日本が経験した戦争について知っていること、というと、自分が小さい頃に、酔っ払った祖父が軍歌を歌ったり、戦艦の話をしていたことを思い出す。母方の祖父は電気配線に詳しかったことが高じて、通信兵として軍隊で働いていたが、戦地に赴くことはなかったらしく、戦争の話をすることに抵抗はなかった。一方で、父方の祖父は満州のあたりでソ連兵との戦闘に巻き込まれ、戦中から戦後にかけて辛い経験をしたからか、自分が中学生の時に詳しく聞いた時以外、戦争の話を自分からすることはなかった。 このように自分の周りに限った事例でもわかるように、戦争とはひとりひとりの物語があり、包括して議論するのは難しい。そもそも戦争とは多面的であるし、まとめるのは無理な話だろう。いま行われているウクライナとロシアの戦争もきっとそうだ。もし戦争の本質というものを見るのであれば、一人の視点に基づいた考察、または一人の体験談に則った方がいい。例え