疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。とくに槍玉に挙げられたのが夜の繁華街である。「夜の街」というタイトルでホストやホステスのいる店が感染源であるかのように扱われた。 わたしは個人的にそうした接待を受けるのが好きではないので、接待する人と身を寄せあって話したりすることはないのだが、友人知人と飲みに行くことはけっこうあった。知らない人と話すのも好きで、行きつけというほどではないが、近所のバーにもときどき行っていた。 それもこれも疫病流行前の話である。そうして疫病前の生活が戻ってくることはおそらくない。世界はすっかり変わった。変わって、元どおりになることはきっとない。そこには夜の繁華街で気軽にちょっとした友人知人や知らない人と話すという選択肢はなくなった。もちろん、その選択肢を「自己判断」「自己責任」で設置して実行する人もいる。しかし、わたしはその判断をしない。