まおゆうは少なくとも、心をかき立てるという面で良い創作だった。あれだけの吸引力を持つ作品というものも、そうざらにはあり得ない。もちろん、各論において乱暴さを感じる点もあるけれど、良い物は良いものだ。 僕がまおゆうに関して二つの、直接言及したのは一つだけだけれど、記事を書いたのは、それでもやはり、どこかしらから漂う偏見あるいは固定観念の匂いに反発したかったからだった。一言でいうなら人間賛歌だろう。人間賛歌。なんという嫌な言葉。 読者は自分で考える手法を持つ必要がある。さもなければ、面白かった物語が語る思想を、そのまま正しい(あるいは自分の)思想として受け入れてしまう可能性が高いからだ。これが導く未来はただ一つ、扇動政治の成立に他ならない。 自由って何だ。丘の向こうって何だ。美しい響きに思考を停止してはいないか。 美しい言葉が美しいのは、それだけの理由がある。だいたいは血みどろで美しくない過去