現代の世界は数え切れないほどのイノベーションが連鎖することでかたちづくられた。本書の著者スティーブン・ジョンソンが前著『世界をつくった6つの革命の物語』で示したように、ある分野のイノベーションは全く別領域でのイノベーションを誘発し、ときに想像すらできない変化をもたらしうる。印刷機の発明はインターネットを、衛生観念の発達はマイクロプロセッサを生み出した。著者はこのような予測できないが因果関係の明確なイノベーションの連鎖を「ハチドリ効果」と呼ぶ。 それでは、このようなイノベーションを駆動しているものは何だろうか。それは、より長く生き多くの子孫を残したいという生存本能だろうか、はたまた自由・平等・自立を求める高尚な思想だろうか、それともより効率的な生活を求める改善思考だろうか。もちろん、明確な効用をもたらす必需品を人類は強く求め続け、ワクチンのように有用なイノベーションをもたらした。しかし、必需