タグ

ブックマーク / finalvent.cocolog-nifty.com (342)

  • [書評] 戦後フランス思想(伊藤直): 極東ブログ

    私は66歳にもなって自分を大人気なく思う。書『戦後フランス思想』を読んで、ああ、こういう解説は簡素によくまとまっているけど、あの時代の日の空気が感じられないなあ、と思ってしまった。ということを書くのも、大人げないが、書はそんな郷愁をもたらした。と、いうのも、あまり正確ではない。後で触れるが、書は実はとても現代的でもある。 もう少し、大人げない話をしたい。書を読みながら、十代の自分が今も自分の中にいることに気がつく。アルベール・カミュは私の少年期そのものだったからだ。なんかもう自殺しようかなと思っていた中二の私は、確か、白井浩司の書いた、フランス哲学風人生論で、カミュを知った。曰く、『シーシポスの神話』を読みなさい、というのだった。読んだ。哲学の問題は今、自殺するかしないかだとする、書にも引かれているが、その基調は、中二の心を掴んだ。不条理(なんですかコレという笑っちゃうね状況)

  • [書評] ケマル・アタチュルク (小笠原弘幸): 極東ブログ

    中公新書の新刊とされている『ケマル・アタチュルク』の表紙を見たとき、ほんの数秒だが、私にはちょっとした混乱があった。「あれ?改版したのかな」と勘違いしたのである。「ケマル・アタチュルク」という表題のインパクトが強く、その上部に記されている著者の小笠原弘幸氏の名前にふとした失念があった。が、すぐに、「ああ、『オスマン帝国』の小笠原さんか」と思い出しつつ、書を開いた。 冒頭、「トルコ共和国の首都、アンカラ。その丘のひとつに建立された、巨大な廟がある。」と読むや、私も見た、壮大なアタチュルク廟の思い出が蘇った。 書を見たときの、この、自分の、わずかだが、混乱の理由は、「すでに中公新書には大島直政氏の『ケマル・パシャ伝』があるではないか?」と連想したからである。勘違いである。それは新潮選書であり、大島直政氏の中公新書の書籍は『遠くて近い国 トルコ』である。この新書は1968年の刊と古く、先の新

  • ハマス・イスラエル停戦白紙の意味はなんだろうか?: 極東ブログ

    ハマスとイスラエルの交戦についてエジプトからの停戦案が白紙になった。そのこと自体は、あとでエジプトの関連ついて触れたいと思うが、意外ではない。ただ、この間の経緯を見ていると、意外に思うことがあった。私は、今回のハマスの行動をそれなりに計画されたもので、かつ合理的に実施されていると見ていたが、意外に無謀でかつ混乱した事態に陥ったのではないかと、疑問が沸いてきたからである。 各種報道を比較すると混乱した部分はある。まず時事「「停戦」6時間で白紙=イスラエルとパレスチナ」(参照)で拾っておく。 エジプト政府が14日、発表した停戦案では、第1段階として、イスラエルとパレスチナの双方に無条件の攻撃停止を求めた。その後、エジプト政府がカイロに双方の代表団を呼び、停戦の合意に向けて個別に協議するはずだった。治安が安定した場合「ガザとの境界検問所を開放する」ことも提案していた。 ハマスの政治局幹部はフェ

    facebooook
    facebooook 2023/11/01
    2014/07/16
  • [書評]サハリンの韓国人はなぜ帰れなかったのか(新井佐和子): 極東ブログ

    個人的になのだがこの夏はサハリンや沿海州の朝鮮人についていろいろ思うことがあり、その関連で「沿海州・サハリン近い昔の話―翻弄された朝鮮人の歴史」(参照)などを読んだ。このについては先日簡単な書評のようなものを書いたのだが(参照)、そのおり、コメント欄で強く勧められたのがこの「サハリンの韓国人はなぜ帰れなかったのか―帰還運動にかけたある夫婦の四十年」(参照)だった。精読にはほど遠いが二度読み返した。この問題に結果的に人生の大部を費やした著者ならではの貴重な記録だということがわかる。確かに、このは、サハリン問題についてまず最初に読まれるべきだろう。の概要がてらに帯分を引用する。 戦前、戦中、開拓民として、また戦時動員によってサハリン(樺太)に渡り、終戦後も同地にとどまらざるをえなかった韓国人を故郷に帰還させるべく、黙々と運動を続けた日韓夫がいた。昭和十八年末、樺太人造石油の労働者募集

  • 多国籍軍によるリビア攻撃が始まった、つまりイラク戦争2.0開始: 極東ブログ

    米英仏を中心とする多国籍軍は日時間で20日の未明にリビアへの攻撃を開始した(参照)。戦争がまた始まった。作戦名は「オデッセイの夜明け(Odyssey Dawn)」。読売新聞は「新たな旅立ち」と訳していた。ポケモンだろそれ。 日の民主党政権もこの軍事行動を支持した(参照)。日もまた戦争に荷担することになったわけである。すでに政権から離脱してしまった社民党だが、仮に依然政権に加わっていたらどうなっていただろうか、とわずかばかり空しく思った。イラク戦争の時には随分と反対していた人がいたが、そうした声はあまり聞かれないようには思った。 リビアの情勢が「イラク戦争2.0」、つまりイラク戦争を多少修飾した程度の事態になることはすでにエントリに記した(参照)し、その通りの展開となったので特段に驚くべきことはない。中国ロシアは、リビアへの武力行使を容認した国連安保理決議の採決で棄権し、多国籍軍によ

    facebooook
    facebooook 2023/09/15
    2011/03/20
  • フリースタイルのノートとヴァレリー: 極東ブログ

    ブログがご無沙汰になって久しい。 ブログを書く気力もないのかというと、正直、コロナ騒ぎのときは、書く気力も失せていた。私個人としては、「コロナ騒ぎ」にしか思えなかったが、そう書くのには問題がある世間の空気でもあった。すでに書いてきたように、マスクなんて予防に意味ないよとか書いても、予定される悶着にうんざりしていた。似たものが、ウクライナ戦争(そう呼ぶべきではないだろうが)である。これについても、言及を控えたいと思った。ウクライナについては、2014年からこのブログに書いており、その延長で思うことはあるが、日のメデイアの空気のなかで言明したい気もしない。幸いにして、この間、私は放送大学の大学院に入って修士過程にあった。その研究に概ね、没頭していた。終わった。修士レベルの中世英語の研究であるが、年末学会発表もする予定である。その研究もさらに進めたい部分はいろいろあるが、気がつくと人生の残り時

  • フランスの暴動について簡単な印象: 極東ブログ

    フランスの暴動について簡単な印象を手短に書いておくのも同時代資料的なブログの意味かもしれない。事件の発端は、先月二十七日パリ郊外セーヌ・サンドニ県で、強盗事件捜査中の警官に追跡されたアフリカ系未成年二人が変電所に逃げ込み感電死したこと。その翌日二十八日、サルコジ内相が二人は追跡されてなかったと表明したことにアフリカ系移民社会が反発し、同日金曜日の夜から移民社会の、主に未成年による暴動が始まった。休日を挟み、十一月の一週には収束すると見られていた暴動は今なお継続して世界的な関心をひく事態となった。しかし、暴動による死者はまだ出ていないようだ。 私は当初それほどたいした事件ではないと思っていた。現在日人は各国で暮らしており現地からのブログを読むこともできるからだ。そうした一例として、ブログ「ujuの日常」の七日付けエントリ”パリ郊外の暴動”(参照)ではバリの状況をこう記していた。 とりあえず

    facebooook
    facebooook 2023/07/06
    2005/11/07
  • 書評 『ヨーロッパ文学の読み方――近代篇』(沼野充義・野崎歓): 極東ブログ

    前回放送大学学部の『世界文学の古典を読む 』を聴講し、そのテキストを紹介したが、その続きで、『ヨーロッパ文学の読み方――近代篇』を聴講した。テキストはアマゾンなどでも販売されている。今見たら、残り一点とあるので、ここでその1点がはけて枯渇すると中古プレミアム価格になりかねない。放送大学テキストは他書店でも販売しているが、放送大学に問い合わせても販売しているし、なにより最寄りの学習センターも販売しているので、そっちをあたったほうがいいかもしれない。 講義およびテキストでは、扱う作品は国ごとに分けられている。 第1回 スペイン セルバンテス『ドン・キホーテ』 第2回 イギリス(1) シェイクスピア『ロミオとジュリエット』 第3回 イギリス(2) スウィフト『ガリヴァー旅行記』 第4回 イギリス(3) ブロンテ『嵐が丘』 第5回 ドイツ(1) ゲーテ『若きヴェルターの悩み』 第6回 ドイツ(2

  • 書評『世界文学の古典を読む 』(村松真理子・横山安由美): 極東ブログ

    昨日のブログ記事で、大学院で学んでいた二年間は修論研究に没頭していた、と書いたが、コロナ禍で外出は減ったこともあり、オンラインのメディアはよく見ていた。アニメとかドラマとかである。なかでも修論研究に関連するメディアに関心がむいた。そのなかで、これが一番というのが、イギリスBBC制作の全6回のミニシリーズ・ドラマで、ヒラリー・マンテルの原作『ウルフ・ホール』である。修論関連でいうと、ティンダルは話題に登ったものの人物としては出てこなかったのは残念だったが、トマス・モアはかなり焦点が当てられていた。修論でティンダルとモアの論争を論じたが、そのおりはこのドラマの風景がしばしば思い浮かんだ。 そんなふうにこの二年間、修論研究の背景的に、英国の百年戦争から清教徒革命までの時代の関心を深めていた。シェイクスピア観も変わった。シェイクスピアの史劇はこの時代なのだという実感である。それまでは四大悲劇など、

  • ブログ再開?: 極東ブログ

    長い間ブログを休止していた。この間、大学院生であったという理由が大きい。25歳に最初の大学院を中退し、それから40年かけて大学院修士を終えたという感じだ。10年前の著書には、「もう諦めた」と書いたが、子供が4人成人したのをきっかけに修士に再挑戦した。というわけで2年間、放送大学で大学院生をやっていた。ようやく修論が終わり、取得単位もクリアしたので、今月末には卒業ということになる。 この間、修論研究にけっこう専念していた。コロナ禍もあってか、朝から深夜まで研究ばっかりしていたこともある。加えて、大学院の単位取得もそう容易いということでもなかった。40年前の大学院の単位も復活できるかとも思ったけど、手続きミスがあり、諦めた。結果からいうと、それでよかった。認可待ちしていると、大学院の単位の計算が不確定になっただろう。取得単位という点では、結局、学院を2つ出たような感じだが、あれだなあ、学問の風

  • 日米地位協定は改定すべきなのだが: 極東ブログ

    朝日新聞社説「日米合意――協定改定への一歩に」を読みながら、日米地位協定(安全保障条約第六条に基づく施設および区域ならびに日国における合衆国軍隊の地位に関する協定)は改定すべきなのだがとつぶやいて、しばし考えこみ、桜並木でも見るかと散歩に出て、戻る。 当面の問題としては、米兵の犯罪だともいえる。朝日を引く。 日で殺人などの重大な罪を犯した米兵の身柄引き渡しを含む捜査手続きについて、日米両政府が地位協定の運用を改めることでようやく合意した。 日側は、容疑者の米兵の取り調べに米軍警察などが派遣する捜査官を同席させることを認めた。一方、米側は、起訴前の容疑者の日側への引き渡しについて「いかなる犯罪も排除しない」という表現を受け入れた。これまでの殺人と強姦(ごうかん)に加え、強盗や放火などの容疑者の身柄の引き渡しが実現することになる。 その解釈でいいのか、とも疑問に思うのだが、いずれにせよ

    facebooook
    facebooook 2022/10/08
    “日本人の人権は米国様のご意向より低いのか。日本がするべきことは、刑事手続き全般の改正であり、それをもとにした日米地位協定の改定であるはずだ。”
  • 今朝、なんとなく思ったこと: 極東ブログ

    ブログを10年もやっていて、最初の数年は、8月になると戦争の話題を書いたものだった。だが、数年前から意識的にやめた。もう言いたいことは書いちゃったし、自分の思いのあり方もだいぶ変わったからだ。 これを言うと批判されるだろうと思うけど、率直に言うと、もう戦争のことは忘れたほうがいいんじゃないか、と考えるようになった。 もちろん、戦争の史実を忘却せよというのではない。それは明確に反対。だけど、日の敗戦からもう長い年月が経ち、世代が代わり、戦争の直接経験者も亡くなっていくのだから、若い世代は、戦争を民族の加害・被害という観点から見るのは、減らしてもいいだろうということだ。もう少し言うと、これからは民族が互いに赦し合えるほうがいい。数年前から、そんな思いで8月を迎えるようになった。 そんな8月の日、昨日のことだが、「花アン」を見てたら、明日は放映が遅れますというアナウンスがあって、そうか、8月6

  • サハリン2は何がなんだかわからない: 極東ブログ

    専門ではないので何がなんだかわからないのだが、専門家でもそうなんじゃないかというのがエントリの主旨になる予定なので、そう、別にどうという話でもない。この間ずっと気になっていたし、潮目のような感じもするのでちょっと書いておこう。 話はサハリン2プロジェクト、略してサハ2、じゃ略しすぎ。ではサハリン2・0、ってこともなし。サハリン2は、ロイヤル・ダッチ・シェルと三井物産、三菱商事、三社が出資するサハリン・エナジーによるロシア・サハリン沖の資源開発事業だ。開発契約開始は新ロシア黎明・混沌の九四年。出資比率は順に五五パーセント、二五パーセント、二〇パーセント。というわけで、かつての日領土近くだから日の比率が多いというわけではないが、対露投資として見れば大きい。来年から原油の通年生産(日量一八バレル)、再来年から液化天然ガスの生産(九六〇トン)開始の予定、だった。が、そう行かないかもしれないとい

  • ウクライナ連邦制が落とし所: 極東ブログ

    ウクライナ情勢でそれなりに見えてきた点についてこの時点で簡単に言及しておきたい。落とし所としてのウクライナ連邦制がようやく見えてきた。 クリミアのロシア編入に続いて、西側報道ではウクライナ東部がどうなるか、ロシアに編入されるかという領土的な枠組みで話題になることもあった。だが、ロシア、プーチン大統領の出すメッセージは当初からこの点では明瞭だった。クリミアが「固有の領土」であると言及した時点で、ウクライナ東部編入はないことは自明だった。 しかしこの問題が「固有の領土」の問題ではなく、ロシア系住民の安全の問題となれば、ロシア軍が動くことは避けられないし、その覚悟も示さざるを得ない。このことは実は西側諸国も了解していたので、ウクライナ暫定政権が挑発に出ないよう気をもんでいた。 混迷にロシア政府の関与はないのか。ウクライナ東部のドネツクで政府庁舎などを占拠した親ロシア派武装勢力の背後にロシアの支持

  • ソ連崩壊の主原因は何か?: 極東ブログ

    ソ連崩壊の主原因は何か? ちょっと考えさせられることがあったので、再考してみた。話の枕に、ネットを検索してみた。 Wikipediaを見ると、日語版には「ソ連崩壊」の項目があるが、経緯をメモ書きしただけで、原因についての言及はなかった。英語版は充実していた。が、経緯が詳細なだけで、原因考察はなかった。考えてみるに、Wikipediaって、なぜ?に答えるものではない。 『世界雑学ノート』というサイトが2位にヒットした。いわゆる一般向け解説サイトのようである。それによると、「原因の一端は、ゴルバチョフが小規模な改革を繰り返すにとどまり、抜的な経済見直しを実行できなかったことにあります」とある。同時代を生きた自分でもそんな印象はある。 『世界平和アカデミー』というサイトも比較的上位にあった。内的要因と外的要因を分け、内的は①ゴルバチョフ書記長の登場、②民族主義の高揚、③エリツィンの登場、④反

    facebooook
    facebooook 2021/12/07
    “1985年、ソ連経済を支えてきた原油価格が急落した。対イラク戦争を有利に進めていたイランの資金を断つために、アメリカがサウジアラビアを促して石油を増産させたことが一因であった。”
  • 日本的陪審員制の結果のような印象: 極東ブログ

    2019年4月19日、当時87歳の飯塚幸三被告が運転するプリウスでの暴走によって、青信号の横断歩道を自転車で横断中の母娘を死亡させ、また他の通行人ら9人に重軽傷を負わせる事故が起きた。飯塚被告は自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われたが、東京地裁の裁判では、遺族には謝罪の意を告げたものの、罪状認否では「アクセルペダルを踏み続けたことはないと記憶している。車に何らかの異常が生じ、暴走した」と過失を否認し、弁護士は無罪を主張していた。裁判は9月2日に判決が下り、ブレーキとアクセルのペダルの踏み間違えはなかったとする被告の主張は否定され、「アクセルを最大限踏み込み続けた。ブレーキは踏んでいない」と認定された。この地裁判決を被告が受け入れれば裁判は終わり、禁錮5年の実刑が確定する。彼は控訴するか世間の関心が高まっていたが、今日の報道で、控訴しない意向を固めたと伝えられた。被告と面会

  • アフガニスタン戦争、西側諸国敗戦のお知らせ: 極東ブログ

    公式には言われていないし、非公式に言うのは少し早いという印象もないわけではないだが、全体動向からしてもう確定と見てよいだろう、「アフガニスタン戦争、西側諸国敗戦のお知らせ」である。負けましたね。 大営風味の西側報道を見ていても、おや?と疑問に思うような話が増えてきた。たとえば4日付けNHK「アフガン 民間犠牲者が過去最悪に」(参照)では、表題通り最悪の現状を告げている。 アフガニスタンで去年1年間に戦闘やテロに巻き込まれて死亡した民間人の数は3000人を超え、2001年にアメリカが軍事作戦を始めて以来最悪となりました。 これは、国連アフガニスタン支援団が4日発表したもので、アフガニスタンで去年1年間に戦闘やテロに巻き込まれて死亡した民間人は3021人で、前の年に比べて231人増えました。2001年の同時多発テロ事件を受けてアメリカがアフガニスタンで軍事作戦を始めて以来、最悪の犠牲者の数で

    facebooook
    facebooook 2021/08/27
    2012/02/07
  • [書評]いまこそルソーを読み直す(仲正昌樹): 極東ブログ

    ジャン=ジャック・ルソー(Jean-Jacques Rousseau)については、翻訳だが私もそれなりに主要原典を読んできた。カントのように「エミール」(参照上巻・参照中巻・参照下巻)には一種の衝撃も受けた。これは難しい書物ではない。先入観なしに誰でも読むことができる。長編の割に読みやすく、おそらく読んだ人誰もが人生観に影響を受けるだろう。特に娘をもった父親には影響が大だろう。他、「告白」(参照上巻・参照中巻・参照下巻)は、ツイッターで元夫の不倫をばらすような近代人の猥雑さが堪能できる奇書でもある。 そして、と紹介していくのもなんだが、私はこうしたルソー人への関心と、政治哲学の基礎文献でもある「人間不平等起源論 (光文社古典新訳文庫)」(参照)や「社会契約論/ジュネーヴ草稿 (光文社古典新訳文庫)」(参照)などの理解とは旨く像が結びつかない。前者の人文学者としてのルソーへの共感と、後者の

  • [書評] 英語独習法(今井むつみ): 極東ブログ

    正直なところ、この手のは読まないことにしている。英語と限らず外国語、しかも日語からかけ離れた異言語を簡易に習得する方法はないし、死んだ言語でもなければ独習というのもほぼ不可能だからだ。とはいえ、書『英語独習法』(今井むつみ)は、表題の含意とは異なり、むしろ、そのような私の持論のような内容だと聞き、それではと、読んでみた。ベストセラーともなっているらしく、しばらく在庫切れだった。ふとアマゾンを見たら在庫があるのでポチった。 読んでみて、予想通りだった。論旨としてはほとんど異論がなく、僭越ながら、自分が書いたのような錯覚すらした。その意味では、悪意で言うのではないが、やや退屈なでもあった。書店で見たら買っただろうかと問い直して、まあ、買っただろうとは思った。コーパス関連の部分は購入してじっくり読んでみたい印象があった。が、実際にその部分を精読してみると内容は薄い感じはした。というか、

  • 2011年3月11日の地震のこと: 極東ブログ

    地震被害に遭われたかたにお見舞い申し上げます。 一昨日、石原都知事が知事選にまた出馬するという話を聞いてげんなりしながら、コンビニ販売の東国原英夫「日改革宣言」(参照)を読んでいたら、ぐらっと来た。 またかと思っていると、揺れは激しくなる。これはひどい。私が経験した地震の大きな揺れのなかでも二回目くらいだ。これは震度四を越えているな、しかし直下型ではないから神戸震災のようにはならないなと思いつつ、震度五を越えるかな、いよいよ我が人生の終わりの時かと、崩れる書棚を見ていると、ようやく揺れが終わった。二度目が来た。余震という大きさではないように感じられた。怖いものだ。 テレビを付けると、震源は東北沖。あそこかと思う。岩手・宮城内陸地震と宮城県沖地震(参照)のことを思い出した。東南海地震(参照)も連想した。スマトラ島沖地震津波(参照)のようになるとも思った。 その日は終日、ゆらゆらとした余震で