最近、戦争を身近に感じる出来事が続いている。本書は、国家が“国民を戦争にかりたてるために”どんな嘘をついてきたかを、歴史上の事実を列挙してつまびらかにした本だ。ベースにあるのは、1928年にロンドンで出版された名著『戦時の嘘』。この比較的薄い文庫本は、私たち日本人が今まさに見つめ直すべきテーマについて、考えを深める契機をたくさん与えてくれる。ぜひ、ともに過ごして欲しい本だ。 想像すればわかるが、戦時の嘘が通用した時代と現代では、生活者を取り巻く環境は大きく違っている。もう同じ手は食うまい。そんな思いもわかる。しかし、日ごろの自分を振り返ってみると、メディアの報道やネットの情報に踊らされることがよくあることに気づく。思い起こせば恥ずかしながら、昨今相次いでいる捏造事件について、私は当初最大限の賛辞を贈った。本書巻末では、現代の「洗脳」技術について、ベルギーのある漫画の言葉を引用している。 現