小田たちの発見は出発点にすぎない。人間自身が作り出したこの地球規模の環境災害を少しでも軽減したいなら、この細菌はもっと迅速かつ効率的に働く必要がある。 イデオネラ・サカイエンシスに関する最初の実験で、彼ら研究チームはこの細菌と一緒に長さ2センチ、重さ0.05グラムのプラスチックフィルムを試験管に入れ、室温で放置した。すると、細菌は約7週間でこの小さなプラスチックを分解した。 極めて印象的な結果ではあったが、プラスチック廃棄物に有意義な影響を与えるには、そのスピードはあまりにも遅すぎた。 幸い、この40年間で科学者たちは酵素の設計や操作に驚くほど習熟した。プラスチックの分解に関していえば、「イデオネラ酵素は進化のごく初期段階にあります」と、ポーツマス大学の分子生物物理学教授、アンディ・ピックフォードは述べる。 「イデオネラ酵素を進化へと導くことが、科学者たちの目標なのです」 微生物たちの驚く
フライパンのコーティングやファストフードの包装紙に使われる熱や薬品に強い物質「ペルフルオロアルキル物質・ポリフルオロアルキル化合物(PFAS)」は、極めて長期にわたって環境中に残留することから「永遠の化学物質」という扱いを受けて健康への悪影響が懸念されています。新たな研究により、環境に優しいという名目で導入が促進されている紙・竹製ストローにはプラスチック製ストローよりも多くのPFASが含まれていることが分かりました。 Full article: Assessment of poly- and perfluoroalkyl substances (PFAS) in commercially available drinking straws using targeted and suspect screening approaches https://doi.org/10.1080/1944
材料が手に入らずマイホームが建たない 「そんなに遅れるの?」 キッチン用品の展示場では来店するお客から、そのような感想が多数寄せられたという。2020年から2022年にかけて、システムキッチンを展示しているのに、売れても納品ができない。給湯器等も仕入れられない。納期が遅延する前提で売らなければならない。建設資材ではほぼすべてが影響を受けた。 コンクリート、キッチン、および給湯器などキッチン備品、アルミサッシ、壁のクロス、その他、センサー付きの照明器具、トイレ設備、換気扇、コンロ、IHヒーター……。建設資材は価格が全面的に上がり、工期に影響した。 この時期に住宅を建てた人を失望させた。基礎工事が止まる、材料が届かないといわれ別場所での仮住まいを長引かせることになった。挙句の果てには、見積もり費用が異常に膨らんだ。「ふざけるな」と怒りをぶつけても、現場の担当者にとってもどうしようもない。木材が
近年、カブトムシが住宅街の庭木「シマトネリコ」に昼夜問わず大集結するという奇妙な現象が、各地で目撃されているのをご存じでしょうか。「ダーウィンが来た!」のディレクターとして、謎の解明に乗り出した私たちは、研究者の最新研究の成果から、シマトネリコの極端に少ない樹液量や、カブトムシの雄が発するフェロモンが、大集結の原因になっている可能性にたどり着きました。そして、取材には意外な結末が待っていたのです。 【前の記事を読む】『住宅街でカブトムシが「大集結」する驚きの理由…カギは謎の「足蹴り動作」だった』 【はじめから読む】『カブトムシが住宅街の「植木」に謎の大集結!徹底調査でたどり着いた「意外な原因」』 ある法改正が大量のカブトムシを生み出した!? 私たちの前に最後に残った謎。それは、住宅街の現場に、どこから大量のカブトムシがやってきたのかという、いわばストーリーの根本です。その答えは、取材した都
使用済みの食用油など生物資源のみでつくるペットボトルを、石油元売りや飲料メーカーなどが連携して、本格的に生産していくことになりました。石油由来の原料を一切使わないペットボトルの商用化は世界で初めてだということです。 ペットボトルの生産では、原料のおよそ7割を占める「パラキシレン」をこれまで石油由来のものでしか量産できなかったため、脱炭素化に向けた課題となってきました。 こうした中、石油元売り大手のENEOSは、使用済みの食用油など生物資源のみでパラキシレンを量産する技術を開発し、サントリーホールディングスや三菱商事と連携して、石油由来の原料を一切使わないペットボトルを本格的に生産することになりました。 岡山県倉敷市にある製油所で年内に、生物資源由来のパラキシレンの製造を始め、来年からペットボトルの原料に利用するということで、年間3500万本ほどの出荷を想定しています。 ペットボトルの製造コ
トヨタ自動車の米国法人であるToyota Motor North America(TMNA)と燃料電池(FC)発電事業の米FuelCell Energyは、カリフォルニア州ロングビーチ港にあるTMNAの物流拠点に、バイオマスから水素を生成し、水素で発電するFC発電所を建設した。 物流拠点「Toyota Logistic Services(TLS)」に建設したものは、バイオマスから水素と電気、水が得られる、FuelCell Energyの施設「Tri-Gen」。畜産場の家畜排泄物や余剰食品などの廃棄物系バイオマスから水素を取り出し、併設したFC発電所で電力が得られる。 水素の生成量は1日あたり約1.2トンあり、発電とトヨタの燃料電池車(FCV)「MIRAI」などへ供給する。1日あたりの発電量は2.3MWで、TLSの物流オペレーションで必要とされる電力を賄う。発電過程で1日あたり約5300リッ
ウクライナのキエフにある村落であるトリピーッリャ(トリポリ)は、ヨーロッパ最古の都市とされる先史時代の遺跡があることで知られています。当時の古代トリピーッリャには、非常に洗練された牧草地と食物があり、その社会システムの重要な部分を牛が占めていました。しかし、牛は食肉のためではなく、主に糞(ふん)を使用するために飼育されていたことを古生態学者の研究グループが示しています。 PNAS https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2312962120 Europe's earliest cities relied on fertilizer and plant protein, isotope analysis shows https://phys.org/news/2023-12-europe-earliest-cities-fertilizer-protein
窓などに使用されるガラスは、透明度の高い便利な素材ですが、「重くて脆い」という欠点があります。 最近、中国の中南林業科技大学(Central South University of Forestry and Technology)に所属するイーチアン・ウー氏ら研究チームは、竹を用いた透明な素材を開発することに成功しました。 ガラスのように透明でありながら、軽く、耐火性や防水性も備えており、新たな材料として注目されています。 研究の詳細は、2024年2月14日付の学術誌『Research』に掲載されました。 Transparent bamboo: A fireproof and waterproof alternative to glass https://newatlas.com/materials/transparent-bamboo-fireproof-waterproof/ CSUF
バイオマス発電といえば、コストが高いので、これまでは政府の定めた再生可能エネルギー全量買い取り制度によって推進されてきた。だがここにきて、コストが低く、政府による支援がなくても発電事業ができるのではないか、という技術が登場しつつある。 ソルガムを用いた発電だ。ソルガムは日本名では「高粱」と書いて「たかきび」ないし「こうりゃん」と呼ぶ。サトウキビに似た丈の高い草で、茎は甘く、イネのような穂をつけ、その実は食用になる。穀物として世界中で栽培されており、中国の蒸留酒白酒(バイチュウ)の原料にもなっている。そのソルガムを用いて発電するのだが、ここ数年で重要な技術進歩があった。 (杉山大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹) 日本には膨大な品種改良技術の蓄積がある これまでのバイオマス発電は、木材のチップや農業廃棄物などを燃料にしていた。だが、石炭などの化石燃料に比べて、いくつか問題があった。大
(CNN) 地球上でもおよそ人が住めないような場所のひとつ、サハラ砂漠の真ん中で、自然の力を利用した気候変動対策が芽吹き始めている。それも急ピッチで。 ロンドンに拠点を置くベンチャー企業、ブリリアントプラネット社は、モロッコ南部の人里離れた海岸沿いの町アクフェニルの郊外に6100ヘクタールの土地を借り上げた。北は大西洋、南はサハラ砂漠という土地で、藻の養殖を行うためだ。 藻は光合成により大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収し、酸素を放出する。最初の陸上植物が地球上に存在する前からずっと行われてきた営みだ。ブリリアントプラネット社のアダム・テイラー最高経営責任者(CEO)によると、同社は、実験室のビーカーから始まり、最終的には現地の海水を利用した1万2000平方メートルのプールで、劇的なスピードで藻を育てる方法を開発した。テイラー氏によれば、プロセスそのものは藻の自然な発育を模倣しており、試験
日本でも高値が続くガソリン価格。政府の補助金が拡充され、値下がり傾向ではあるもののレギュラーガソリンの小売価格は1リットルあたり179.3円(10月2日時点:全国平均)で、ドライバーへの負担がのしかかります。 一方、日本からみると地球の反対側、ブラジルではなんと4割も安い価格の燃料が手に入ります。それは世界から注目される植物由来のバイオ燃料。その最前線を追いました。 (サンパウロ支局 木村隆介) ガソリン高騰で人気「エタノール」 サンパウロのガソリンスタンド 下から2番目にエタノール ブラジルのガソリンスタンドを訪れると、必ず目にする「エタノール」の文字。サンパウロ中心部にあるガソリンスタンドでは、ガソリンが日本円で1リットル6.3レアル、186円あまりですが、エタノールは3.9レアル、日本円で115円程度。ガソリンに比べて、4割ほど安く販売されています。(10月5日時点) ガソリンスタン
新和設計(山形県米沢市、湯沢洋一郎社長)と日本大学工学部を中心に構成する竹筋(ちっきん)コンクリート協議会(事務局=新和設計)は、鉄筋の代わりに竹材を利用した竹筋コンクリートを開発した。鉄筋コンクリートの60―70%の強度で実用化できる。26日にU字溝として福島県南会津町の水路に設置し、効果を検証する。自然資源を活用した手法として、小型コンクリート構造物向けに普及を目指す。 竹筋コンクリート協議会には新和設計と日大を含め、日仙産業(福島県白河市)や坂内セメント工業所(同柳津町)など5企業・2大学が参画する。竹筋コンクリートは竹筋で構造物を組み上げ、コンクリートを流し込む仕組み。昭和の初めまでは国内で普及していたが、終戦で鉄の利用が可能になり衰退した。今回は竹を活用した環境に優しいコンクリートとして、復活プロジェクトとなる。 1、2年で成長し、5年で枯れる竹の特性を有効利用する。竹は内側の強
スーパーのイトーヨーカドーやレストランチェーンのデニーズが家庭で出た廃食油の回収を強化している。家庭系廃食油は年間約10万トンあるといわれており、そのほとんどが家庭で廃棄されているのが現状だ。処理を施して燃料にする需要などが高まり「都市油田」とも呼ばれ始めた。 「ここやでぇ~廃食油リサイクルスポット」。大阪市内にあるセブン&アイ・フードシステムズのファミレスチェーン、デニーズ吹田寿町店の店頭では、こんなのぼりがはためいていた。 このリサイクルスポットは、大阪府大東市にある植田油脂という会社が昨年12月から実施している家庭系廃食油回収の拠点である。デニーズはこのプロジェクトのパートナーとなり、今年11月から大阪府内のデニーズ7店舗で廃食油回収を始めた。リサイクルスポットはスーパーや銀行など60カ所以上あるが、レストランで参加したのはデニーズが初めてだ。 廃食油は再生航空燃料(SAF)の原料の
世界の政府関係者が視察に 世界では毎年、約14億トンの食品が廃棄されており、そのほとんどが埋立地に送られている。廃棄された食品は、腐敗が進む過程で水や土壌を汚染し、最も強力な温室効果ガスのひとつであるメタンを大量に発生する。 だが韓国には、このような問題は存在しない。韓国は約20年前に食品廃棄物を埋立地に捨てることを禁じ、その大半が、飼料、肥料、家庭用暖房の燃料にリサイクルされているのだ。 食品の廃棄は、地球温暖化の最大要因のひとつである。メタンだけのせいではない。食品の生産や輸送のために使われたエネルギーや資源も無駄になるからだ。 韓国のシステムでは、食品廃棄物の約90%が、埋立地や焼却炉行きになるのを免れている。そんな同国のシステムは世界中の政府の研究対象となっており、中国やデンマークなどの政府関係者も韓国のごみ処理施設の視察に訪れている。 2024 年秋までに生ごみと他のごみの分別を
スウェーデンのリンショーピング大学(LiU)と王立工科大学(KTH)の研究チームが、木材パルプ由来のクラフトリグニンを使用した、環境に優しく安定な太陽電池を開発した。 同研究成果は2023年10月9日、「Advanced Materials」誌に掲載された。 シリコン太陽電池は効率的だが、エネルギー消費の高い複雑な製造工程を要し、有害な化学物質の流出につながる危険性も有する。対して、有機太陽電池は、低コストで単純な製造工程で済み、さらに軽量で柔軟性を持つ。屋内での使用や衣服に取り付けて個人用電子機器の電力源などの用途に応用できるため、注目の研究分野となっている。 しかし、有機太陽電池はプラスチック、つまり石油由来のポリマーでできているため、環境に優しいとは言い難い。 研究チームは、電極界面の電子輸送層にクラフトリグニンを用いた有機太陽電池を開発した。クラフトリグニンは、紙の原料となるパルプ
9月末の1週間はSDGs週間だった。毎年、国連総会の会期と合わせたこの時期、SDGsに対する意識を高めて行動を喚起することを目的に、世界中でイベントが開催されている。 いま、世界ではどんな環境ニュースがあるのか。環境活動家で、J-WAVE『STEP ONE』ナビゲーターでもある、ノイハウス萌菜が紹介した。 この内容をお届けしたのは、J-WAVEで放送中の番組『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:小川紗良)のワンコーナー「WORLD CONNECTION」。9月17日(日)のオンエアをテキストで紹介。 化石燃料は「削減」ではなく「廃止」を目指す ノイハウスは、使い捨てプラスック削減に取り組む「のーぷら No Plastic Japan」を設立するなど、環境問題に取り組んでいる。今、気になる世界の環境ニュースは? 小川:1つ目は何でしょうか? ノイハウス:「気候危機に立ち向かうための
森林総合研究所(茨城県つくば市)が製法を開発した、世界初となる木の酒の市販を目指すベンチャー企業「エシカル・スピリッツ」(東京都台東区)が、つくば市内に蒸留所を設けることが分かった。市への開設手続きは最終段階で、来年春ごろに施設が完成し、早ければ来年冬に木の酒の蒸留を始める。当初は千葉市内での開設を目指したが、行政当局と折り合いがつかずに断念した。 木の酒は、ビールや日本酒、ウイスキーのように穀物を原料とせず、樹木それ自体を原料とする。人類が新たに手にした酒といえる。 蒸留所は、旧つくば市立作岡小学校の敷地内にある体育館を転用。来年春ごろ、蒸留酒ジンの製造を始める。その後、早ければ同年冬に、埼玉県ときがわ町から調達した杉の間伐材から木の酒を作り始め、ブランド名「WoodSpirits(ウッドスピリッツ)」として市販する。 蒸留所では、容量が375ミリリットルのボトルに入ったスピリッツを、1
放っておくと、あっという間に根を伸ばす竹。放置されたまま広がる竹林に頭を抱える所有者も少なくない。相馬市の鉾建(ほこたて)茂さん(74)は、改造した農機具で竹をパウダー化し、畑の肥料などに利用している。鉾建さんは「ちょっとした工夫で、厄介ものが宝になる」と話す。 鉾建さんが機械のエンジンをかけ、導入口に直径10センチほどの竹を差し込むと、固いものが粉砕される轟音が辺りに鳴り響いた。見る見るうちに竹は短くなり、パウダー状になってはき出されてきた。「1日作業を続ければ、100キロぐらいの竹を処理できる」と説明する。 鉾建さんが竹のパウダー化に取り組むようになったきっかけは、農機具を改造して竹粉砕機を作った千葉県のグループに関する記事を農業雑誌で見たことだった。「どこに行っても、里山が竹に浸食されて荒れている。何とかならないかと思っていたので、ぴんと来たんだ」と振り返る。早速、記事で取り上げられ
年間約244万トンもの家庭での廃棄食品の“悲しみ”が生んだ巨大怪獣「フードロスラ」が人類を襲う! 味の素㈱、WEB動画「フードロスラ どうする!?人類篇」3月14日公開山崎貴監督が手掛けるVFXを駆使した迫力のシーンに注目!「フードロスラ」特設サイトでは制作秘話やフードロスについての特別インタビューも! 味の素株式会社(社長:藤江 太郎 本社:東京都中央区)は、年間約244万トン※と推計される家庭におけるフードロスの現状を伝え、その解消に向けた各家庭でのアクションを促すために、山崎貴監督による、家庭での廃棄食品の“悲しみ”が生んだ巨大怪獣「フードロスラ」が登場するWEB動画「フードロスラ どうする!?人類篇」を2024年3月14日(木)に公開します。 また同時に「フードロスラ」特設サイトを開設し、「フードロスラ」に立ち向かう「レスキューフードロス特捜隊」の一員としてフードロス問題への理解を
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グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』に登場する「お菓子の家」が現実のものになったら──。これまでは妄想の域を出なかったが、幼少期の夢が叶(かな)う日がすぐそこまで来ているかもしれない。 「お菓子の家を作りたい」と話すのは、規格外の野菜や食品加工時に出る端材などのゴミを新素材に変える技術を開発した、fabula(東京都大田区)の代表取締役 町田紘太CEOだ。町田氏が東京大学在学中に研究テーマとして扱っていた「コンクリートに代わる、食べられる建材」から現在の事業が生まれた。 fabulaは、町田氏が大学在学中に研究テーマとして扱っていた「コンクリートに代わる、食べられる建材」を基にした事業を展開している(画像:以下、fabula提供) 近年、環境への関心の高まりに伴い、ゴミに新たな付加価値を持たせることで、別の新しい製品に生まれ変わらせるアップサイクルなども広がってきた。しかし、fabulaの技
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