filmとreviewに関するsymbioticwormのブックマーク (91)

  • 非常に重い映画~『月』(試写) - Commentarius Saevus

    『月』を試写で見た。同名小説映画化である。 www.youtube.com かつてはヒット作を書く小説家だった堂島洋子(宮沢りえ)は森にある障害者施設で働き始める。実は洋子には以前、売れない映画作家である夫の昌平(オダギリジョー)との間に障害のある子どもが生まれていたが、幼くして亡くなってしまっていた。洋子は施設で絵が好きなさとくん(磯村勇斗)をはじめとする同僚に会うが、施設では障害が重い収容者に対する虐待が行われていた。 現実に起こった事件を題材にしており、とにかくものすごく重くて暗い映画である。さらに原作が書かれたプロセスじたいについても、実際の事件や障害者の人権について作家がある意味では障害者の視点を簒奪して書くのはいいことなのか…というような相対化というか内省があり、作るほうも戸惑いつつそれでも作らないといけないと思って作ったというような映画になっている。ただし、この内省みたいな

    非常に重い映画~『月』(試写) - Commentarius Saevus
  • 『人魚姫』は何の話なのか?~『リトル・マーメイド』の原作に戻る - wezzy|ウェジー

    先月、ディズニーの実写映画版『リトル・マーメイド』のティーザートレイラーが公開されました。『リトル・マーメイド』は1989年にアニメ映画が公開され、低迷気味だったディズニーに大ヒットをもたらしました。ディズニー・ルネサンスと言われる、ディズニーにとっての復活の時代の始まりとなった映画だと言われています。 『リトル・マーメイド』のヒロインである人魚のアリエルを実写版で演じるのは、黒人女性であるハリー・ベイリーです。ベイリーは歌唱力が抜群で、アニメか漫画から出てきたようなちょっと浮世離れした雰囲気もあり、ディズニープリンセスにはぴったりだと思いますが、アニメ版のアリエルは赤毛でどちらかというと白人に近い容姿でした(人魚に人間同様の人種があるのかどうかはあまりよくわかりませんが)。このティーザーは前作では白人だったアリエルが黒人になったということで人種差別的な攻撃を受けることとなりました。作の

    『人魚姫』は何の話なのか?~『リトル・マーメイド』の原作に戻る - wezzy|ウェジー
  • あれって何だったんだろう…『aftersun アフターサン』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    シャーロット・ウェルズ監督『aftersun アフターサン』を見てきた。 www.youtube.com 1990年代末、11歳のソフィ(フランキー・コリオ)が31歳になる父カラム(ポール・メスカル)とトルコで過ごした休暇を、その20年後に大人になったソフィ(セリア・ロールソン・ホール)が回想するという枠のある作品である。90年代の話が主だが、ソフィが撮ったビデオ映像と現在のソフィの場面が少しずつ入る。90年代の話はだいたいはソフィの記憶らしいのだが、たまにカラムだけの場面があり、これはおそらくはソフィの想像か何かだと思われる。 何しろ子どもの目を通して過去が語られるという形なので、ソフィはかなり「信頼できない語り手」で、いったいカラムがなんで憂そうなのか、具体的に何が起こっているのか、といったことはよくわからない。ソフィが大人になってからああでもない、こうでもない、あれって何だったんだ

    あれって何だったんだろう…『aftersun アフターサン』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • 祖先を発見する~『オマージュ』(試写、ネタバレ注意) - Commentarius Saevus

    シン・スウォン監督『オマージュ』を試写で見た。 www.youtube.com 中年の女性映画監督ジワン(イ・ジョンウン)は、新作が全く当たらず、仕事はスランプ気味で、家庭生活も煮詰まっている。そんなジワンのところに、音声が途中から欠落している映画『女判事』の修復の仕事が来る。『女判事』は60年代のパイオニア的な女性映画監督で3作しか映画を撮らなかったホン・ジェウォンの作品で、最近発見されたフィルムを記念上映用に修復する必要があった。ジワンは『女判事』についての情報を集めるべく、調査を開始する。 このところ『エンドロールのつづき』、『バビロン』、『エンパイア・オブ・ライト』など、過去の映画に関するノスタルジアに満ちた映画がけっこう作られているが、私の個人的な趣味ではこの『オマージュ』がダントツに面白い。監督の半自伝的な要素がある作品だそうで、監督自身が韓国の最初の女性映画監督についてドキュ

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  • クイルが聴かない音楽は誰のためにかかるのか~『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3』を見てきた。 www.youtube.com ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーはノーウェアの整備を続けていたが、ロケット(ブラッドリー・クーパー)が突然襲撃され、大ケガをして倒れてしまう。ロケットの治療を試みる一行だが、ロケットを作った企業が設定したコードを入手しないと治療ができないことがわかる。どうやら作り主がロケットを狙っているらしいということは理解しつつ、一行はロケットを作ったハイ・エボリューショナリー(チュクウディ・イウジ)の会社であるオルゴコープに向かう。 現在のような形のガーディアンズ・オブ・ギャラクシーはこれで三部作完結ということで、これまでの話を綺麗にまとめた作品である。一方でだいぶここまでのガーディアンズ・オブ・ギャラクシーシリーズとは違う新しいことをしており、けっこう大人な感じの作品にもなっている。3作の中では一

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  • ハリソン・フォードのアップデート~『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』 - Commentarius Saevus

    『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』を見た。 www.youtube.com 吟遊詩人のエドガン(クリス・パイン)と戦士のホルガ(ミシェル・ロドリゲス)は親友同士で、窃盗で投獄されていたが刑務所の仮釈放審査を利用して逃げ出すことに成功する。2人はかつての盗賊仲間で現在は出世して領主になっている詐欺師のフォージ(ヒュー・グラント)に引き取られているはずのエドガンの娘キーラ(クロエ・コールマン)を探しに行くが、父親ぶりたいフォージはキーラにデタラメを教え、エドガンとキーラを引き裂いてしまう。エドガンは昔の盗賊仲間をまた集め、新しい仲間も加えてキーラを取り戻すための作戦を練るが、実はフォージの領地では大きな陰謀が進行していた。 もとになっているゲームを知らなくても楽しめる作りで、気軽に見られるコミカルな冒険ものである。魔法の杖をめぐる展開などはちょっと強引すぎると思えるところもある

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  • エヴリン、イヴ、エヴリーウーマン~『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    ダニエルズ(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)監督による『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を見た。 www.youtube.com 中国系のエヴリン(ミシェル・ヨー)はアメリカでコインランドリーを営んでいるが、税金の申告が大変で店はヤバい状態、夫ウェイモンド(キー・ホイ・クァン)からは離婚を切り出されそうだし、レズビアンの娘ジョイ(ステファニー・スー)とは折り合いが悪く、さらに春節で頑固な父(ジェームズ・ホン)までやって来ているということで、人生がいっぱいいっぱいである。ところがそんなエヴリンが税金の申告に行ったところ、夫のウェイモンドが突然、マルチバースの別のユニバースであるアルファバースからやってきたアルファウェイモンドになってしまう。エヴリンは、どうも自分はアルファバースでは大変な大物らしいということを知る。しかもアルファバースバージョンのジョイことジョブ

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  • ギークガールを通して描く、現代のプリンセス像──映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』

    11月11日(金)公開のマーベル映画の最新作を、シェイクスピア研究者でフェミニスト批評家の北村紗衣が読み解く。 *以下、結末までのネタバレを含みます。 王座か、それとも個人としての人生かマーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCUと表記)の新作『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は、2018年に公開された『ブラックパンサー』の続編にあたる。前作同様ライアン・クーグラーが監督をつとめ、メインキャストの多くも再登場している。登場していないのは、前作のタイトルロールであるブラックパンサーことティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)だ。 前作の主人公が出演していないのは、主演のボーズマンが2020年にガンにより亡くなったからだ。カリスマ的な魅力と演技力を兼ね備えたスターであったボーズマンの夭逝は映画界にもファンにも大きな衝撃を与えたが、アフリカアメリカ人の観客にとって重要なシリーズ

    ギークガールを通して描く、現代のプリンセス像──映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』
  • 夫がカルトを始めたら?~キャサリン・ヘップバーン&スペンサー・トレイシーの異色作『火の女』 - wezzy|ウェジー

    2022.08.13 11:00 夫がカルトを始めたら?~キャサリン・ヘップバーン&スペンサー・トレイシーの異色作『火の女』 7月10日の安倍晋三元首相殺害事件以来、旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)が連日、ニュースを騒がせています。 旧統一教会のみならず、神道政治連盟や天照皇大神宮教(私とそっくりな名前の教祖が始めたところがビックリですが、親戚ではありません)など、右派的な宗教団体と政治のつながりが注目を浴びています(これは事件以前から、文化人類学者である山口智美モンタナ州立大学准教授をはじめとして、さまざまな専門家が指摘していたことです)。カルトが日のマスコミでこれほど注目を浴びるのは1995年にオウム真理教メンバーが起こした地下鉄サリン事件以来のことかもしれません。 カルトに関する映画はたくさん作られており、ポール・トーマス・アンダーソン監督が2012年に作った『ザ・マスター』や

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  • 「欲望を取り戻すー燃ゆる女の肖像における「まなざし」と「身体」」 - Getting Lost in the City

    5月の文学フリマで出した夏のカノープス『水と空気とフェミニズム』に掲載した「欲望を取り戻すー燃ゆる女の肖像における「まなざし」と「身体」」です。おかげさまで『水と空気とフェミニズム』が売り切れてしまったこともあり、どこかにこの批評を残しておきたいと思い、お願いしたところ許可をいただけたのでこのブログに載せます。 映画のネタバレが含まれているので未見の場合は注意してください。 「欲望を取り戻すー燃ゆる女の肖像における「まなざし」と「身体」」 フランス印象主義を代表するメアリー・カサットが描いた≪桟敷席にて≫(1878年)という作品がある。この絵画は、劇場の桟敷席からオペラグラスを構えて真っ直ぐに前方を見つめる黒いドレスの女性が手前に描かれている。その奥、後景にはオペラグラスで身を乗り出して明らかに舞台ではなくこちら側の女性を見る背広の男性がいる。19世紀後半のパリではオペラや演劇鑑賞はブルジ

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  • お嬢様とメイドさんの間にシスターフッドはあるのか?『おだまり、ローズ』から『荊の城』まで - wezzy|ウェジー

    2021.06.12 07:00 お嬢様とメイドさんの間にシスターフッドはあるのか?『おだまり、ローズ』から『荊の城』まで 「シスターフッド」は最近とてもよく使われる言葉です。文字通りには「姉妹であること」を指しますが、フェミニズムの文脈では血縁を越えた女性同士の連帯を表す言葉として使われています。この使い方は意外と古くからあり、オクスフォード英語辞典によると1914年からあるそうです。 シスターフッドという言葉は、とくに知り合いではないような多数の女性が同じ目的とか理想に向かってゆるやかに政治的に連帯する時から、場合によってはレズビアンの恋愛など特定の女性同士のかなり排他的で強い結びつきまで、わりと広い範囲を指してもやっと使われます。「百合」とも重なる概念ですが、百合はレズビアンの恋愛を中心にその周りにある必ずしも恋愛とまでは言えないかもしれないけれどもロマンティックな女性同士の友愛を指

    お嬢様とメイドさんの間にシスターフッドはあるのか?『おだまり、ローズ』から『荊の城』まで - wezzy|ウェジー
  • そこはカンザスじゃないみたいよ~『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    ウェス・アンダーソンの新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』を見た。 www.youtube.com とても説明のしづらい映画である。カンザスの新聞社のフランスにある支社みたいなところが『フレンチ・ディスパッチ』なる英語の別冊雑誌を出しており、そこの編集長アーサー・ハウイッツァー・Jr.(ビル・マーリー)がお亡くなりになって雑誌が廃刊されることになる。その最終号の記事をオムニバスっぽい形で描くというものである。一応、話が4つ+エピローグというような形式になっている。1話目はサゼラック(サゼラック)が自転車でこの雑誌社のあるアンニュイの町について案内するレポート、2話目はベレンセン(ティルダ・スウィントン)が語る刑務所に服役していた画家ローゼンターラー(ベニチオ・デル・トロ)の話、3話目はクレメンツ(フランシス・マクドーマンド)が学生運動をレポートする話

    そこはカンザスじゃないみたいよ~『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • フランス映画『エール!』のリメイク~『コーダ あいのうた』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『コーダ あいのうた』を見た。 www.youtube.com 舞台はマサチューセッツ州の港町グロスターである。耳の聞こえないロッシ一家で唯一、聞こえるメンバーである娘のルビー(エミリア・ジョーンズ)はCODA(Children of Deaf Adultsを指す語と音楽用語を引っかけている)は両親と兄の手話通訳をつとめつつ、家業である漁に勤しみながら高校に通っていた。ところがルビーは合唱クラスで自分に歌の才能があることがわかり、音楽のヴィラロボス先生(エウヘニオ・デルベス)に音大進学をすすめられる。 フランス映画の『エール!』(2014) にそっくりだと思って見てたら、どうもリメイクらしい。『エール!』は農業国フランスということで家業が農場だったのだが、『コーダ』はアメリカの港町が舞台になっている。最近、マサチューセッツ州の港町の話というと『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)

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  • ハムレットが『スター・ウォーズ』に出てる!~『DUNE/デューン 砂の惑星』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『DUNE/デューン 砂の惑星』を見た。フランク・ハーバートによる原作があるのだが、ホドロフスキーによる実現しなかった映画化計画あり(経過は『ホドロフスキーのDUNE』というドキュメンタリーになっている)、デヴィッド・リンチによるいわくつきの映画化(編集権などのトラブルでアラン・スミシー名義の版が出回っていたりする)あり、ドラマあり、これまで何度か映像化の試みがあったものである。大変スケールが大きく、長い話で、こちらの映画化は第一作の半分くらいを扱っている。 www.youtube.com 未来の宇宙帝国が舞台である。名門アトレイデス家とハルコンネン家は長年対立していたが、ハルコンネン家は非常に高価なスパイスの産地である砂漠の惑星アラキスの採掘と交易からくる財力で力をつけていた。ところが皇帝の命でアトレイデス家がアラキスに赴任することになる。アトレイデス公爵家の御

    ハムレットが『スター・ウォーズ』に出てる!~『DUNE/デューン 砂の惑星』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    symbioticworm
    symbioticworm 2021/11/03
    “シャラメを主演に『ハムレット』の映画を作るべきだと思う”
  • そもそもプロムを粉砕したいという気持ち~『ザ・プロム』 - Commentarius Saevus

    『ザ・プロム』をNetflixで見た。 www.netflix.com インディアナ州の地方都市エッジウォーターで、レズビアンの高校生エマ(ジョー・エレン・ペルマン)がプロムに参加したいと考えたせいでプロムじたいが中止されそうになるという事件が起こる。このニュースを聞いたブロードウェイの落ち目の俳優4人が宣伝のため、エマを支援するという名目でエッジウォーターに入る。売名目的だった4人だが、だんだんエマのために親身になってしまい… ホリデー気分で見るミュージカルとしては非常にそつなく作られている作品である。いかにもゲイアイコンっぽいミュージカルスターのディーディー(メリル・ストリープ)、キャンプで人の良いゲイのミュージカルスターであるバリー(ジェームズ・コーデン)、『シカゴ』のロキシー役を狙っているアンジー(ニコール・キッドマン)など、歌も演技も達者な役者陣がアクの強いキャラを演じで盛り上げ

    そもそもプロムを粉砕したいという気持ち~『ザ・プロム』 - Commentarius Saevus
    symbioticworm
    symbioticworm 2021/04/01
    “そもそもプロムを粉砕すべきなのでは”
  • アイルランドの『イングロリアス・バスターズ』~『ウルフウォーカー』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『ウルフウォーカー』を見た。『ブレンダンとケルズの秘密』や『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』を作ったカートゥーン・サルーンの最新作である。 child-film.com 舞台は1650年のキルケニーである。イングランドから移民してきた狩猟名人ビル(ショーン・ビーン)の小さな娘ロビン・グッドフェロー(オナー・ニーフシー)は自由に狩猟をしたり遊んだりできず、家事をさせられて腐っていた。こっそり家を抜け出したロビンは、森で人間の体が眠っている間はオオカミ、起きている間は人間の少女として行動できるウルフウォーカーである赤毛のメーヴ(エヴァ・ウィッテカー)に出会い、親しくなる。 カラフルで動きや編集にも気を遣った非常に美しいアニメーションで、ロビンとメーヴの友情や、父親であるビルの親としての成長を細やかに描いた作品である。オオカミの表現では視覚だけではなく嗅覚などにも注意が払われ、いろいろな感覚を

    アイルランドの『イングロリアス・バスターズ』~『ウルフウォーカー』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • 期限つきのユートピア~『燃ゆる女の肖像』(試写、ネタバレ注意) - Commentarius Saevus

    試写でセリーヌ・シアマ監督『燃ゆる女の肖像』を見た。 www.youtube.com 舞台は18世紀のフランスで、語り手である女性画家マリアンヌ(ノエミ・メルラン)の回想という枠に入っている。マリアンヌはとある孤島に呼ばれ、屋敷の令嬢エロイーズ(アデル・エネル)のお見合い用の肖像画を描くことになる。ところがエロイーズは頑なに結婚を拒んでいて肖像画を描かれることを拒否しており、さらにエロイーズの姉は結婚を拒否して自殺したらしいので、エロイーズの母(ヴァレリア・ゴリノ)は警戒してマリアンヌを画家ではなく散歩の付き添いだということにし、エロイーズの顔を覚えさせてこっそり絵を描かせようとする。エロイーズとマリアンヌは次第に親しくなり、さらに女中のソフィ(ルアナ・バイラミ)とも仲良くなるが… ものすごくロマンティックな正統派の恋愛映画である。マリアンヌとエロイーズが親しくなっていく様子が丁寧にゆっく

    期限つきのユートピア~『燃ゆる女の肖像』(試写、ネタバレ注意) - Commentarius Saevus
  • 『アナと雪の女王』を生み出したディズニープリンセス映画『魔法にかけられて』 - wezzy|ウェジー

    ディズニー嫌いが知れ渡ってしまっている私ですが、今回は私がけっこう好きなディズニープリンセス映画について書きたいと思います。ケヴィン・リマ監督、エイミー・アダムズ主演で2007年に作られた『魔法にかけられて』です。 この映画格的なディズニープリンセス映画としては初めて実写(一部はアニメ)で作られたものです。プリンセスであるジゼルがデフォルメされたアニメの世界を飛び出し、ごみごみした実写のニューヨークを動き回るというヴィジュアルだけでもかなりの新しい作品でした。ディズニーの過去のプリンセス映画のパロディや、それまでの伝統的なプロットを裏返した展開がたくさんあり、革新的な作品だと言われています。 こういう過去の古典を研究し尽くした作品というのは、オタク心をくすぐるところが多いにあります。古典をふまえた上でひっくり返すというのは個人的には私の趣味にピッタリで、『魔法にかけられて』には2007

    『アナと雪の女王』を生み出したディズニープリンセス映画『魔法にかけられて』 - wezzy|ウェジー
  • あの子のルーツはどこにある~『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(少しだけネタバレあり) - Commentarius Saevus

    ライアン・ジョンソンの新作『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』を見た。 www.youtube.com アガサ・クリスティのオマージュみたいなお屋敷ミステリである。老いたミステリ小説家のハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)が突然亡くなり、遺産を目当てにした遺族たちがニューイングランドの立派なお屋敷に集まってくる。そこに匿名の依頼主から依頼を受けた探偵ブノワ・ブランク(ダニエル・クレイグ、字幕では「ブラン」になってたがたぶん「ブランク」っていう発音のほうが近いと思う)がやってきて調査を開始。さらに、遺産が全額、遺族ではなく専属看護師だったマルタ(アナ・デ・アルマス)に行くことになっていることがわかり、屋敷は大騒ぎに… 古典ミステリのパロディみたいな大仰な展開に、芸達者な役者たちが集まって楽しそうに演技で大暴れするという内容で、ミステリ好きならたまらない感じの話である。コンセ

    あの子のルーツはどこにある~『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(少しだけネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • 〈ポスト2016〉の現代に向けた、100年前からの贈りもの:映画『ダウントン・アビー』池田純一レヴュー