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思想と書評に関するnamawakariのブックマーク (36)

  • 東浩紀『訂正可能性の哲学』|KIRA Takayuki

    つい昨日に発売された、東浩紀『訂正可能性の哲学』(ゲンロン、2023年8月)と『観光客の哲学 増補版』(ゲンロン、2023年6月)を読んだ。 私はこの著者のよい読者ではない。『訂正可能性の哲学』もよいだと思えなかった。ルソー、プラトン、ポパー、ウィトゲンシュタイン、アーレント……といった有名な哲学者の代表作をいきなり読んで(つまり近年の研究などはほとんど参照せず)、過度に単純化しながら連想ゲームで「ゆるいつながり」を作っていく。確かに読みやすいし、なるほどこういうふうに読ませるものかと感心させる部分はある。しかしそれは哲学的には意味のないレトリックを超えるものでない。もちろん一般向けの著作だから細かい解釈でどうこう言わずとも、何かオリジナルなアイデアが展開されていればそれでよいのだが、今回は「訂正可能性」という言葉でなんでもつなげている(たとえば第一部の鍵となる「家族」という言葉だが、こ

    東浩紀『訂正可能性の哲学』|KIRA Takayuki
    namawakari
    namawakari 2023/09/09
    撫で斬り。でも的確。
  • 鈴木『なめらかな社会とその敵』ヒース『ルールに従う』:社会の背後にある細かい仕組みへの無配慮/配慮について、あるいはツイッターでなめ敵とかいって喜んでる連中はしょせんファシズム翼賛予備軍でしかないこと - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    なめらかな社会とその敵 作者:鈴木 健発売日: 2013/01/28メディア: 単行 未来のための社会像? 『なめらかな社会とその敵』の想定読者は三百年後の未来人。そこからすれば評者は未開の土人だ。しかしその未開人にも、謙虚な筆致に隠れた著者の熱意と意気込みはわかる。新しい通貨システムの案出など、ジョン・ローの不換紙幣やデヴィッド・チャウムの電子通貨以来かもしれない。しかもその射程はそもそもお金の意味すら変え、社会自体の変革を夢見る遠大なものだ。 著者は、題名通りのなめらかな社会を夢見る。人々の有機的なつながりがたもたれ、様々な関係性の途切れない世界。現代のお金による取引はそれを荒っぽく分断する。投票も一かゼロかの粗雑な選択を迫る。だが、インターネットを使えば、お金も投票もまったくちがった形態を持ち得る。関係性を保ち、様々な評価のフィードバックもある通貨システムもできる。粗雑でない細やか

    鈴木『なめらかな社会とその敵』ヒース『ルールに従う』:社会の背後にある細かい仕組みへの無配慮/配慮について、あるいはツイッターでなめ敵とかいって喜んでる連中はしょせんファシズム翼賛予備軍でしかないこと - 山形浩生の「経済のトリセツ」
    namawakari
    namawakari 2023/04/08
    “その粗雑さをなくすこと自体にひそむ危険性”この辺はさすがに鋭い。近代の労働搾取の矛盾を解消しようとして別種の矛盾のうちに敗れた共産主義の失敗を忘れてはいけない。
  • 仲正昌樹『統一教会と私』 - キリンが逆立ちしたピアス(ブログ版)

    あるオンライン署名活動*1をきっかけに、統一教会が話題になっている。 私は、統一教会はカルトであり、入会を希望しない限りは決して近づかないほうがいい団体だと考えている。ただし、悪魔化するものよくないと思い、たしか仲正昌樹氏が自分の入信体験をにしていたと記憶していたので、検索して見つけた。タイトルもストレートな『統一教会と私』である。 統一教会と私 (論創ノンフィクション 006) 作者:仲正昌樹 論創社 Amazon このは、以前、出版された『Nの肖像』を増補・新装で出版社を変えて出したらしい。 Nの肖像 ― 統一教会で過ごした日々の記憶 作者:仲正 昌樹 双風舎 Amazon 大変面白いだったが、なんとも言えない。まず、こので仲正さんは統一教会の教義やシステム、勧誘、信者の活動について明確に説明している。教義については、従来のキリスト教との聖書の解釈の違いがわかりやすく述べられる

    仲正昌樹『統一教会と私』 - キリンが逆立ちしたピアス(ブログ版)
  • 埴谷雄高「政治論集」(講談社)-2 埴谷やレーニンの思想にはこの〈私〉と国家(という観念)だけがあって、その間の組織や集団や大衆、あるいは隣人、外国人などが入ってこない。 - odd_hatchの読書ノート

    2021/06/18 埴谷雄高「政治論集」(講談社)-1 1973年の続き 発行された1973年では共産主義や革命運動の党の問題は重要で深刻だったが、50年もたつと歴史的文書になってしまう。早い時期からスターリニズム批判をしていたということで、この論集は珍重されたのだろう。 作中にあるようにレーニン「国家と革命」と格闘して屈服した経歴を持つので、作家は現在(当時)の党や国家の問題を批判するのに、レーニン主義を利用し、「国家と革命」を引用する。俺のつたない読みでは、レーニンからして問題があると思う。レーニンの革命家の非人間性とか、組織乗っ取りの方法論とか、革命によって人権侵害問題が解決すると考えるようなところ。 odd-hatch.hatenablog.jp 埴谷やレーニンを読んで思ったのは、こういう人たちの思想にはこの<私>と国家(という観念)だけがあって、その間の組織や集団や大衆、あるい

    埴谷雄高「政治論集」(講談社)-2 埴谷やレーニンの思想にはこの〈私〉と国家(という観念)だけがあって、その間の組織や集団や大衆、あるいは隣人、外国人などが入ってこない。 - odd_hatchの読書ノート
    namawakari
    namawakari 2021/06/19
    “埴谷やレーニンを読んで思ったのは、こういう人たちの思想にはこの<私>と国家(という観念)だけがあって、その間の組織や集団や大衆、あるいは隣人、外国人などが入ってこない”セカイ系か。
  • 自然主義のソフトランディングのために―地動説から監視社会まで― - 梶ピエールのブログ

    bigcomicbros.net ビッグコミックスピリッツに連載されている『チ。―地球の運動について―』は連載を楽しみにしているマンガの一つだ。15世紀の、科学革命以前のヨーロッパにおいて、まさに命がけで「真理」を追究しようとする名もなき知性たちに焦点を当てた作品だが、最近になって印象的に登場したと思ったらすぐに最期を迎えたピャスト伯をはじめ、敵役の天動説を信じている人々の描写も素晴らしい。 このマンガを読むとき、僕たちは、主人公たちが「なぜ命を懸けてまで地動説を追求しようとするのか?」という点に目を奪われがちだが、むしろ問うべきなのは「当時の人々はなぜ地動説をそこまで危険視していたのか?」ということではないかと思う。それには恐らく当時の神学と一体になっていた、「運命論」を含む目的論的自然観を理解することが不可欠になるだろう。天動説は「神の意志」を反映した目的論的な自然観から導かれたもので

    自然主義のソフトランディングのために―地動説から監視社会まで― - 梶ピエールのブログ
  • 言語において失われるもの

    まだちょうど半分くらいのところまでしか読んでいないが、これはすでにして名著の予感。ダニエル・ヘラー=ローゼン『エコラリアス——言語の忘却について』(関口涼子訳、みすず書房、2018)。副題にあるとおり、言語の諸相において忘却されるものについての試論。忘却されるものというか、要は言語において失われるものについての検討というところ。それはたとえば言語取得に際しての幼児の喃語に見られる異質な発音だったりするだろう(1章)。けれどもその痕跡の一部はオノマトペや感嘆詞・間投詞に残存もしくは復活する(2章)。音素もときに消滅すること(4章)は、たとえばフランス語の無音のeや、hで表される各国語の帯気音の衰退(5章)に託されて語られている。言語に生死の概念を当てはめるという伝統についても検討されていて、どうやらそれがイタリア・ルネサンスに遡ることも紹介されている(7章)。「言語の死」といった生物学的メタ

    言語において失われるもの
  • 科学主義と、通底する立場の存在 金山「武谷三男論 科学主義の淵源」 - オシテオサレテ

    昭和後期の科学思想史 作者: 金森修出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2016/06/30メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見る 金山浩司「武谷三男論 科学主義の淵源」『昭和後期の科学思想史』金森修編、勁草書房、2016年、3–47ページ。 力作である。武谷三男は著述家としてのその長い経歴のなかで、じつにさまざまな問題について発言してきた。その膨大な著作群を読みとくことで、いくつもの論点を共通してささえている彼の根的な考え方をあきらかにしている。その考え方とは、「科学主義」である。武谷によれば、人間はがんばって自然のあり方をあきらかにしていけるし、またそうしてきた。ここでの人間というのは、あらゆる制約から自由に、客観的に自然を探求する者を指す。制約とは資政治の論理といった「非科学的」な要因である。これは裏をかえせば、経済的・社会的・政治的な要因は科学にとって

    科学主義と、通底する立場の存在 金山「武谷三男論 科学主義の淵源」 - オシテオサレテ
  • 吉川浩満『理不尽な進化』 - logical cypher scape2

    進化論についての言説史的な(?)エッセー(?)。どういうなのか一言で説明するのはちょっと難しいが、「何故非専門家は進化論について誤解するのか」「何故グールドは混乱した議論を展開したのか」という問いをたて、非専門家やグールドがアホだからとはせずに、進化論にはそういう罠が仕掛けられているのではないかと論じていく。 進化論という取り上げているテーマ自体は、科学・生物学ではあるが、問いの立て方や議論の展開は、人文書的であると思う。 科学哲学や生物学の哲学か、といえば、そういうところもないわけではないが、いわゆる「科学哲学」や「生物学の哲学」と書はやはり興味関心の所在が違う。 あるいは、一種の「批評」かもしれない。 批評の面白みの一つとして、「この○○を使って××を読み解くのか」という組合せの妙、みたいなものはあると思う。これが妙になるかトンデモになるかは、書き手の腕次第ということになるが。 こ

    吉川浩満『理不尽な進化』 - logical cypher scape2
  • '14読書日記38冊目 『岩波講座・政治哲学1 主権と自由』 - Hello, How Low?

    主権と自由 (岩波講座 政治哲学 第1巻) 作者: 小野紀明,川崎修,川出良枝,犬塚元,宇野重規,杉田敦,齋藤純一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2014/03/27メディア: 単行この商品を含むブログ (7件) を見る岩波講座・政治哲学全巻読書プロジェクトを一人でやってます。amazonなんかでもこのシリーズのどれにもレビューがついてなくて、新聞にも書評も出ていないっぽいし、悲しいですね。大学の政治思想史とか社会思想史の授業を聞いてもうちょっと深く学びたいなと思う人には格好のシリーズなので、もっと売れるといいのになあ。書のラインナップは以下。 序 論 川出良枝 I 国家像の変容 1 マキァヴェッリ――自由と征服の政治学 鹿子生浩輝 2 ルターとカルヴァン――近代初期における身体性の政治神学 田上雅徳 3 サラマンカ学派――「野蛮人」と政治権力 松森奈津子 II 主権国家の成立

    '14読書日記38冊目 『岩波講座・政治哲学1 主権と自由』 - Hello, How Low?
  • 潜行せよ、とナベールは言う……

    これは個人的に、久々に(ある意味で)心躍らされる一冊。ジャン・ナベール『悪についての試論 (叢書・ウニベルシタス)』(杉村靖彦訳、法政大学出版局)。ナベールは初めて読んだし(というか、同書が初の邦訳なのだそうだ)、そもそも名前も知らなかったのだけれど、なるほどその内省に内省を重ねていく重厚な思考と論述は、ある種のフランスの思想的伝統を感じさせる(原書は1955年刊)。確かに晦渋ではあるものの、読み手にとってはある意味、強壮剤のようなテキストかもしれない。人が抱える「悪」には、道徳的規範への侵犯といったレベルには収まらない、源的な悪というものがあるのではないか……考察はそこから始まる。なぜそう考えられるかといえば、それはなにがしかの行為や、その他のなんらかの現実に対して、「正当化できない」という感情を抱くことがあるからだ。それはきわめて原初的な感情であり、それを生み出す大元のところには、規

    潜行せよ、とナベールは言う……
  • 社会政策・労働問題研究の歴史分析、メモ帳 稲垣良典『現代カトリシズムの思想』を読んで

    社会政策・労働問題研究について歴史的なアプローチで研究しています。ここではそのアイディアやご迷惑にならない範囲で身近な方をご紹介したいと考えています。 釜石から帰って来るので、持っていったもなんか読む気分じゃないしと思って、シープラザに入っている古屋さんの親書を眺めて、稲垣良典先生のを買いました。これは大当たりでした。 稲垣先生と言えば、トマス・アクィナスの研究者として有名ですが、このは1971年、先生が43歳のときに書かれたもののようです。1970年代当時の世相において、カトリシズムがどのような意義を持つのか、最新の動向も踏まえながら、まさに思想=実践的な立場から書かれています。私の独断と偏見で言えば、近代のキリスト教は二回、大きな転機を迎えています。第一に、19世紀末、レオ13世が「レルーム・ノヴァールム」と呼ばれる回勅を出したときで、これはキリスト教が社会問題への認識を示し、

  • 重田園江『社会契約論』(ちくま新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    12月1 重田園江『社会契約論』(ちくま新書) 8点 カテゴリ:思想・心理8点 自分の考えとは「違っている」なのだけど面白かった。 タイトルはシンプルに「社会契約論」というものなのですが、社会契約論で名前のあがるロックについてはスルーしていますし(副題は「ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ」)、全体的にバランスのとれた入門書のようなものではありません。 かなり著者の個性が出ているで、ロールズを通してルソーを、ルソーを通じてヒュームを読み込むといった具合に、それぞれの思想家を幅広く紹介するのではなく、著者の関心に沿って思想家の特徴をえぐりだしています。 特にロールズを通したルソーの読解は見事で、「一般意思」というルソーの謎めいた概念に対する一つの答えを見た思いがしました。 まず、ロックがスルーされている理由。 基的に社会契約論といえばホッブズ、ロック、ルソーの3人で、そのアイディアを

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  • アカデミック・キャピタリズム時代にハーバマスの「近代:未完のプロジェクト」を読む | Theoretical Sociology

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    namawakari
    namawakari 2013/09/07
    撫で斬り
  • 文庫でここまで読める、社会科学の古典150冊

    前に岩波文庫の青帯で西洋思想がどこまで読めるかのリストを作った。 ここまで読める、連れて歩ける→岩波文庫青帯で読める西洋思想の基書70冊 読書猿Classic: between / beyond readers あの時除け者にされた岩波文庫 白帯に光を当てるのと、いっそ文庫なら岩波に拘らず、社会科学の古典がどこまで読めるかやってみた。 社会科学というのが、それから古典というのが、いったいどこからどこまでを指して言うのか、異論はもちろんあり得る。が、みんなが納得いくものができないからといって何もやらないというのは末転倒である、と尊敬する生徒会長も言っていることだし、リストを始めよう。 (関連記事) ・言われなくても読んでおくべき岩波新書青版をオススメ順に力の限り紹介する 読書猿Classic: between / beyond readers ・一人で読めて大抵のことは載っている教科書(

    文庫でここまで読める、社会科学の古典150冊
  • 呉智英の吉本隆明批判本が雑すぎ! - 本と奇妙な煙

    kingfish.hatenablog.com 上記の続き。 呉智英は吉隆明、小林秀雄、花田清輝が難解文で自分達をエラソーにみせてる奴等であると雑に論じている件を検証。 一応予備知識としてこちらを(→kingfish.hatenablog.com)先に読んでいただくと、呉のいい加減さがよくわかると思います。 吉隆明という「共同幻想」 作者: 呉智英出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/12/07メディア: 単行購入: 2人 クリック: 36回この商品を含むブログ (14件) を見る36〜37ページ。問題の部分をデカ字にした。 小林秀雄(一九〇二〜一九八三)は、その名を冠した文学賞が設立されているほど著名な評論家であり、吉隆明も二〇〇三年に小林秀雄賞を受賞している。 (略) 私とは違い、吉隆明は、自分の親の世代に近い小林秀雄をかなり高く評価している。(略) [「小林秀雄―

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  • この国を知る、見る、振り返るための岩波文庫青帯(日本前近代篇)40冊

    Author:くるぶし(読書猿) twitter:@kurubushi_rm カテゴリ別記事一覧 新しいが出ました。 読書猿『独学大全』ダイヤモンド社 2020/9/29書籍版刊行、電子書籍10/21配信。 ISBN-13 : 978-4478108536 2021/06/02 11刷決定 累計200,000部(紙+電子) 2022/10/26 14刷決定 累計260,000部(紙+電子) 紀伊國屋じんぶん大賞2021 第3位 アンダー29.5人文書大賞2021 新刊部門 第1位 第2の著作です。 2017/11/20刊行、4刷まで来ました。 読書猿 (著) 『問題解決大全』 ISBN:978-4894517806 2017/12/18 電書出ました。 Kindle版・楽天Kobo版・iBooks版 韓国語版 『문제해결 대전』、繁体字版『線性VS環狀思考』も出ています。 こちらは10刷

    この国を知る、見る、振り返るための岩波文庫青帯(日本前近代篇)40冊
    namawakari
    namawakari 2013/02/11
    “荻生徂徠は正しく「『武士道』なるものはない、『武芸』があるだけだ」と言った。しかし「武芸」が失われたところに「武士道」は成立した”/“乱暴に言うと、平田篤胤は、江戸時代の小室直樹である”吹いた。
  • 笠井『新版テロルの現象学』:左翼運動を清算するといいつつ未練を残し、アニメに逃げた本。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    新版 テロルの現象学――観念批判論序説 作者:笠井 潔発売日: 2013/01/31メディア: 単行 はじめに しばらく前にちょっと嫌みなことを書いて、やっと編を読みました。あー、そういえばこんな話だったねー、と思うと同時に、正直いって現代的な価値があるだとは思わなかった。笠井一人が、自分だけのために必要としていた整理でしかなく、それを他人が共有すべき必然性は特にないと思ったのだ。それは昔もそう思ったし(たとえばこのオローク『ろくでもない人生』あとがきを参照)そして、いままた読んで、なおさらその思いを強くした。 いやそれどころか、書は自分がやろうとしたいちばん根のところをごまかして、自分が批判したその枠組みにまさにすっぽりはまりこんでいると思う。今回、新版になってついたとんでもなく長くて混乱した増補は、まさにそのごまかしを隠しきれなくなった結果だ。久々に手に取って、ぼくはそう思っ

    笠井『新版テロルの現象学』:左翼運動を清算するといいつつ未練を残し、アニメに逃げた本。 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • 和辻哲郎論 - ミズラモグラの巣で

    なかなか書き進めずたまたま手近にあったこのを手に取ったら、困ったことに私が取り上げたいと思った論点の少なからずがこのの中で指摘されている。これまで読んできた和辻がらみのでここまで踏み込んだものはなく、また、この議論にまともに言及しているものもない。とすれば、私としては別の視点から同様の議論を再構成し、新しい知見を付け加えるべく努力すべきなんだろうな。戦後になり、 そのときの和辻の見解は、天皇主権から国民主権への国家体制の根的変革にもかかわらず、国民全体性の表現者としての天皇の地位にはなんらの変更も生じない、そしてこの天皇によって示された教育勅語の内容は、国民国家の立場にふさわしい道徳要領として、戦後社会にもそのまま通用する、というものであった。和辻の『倫理学』および『日倫理思想史』はこの見解に立つことによって完成されている(13頁)。 何もいうことはない。両方読めばふつうそう思う

    和辻哲郎論 - ミズラモグラの巣で
  • 呉智英の吉本隆明批判本がかなりヒドイ - 本と奇妙な煙

    今から呉智英の吉隆明批判がいかにヒドイかということを検証していくのだけど、呉智英をエライと思っている(いた?)人間としては、呉がアホだと証明していけばいくほど、こちらもアホだということになり、非常に気分が暗くなる作業なのである。 このの一番不愉快な部分は呉の都合のよい吉像に、さりげなくミスリードするやり方。 例えば「かつて吉は戦後思想家ベスト3の一人だと語り、自著読書ガイドで吉の「共同幻想論」を重要とした呉智英は、吉の死後すぐ彼についてのを出した」と書いて、事実誤認はない。しかしここには呉智英が吉信者であるかのような印象を与えようとする悪意が後ろにある、そう、正確には「客観主義的な言い方をしますと」というフレーズが「ベスト3に入る」という見解の前についている等々。こういうやり方はあまりフェアなものだとは思えない。ところが呉はそのようなちまちまとした印象操作をうすーくちりば

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  • 「普遍性」をいかに追求するか、という課題 - 梶ピエールのブログ

    人は中国をどう語ってきたか 作者: 子安宣邦出版社/メーカー: 青土社発売日: 2012/11/21メディア: 単行購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (5件) を見る 前回のブログ記事の最後に、このについて「書に感じた「ちょっと待てよ」という違和感の由来を整理してみたい」と書いた。同時に、「日中に通底する普遍的な(ぶれない)価値判断の軸を持つこと」および、「その価値判断の軸に照らして、それと大きくずれた現象が生じたときは、社会に対して何らかのアクションを起こす」ことをよしとする著者の姿勢に共感する、ということも述べた。 実は、僕が書に感じる第一の違和感も、後者にあげた日中間に通底する「普遍的な価値判断の軸」にかかわる。書の記述からは、それが大事だということはわかっても、普遍性を具体的に練り上げていくための、道筋が示されていないように思うのだ。例えば、書の尾

    「普遍性」をいかに追求するか、という課題 - 梶ピエールのブログ
    namawakari
    namawakari 2013/01/28
    “アジア近隣諸国に対する公平かつ寛容な姿勢と、経済的リアリズムに支えられたリベラリズムが、同じ思想的主体の中になかなか統合されないという、…日本の思想的土壌を、徹底的に問題視しなければならない”