北朝鮮の拉致問題解決を「最重要課題」に掲げた安倍晋三元首相。第二次安倍政権発足直後には拉致被害者家族たちに「完全に解決する」と約束、2014年に「ストックホルム合意」も成立させたが、以降、北朝鮮との交渉は停滞した。いったい何が起こっていたのか。長年、拉致問題解決に尽力してきた前参議院議員・有田芳生氏の著書『北朝鮮拉致問題 極秘文書から見える真実』(集英社新書)から一部抜粋、再構成して紹介する。なお、本文中〈〉内の記述は極秘文書からの引用である。 新たな拉致を認めた北朝鮮 北朝鮮はストックホルム合意後の水面下交渉で、2014年秋と2015年に重大な情報を日本側に通達していた。政府認定拉致被害者である田中実さんと、認定はされていないが拉致の可能性を排除できない行方不明者の金田龍光さんが、平壌で生存しているというのだ。 田中実さんは神戸出身。幼いころ両親が離婚し、養護施設で育った。金田龍光さんも