsey Parnaby/REUTERS <2016年の国民投票のとき、残留支持は48%にのぼった。今では残留のほうが離脱より優勢だ。それなのに、ジョンソン首相率いる保守党の圧勝によって離脱が不可避になった。悲劇は日本でも起こり得る> 12月12日に行われたイギリス総選挙の最終結果が発表された。 保守党 365議席(+47) 労働党 203議席(-59) 保守党の圧勝である。余裕で過半数の326議席を超えた。労働党の約1.8倍の議席となっている。 3年半前の国民投票では、約48%の人がEU残留を支持した。選挙直前の12月7日のDeltapollsの世論調査によると、再国民投票があった場合の投票は、残留が45%、離脱が39%、わからないが16%だった(ただし、「再国民投票を望むか」という質問では、望まな
これを書いている現在は、イギリスで12月13日の午前0時すぎ、ヨーロッパ中央時間で午前1時過ぎである。 12日に行われたイギリス総選挙は、2時間ほど前の22時に締め切られ、すぐに出口調査の結果が発表された。 まだ正式な結果は出ていないが、出口調査は以下の通り。大変気になる投票率は、まだ出ていない。 ◎保守党:368議席(+51)歴史的大勝利 ◎労働党:191議席(−71)歴史的大敗北 ◎スコットランド国民(民族)党:55議席(+20) ◎自民党:13議席(+1) ◎プライド・カムリ(ウエールズの独立を目指す党):3議席(−1) ◎緑の党:1議席(変化なし) ◎ブレグジット党:0議席 ◎その他:19議席(うち18は北アイルランドの議席) 「やっぱり」と思う結果だった。欧州連合(EU)のたくさんの市民が、肩を落としているだろう。筆者も本当に残念だし、がっかりしている。 それでもEU機構側は、こ
10月2日保守党の年大会のジョンソン首相。背後に「ブレグジットを成し遂げる」。(写真:ロイター/アフロ) 大きな妥協ジョンソン首相が、バックストップに対して新しい案を発表した。 10月17日に行われる欧州連合(EU)首脳会議に向けて、具体案を出したのだ。 4年の移行期間の間(2020年末に終了)、北アイルランドはEU関税同盟から抜けるものの、農業だけではなく、他の分野でもEUのルールにとどまる。ただし移行期間終了時と、その後さらに4年毎に、北アイルランド議会は、EUのルールに残るかどうかを決めることができるというものだ。要するに、北アイルランドは、EUに対して「拒否権」を持っているということになる。 具体的な税関、検疫等のコントロールはどうなるのか。 ◎アイルランド島の国境については、電子化した申告のもとに、分散化した形で行われる。コントロールの数は大幅に減らし、国境にあるわけではない関連
<北アイルランド紛争が終結して20年余り、EU離脱で国境が復活すれば南北統合の機運は高まる> 丘を越え、緑の草原や深い森を抜けて延々500キロ。英領北アイルランドと南の独立国アイルランド共和国を分かつ国境線を車で走破するのは楽じゃない。カーナビは役に立たず、携帯電話の電波も時に途絶える。村の一本道かと思えば泥んこの農地を突っ切り、境界が分からない場所も多い。 今はそれでも困らない。国境を越えたかどうかは、道路標識を見れば一目瞭然だ(制限速度の標示が、北ならマイル、南ならキロで書いてある)。しかしそう遠くない昔には、この国境沿いに208カ所の検問所があり、あちこちに爆弾の炸裂した痕があった。丘の上にはイギリス軍の監視塔があり、その下で何度も銃撃戦が繰り返され、人の命が奪われていた。 1960年代後半から30年以上も続いた北アイルランド紛争では、約3600人が犠牲になった。南の独立国と一緒にな
イギリスで2人目の女性首相を務めたテリーザ・メイ氏(62)は、1人目のマーガレット・サッチャー氏と同じく、究極的には欧州をめぐる保守党の内輪もめが原因で、辞任に追い込まれた。 ただし、メイ氏はサッチャー氏と異なり、イギリス史にその名を深く刻む指導者の1人とはならないだろう。歴史に名を残すとしても、少なくとも2016年7月に首相に就任したときに、メイ氏自身が望んだとは違う形になるはずだ。 メイ氏は首相として、国内でないがしろにされた地域に手を差し伸べ、社会の「ひどい不正」を正したいと、そう願っていたのかもしれない。しかし、どういう意欲を抱いていたにせよ、メイ氏の首相としての3年弱を語る言葉はたったひとつ、「ブレグジット」だった。 前任者のデイヴィッド・キャメロン前首相が実施を決めた国民投票で、イギリス国民は欧州連合(EU)を離脱すると選択した。その決定の実現にメイ首相は乗り出し、全方位から押
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