今のような社会情勢がやって来ることを予感していたかのように29才で虐殺されてから70年の昨年以来、小林多喜二の『蟹工船』が時代を超えて再び脚光があたり、再映画化もされた。その小林多喜二が、終生思いを寄せた女性、タキ(旧姓田口)が、老衰のため 今年6月19日に横浜市青葉区の介護老人施設で死去していたことを親族が今月10日、明らかにした・・・・101歳だった。私は、「蟹工船」がブレイクして、多喜二が現代によみがえるのを、彼女は見届けてから天寿を全うされたような不思議な感慨を抱いている。 タキは、北海道小樽市の料理屋で働いていた16才のとき、当時銀行員で21才の多喜二と出会った。多喜二は美貌で評判だった彼女に惹かれ、小樽や東京で一時期同居して結婚を望んだが、実現しなかった。弟妹たちの面倒を見なくてはいけない彼女が身を引いたと伝えられている。 エリート銀行員だった多喜二は、タキとの交流を通じて人間