自ら死に時を選ぶ──是非はともかく、それこそ理想の最期とする考え方がある。日本では認められていない安楽死を、それでも求める人たちが増えているのだ。世界各国の安楽死事情を取材し、その成果を『安楽死を遂げるまで』(小学館刊)にまとめたジャーナリストの宮下洋一氏が、日本の安楽死に関する現状を報告する。 * * * 日本人にとって、安楽死を遂げるまでの過程は、想像以上に複雑といえる。最近、著名人が自らの死期を早めたいと声を上げ、スイスに渡る計画を立てていることが日本で話題になった。なぜスイスかというと、外国人が安楽死できるのは、その国以外にないからだ。 私は、2015年末から、2年間にわたって6か国を取材した。主にスイスでは、外国人の安楽死の瞬間を見届けてきた。そこでは、膵臓癌に苦しむ60代女性から、老いを恐れて死を決意した80代の老婦もいれば、まだ生きることが可能な難病を背負った50代の患者もい