今年もたくさんの新しい本と出会い、様々な刺激をもらってきた。だが今年読んだ本の中で、最も印象に残ったものを挙げよと言われれば、それは「再会」した一冊ということになる。それが本書『消された一家 北九州・連続監禁殺人事件』だ。 この記事の写真を見る 事件の詳細に関する記述はあまりにも凄惨で、この本が置いてある本棚の一角は邪気が漂っている気がするほどである。数年前に封印したはずのこの本を再び手に取ったのは、偶然目にしたドキュメンタリー番組がきっかけであった。 ■天才殺人鬼が全ての元凶 北九州・連続監禁殺人事件はきわめて複雑な事件であるものの、松永太という天才殺人鬼が全ての元凶である。内縁の妻とされる緒方純子は、加害者でもあり被害者でもあった。松永は緒方の家族ら7人を同じ部屋に監禁し、食事の制限、睡眠の制限、排泄の制限、そして通電による制裁を加えた。その後一家は、家族ら自身の手によって次々と殺害。