ブックマーク / davitrice.hatenadiary.jp (12)

  • 読書メモ:エルスターの「酸っぱい葡萄」 - 道徳的動物日記

    功利主義をのりこえて:経済学と哲学の倫理 作者: 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房 発売日: 2019/11/12 メディア: 単行 ↑ 上記のに収録されているヤン・エルスターの「酸っぱい葡萄:功利主義と、欲求の源泉」を読んだのでメモを残す。実は以前にもエルスターの単著の方の『酸っぱい葡萄』を図書館で借りていた*1。だが、内容が難しくて途中の読むのを諦めてしまった。今回も途中から体調不良になったこともあって、ちゃんと理解できているかどうかは自信がない。でもまあせっかく読んだので備忘録的にメモを残すことにした。 ・いちばん面白く思えたのは、「適応的選好形成」と「計画的性格形成」の区別をしているところ。これに関しては、訳者による単著の方の「あとがき」から引用する。 適応的選好形成とは、大まかに言えば、実行可能な選択肢に応じて選好が変化すること、とりわけ、実行可能な選択肢が貧弱である場合に

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  • ジェンダー論が男性を救わない理由 - 道徳的動物日記

    Lonely at the Top: The High Cost of Men's Success 作者: Thomas Joiner Ph.D. 出版社/メーカー: St. Martin's Press 発売日: 2011/10/25 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 思うところあって、トマス・ジョイナーの『Lonely at the Top: The High Cost of Men's Success(てっぺんで一人ぼっち:男性の成功の高い代償)』を数年ぶりに読み返している。 2017年に、このの内容を紹介する記事を書いた*1。そのしばらく後には、社会学者の平山亮による「男性が自殺するのは支配欲が原因」発言を批判した*2。そして2019年には「有害な男らしさ」概念がフェミニズムやジェンダー論の文脈で流行するようになり、「有害な男らしさ」概念についての批判記事を

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  • 動物倫理とポストモダン思想 - 道徳的動物日記

    davitrice.hatenadiary.jp ゲイリー・シュタイナーの主張は以前にも人が書いた短い記事を訳して紹介したが、何しろ短かい記事だったのでシュタイナーの主張がわかりづらかったかもしれない。今回は、シュタイナーが著書『動物と、ポストモダニズムの限界』で行っている主張の要点を私なりに短くまとめて紹介しよう。 シュタイナーはポストモダニズム思想が動物倫理の問題について行っている主張を手厳しく批判している人である。『動物と、ポストモダニズムの限界』で特に批判の対象となっているのはジャック・デリダとデリダに影響された思想家たちだ。…で、私はデリダのをはじめとしてシュタイナーの批判対象となっている思想家たちのはほとんど読んだことがない。なので、シュタイナーの批判がアンフェアなものであるとしても私には判断できないし、シュタイナーの主張をまとめている(かつ、私の主張も結構入っている)こ

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  • 「生命倫理学者?邪魔だからどっか行け」by スティーブン・ピンカー - 道徳的動物日記

    www.bostonglobe.com 日紹介する記事は、心理学者のスティーブン・ピンカー(Steven Pinker)が2015年の8月1日に Boston Grobe に発表した記事。タイトル通り、生命倫理学者たちを生命医学研究の障害だと見なして痛烈に批判している記事である*1。 「生命倫理学者たちへの道徳的要請」 by スティーブン・ピンカー CRISPR-Cas9は新しく強力なゲノム編集技術であり、生命医学研究の倫理に対する懸念を人々に抱かせて研究の一時停止や新しい規制を呼びかける声を生じさせてきた一連のバイオテクノロジーの中でも、最新のものである。確かに、バイオテクノロジーには実に膨大な道徳的意味が含まれている。だが、その道徳的意味とは人々が心配しているようなものではないのだ。 あなたの友人や親族のなかに、癌・心臓病・アルツハイマー・ハンチントン病・パーキンソン病・精神分裂症な

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  • スティーブン・ピンカーによる「動物の権利運動」論- 道徳的動物日記

    スティーブン・ピンカーの『暴力の人類史』では、様々な資料や統計を駆使して、人類が歴史を通じていかに暴力を減少させていったかが示されている。扱われている「暴力」の種類も様々であり、国と国同士で行われる戦争やある社会が特定の集団に行う虐殺など集団間でのマクロな暴力から、残酷な処刑や拷問に決闘や魔女狩りなどの慣習に殺人事件などの集団内での暴力まで、いずれの形の暴力も減少していると示されている。第7章「権利革命」では、アフリカアメリカ人などの人種マイノリティ・女性・子ども・同性愛者などのマイノリティの権利が、特に20世紀後半に各国で認められるようになり、それらのマイノリティに対する暴力が減少していったことが論じられている。そして、動物に対する暴力とそれを減少させた「動物の権利」運動も、この第7章で取り上げられている。 『暴力の人類史』は様々なテーマが少しずつ取り上げられている一方で、それぞれのテ

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  • アニマルライツとフェミニズム - 道徳的動物日記

    The Feminist Care Tradition in Animal Ethics: A Reader 作者: Josephine Donovan,Carol J. Adams 出版社/メーカー: Columbia Univ Pr 発売日: 2007/11/01 メディア: ペーパーバック 購入: 1人 クリック: 1回 この商品を含むブログを見る ヴィーガンフェミニズム論争とは何だったのか ・上記のSutaro氏の記事にも書かれているように、Twitterにてフェミニストのシュナムル氏が「ハーゲンダッツをべた」という旨の発言をしたことに対して、ヴィーガンのRac氏が「フェミニストなのに乳製品を肯定するのか」と批判しことをきっかけに、ヴィーガニズムとフェミニズムに関わる議論がにわかに巻き起こったようだ。その議論にはいわゆるTwitter論客も多数参加していたようだが(そして、その大

    アニマルライツとフェミニズム - 道徳的動物日記
    symbioticworm
    symbioticworm 2018/01/30
    ブルームやグリーンに言及。わたしもフェミニズムの理念には大枠で賛同しつつも戦略的にはこちらを採る。
  • ポストモダニズムとポリティカル・コレクトネス - 道徳的動物日記

    The Science of Liberty: Democracy, Reason, and the Laws of Nature 作者: Timothy Ferris 出版社/メーカー: Harper Perennial 発売日: 2011/02/08 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 先日から読み始めたティモシー・フェリス著『自由の科学(民主主義、理性、法の支配)』の第11章「学問的な反科学(Academic Antiscience)」を読んでいて考えたこと。 科学と民主主義はそのシステムも似ているし(データ/人々の投票の集合に基づいて、仮説/政策の正否を実験/実行によって確かめて、上手くいかなかった場合にはまた別の仮説を繰り返して…というシステム)、科学的な発想こそが自由民主主主義をもたらしたのであり、そして科学は自由民主主的な社会の下でしか発展しない、というの

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  • 「ドナルド・トランプと、社会科学の失敗」 by ユリ・ハリス - 道徳的動物日記

    quillette.com 今回紹介するのは Quillette というサイトに掲載された、ユリ・ハリス(Uri Harris)という経済学者?の記事。アメリカ大統領選挙にてドナルド・トランプが勝利した理由について社会科学的に分析している記事…ではなくて、トランプの大統領当選を予測できなかった(そして、当選した理由を科学的に説明することもできない)社会科学をこき下ろす記事である。こき下ろされている側の社会科学の具体例がないのでちょっと藁人形論法っぽい感じはあるが、この記事の数日後に掲載された Part 2 では実際の論文を取り上げて具体的な批判を行っているので気になる人はそっちも参照してほしい*1。 「ドナルド・トランプと、主流派社会科学の失敗」 by ユリ・ハリス 先の大統領選挙におけるドナルド・トランプの勝利は多くの人々にショックを与えた。世論調査、メディアに出演する専門家たち、そして

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  • トランプ支持者の心理・権威主義と反移民 - 道徳的動物日記

    www.the-american-interest.com 日紹介するのは、 社会心理学者のジョナサン・ハイト(Jonathan Haidt)が American Interest 誌に発表した「ナショナリズムはいつ、なぜ、グローバリズムに打ち勝つか(When and Why Nationalsm Beats Globalism)」という記事。近年の西洋民主主義国家において、普遍主義的・自由主義的で多様性を尊重する価値観を持ったグローバリストとそれに反対する価値観を持ったナショナリストとの争いが各国における移民問題をきっかけに表出するようになっていて…という記事なのだが、かなり長い記事なので、今回は後半(4章構成のうちの3章と4章)を紹介する。この記事における「グローバリスト」と「ナショナリスト」という言葉の定義の説明などは1章と2章でされるので、その辺りは少し分かり難くなるかもしれない

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  • 「私たちは道徳的に賢くなっているのか?:IQの上昇、暴力の減少、経済的リベラリズムの関係」 by マイケル・シャーマー - 道徳的動物日記

    reason.com 今回紹介するのは、心理学者で疑似科学批判者で無神論者のマイケル・シャーマー(Michael Shermer)が Reason.com というサイトに掲載した「Are We Becoming Morally Smarter?」という記事。 シャーマーは昨年に『 The Moral Arc: How Science and Reason Lead Humanity toward Truth, Justice, and Freedom (道徳の弧:科学と理性はいかにして私たちを真実と正義と自由に導くか)』というを出版している*1。副題の通り、人々が科学的・理性的な思考方法を身に付けるにつれて、他人に配慮した道徳的な思考もするようになったり、正義などの抽象的な概念を理解したり、宗教の権威を否定したり、民主主義などが普及したりして、暴力が減少してより多くの人々に権利や自由が認

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  • 「被害者性の文化」と「マイクロアグレッション」 - 道徳的動物日記

    Where microaggressions really come from: A sociological account | The Righteous Mind 今回私訳したのは、社会学者のブラッドベリー・キャンベルとジェイソン・マニングによる共著論文「マイクロアグレッションと道徳文化」を社会心理学者のジョナサン・ハイトが要約した、という記事である。私自身は、元の論文の方は読んでいない。 www.academia.edu 論文の主なテーマである「マイクロアグレッション」は、日では馴染みのない単語だろう。このブログの過去記事では、マイクロアグレッションという考え方やマイクロアグレッションを訴える人に対して批判的な記事をいくつか訳している。検索すれば賛同的・中立的に「マイクロアグレッション」について日語で説明している記事も出てくると思うので、そちらも参照した方がいい。 ハイトの記事

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  • 「保守的フェミニズム」 by ニーナ・シランダー - 道徳的動物日記

    www.psychologytoday.com 今回私訳して紹介する記事は、ニーナ・シランダーの「保守的フェミニズム」。 原文記事の先頭に付いている紹介によると、彼女はトラウマや酒や薬物などの乱用の治療を研究している臨床心理学者(博士号取得候補者)であるらしい。女性問題や公共政策にも関心がある、とのこと。 記事中で主張されている「保守的フェミニズム」には、個人の自己決定権だけを重視するのではなく家庭や社会のなかで役割を果たすことを通じた自己実現を強調する共同体主義的価値観も含まれていれば、資主義や西洋社会の利点を認めて強調する(合理主義的?)価値観も含まれているようだ。前者の価値観と後者の価値観は必ずしも一致するわけではないし、どちらか片方は認められてももう片方は認められない、という人も多いだろう。しかし、一般論として、現代のフェミニストや左派の多くはどちらの価値観にも否定的であるから、

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