ブックマーク / saebou.hatenablog.com (141)

  • 非常に重い映画~『月』(試写) - Commentarius Saevus

    『月』を試写で見た。同名小説映画化である。 www.youtube.com かつてはヒット作を書く小説家だった堂島洋子(宮沢りえ)は森にある障害者施設で働き始める。実は洋子には以前、売れない映画作家である夫の昌平(オダギリジョー)との間に障害のある子どもが生まれていたが、幼くして亡くなってしまっていた。洋子は施設で絵が好きなさとくん(磯村勇斗)をはじめとする同僚に会うが、施設では障害が重い収容者に対する虐待が行われていた。 現実に起こった事件を題材にしており、とにかくものすごく重くて暗い映画である。さらに原作が書かれたプロセスじたいについても、実際の事件や障害者の人権について作家がある意味では障害者の視点を簒奪して書くのはいいことなのか…というような相対化というか内省があり、作るほうも戸惑いつつそれでも作らないといけないと思って作ったというような映画になっている。ただし、この内省みたいな

    非常に重い映画~『月』(試写) - Commentarius Saevus
  • あれって何だったんだろう…『aftersun アフターサン』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    シャーロット・ウェルズ監督『aftersun アフターサン』を見てきた。 www.youtube.com 1990年代末、11歳のソフィ(フランキー・コリオ)が31歳になる父カラム(ポール・メスカル)とトルコで過ごした休暇を、その20年後に大人になったソフィ(セリア・ロールソン・ホール)が回想するという枠のある作品である。90年代の話が主だが、ソフィが撮ったビデオ映像と現在のソフィの場面が少しずつ入る。90年代の話はだいたいはソフィの記憶らしいのだが、たまにカラムだけの場面があり、これはおそらくはソフィの想像か何かだと思われる。 何しろ子どもの目を通して過去が語られるという形なので、ソフィはかなり「信頼できない語り手」で、いったいカラムがなんで憂そうなのか、具体的に何が起こっているのか、といったことはよくわからない。ソフィが大人になってからああでもない、こうでもない、あれって何だったんだ

    あれって何だったんだろう…『aftersun アフターサン』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • 祖先を発見する~『オマージュ』(試写、ネタバレ注意) - Commentarius Saevus

    シン・スウォン監督『オマージュ』を試写で見た。 www.youtube.com 中年の女性映画監督ジワン(イ・ジョンウン)は、新作が全く当たらず、仕事はスランプ気味で、家庭生活も煮詰まっている。そんなジワンのところに、音声が途中から欠落している映画『女判事』の修復の仕事が来る。『女判事』は60年代のパイオニア的な女性映画監督で3作しか映画を撮らなかったホン・ジェウォンの作品で、最近発見されたフィルムを記念上映用に修復する必要があった。ジワンは『女判事』についての情報を集めるべく、調査を開始する。 このところ『エンドロールのつづき』、『バビロン』、『エンパイア・オブ・ライト』など、過去の映画に関するノスタルジアに満ちた映画がけっこう作られているが、私の個人的な趣味ではこの『オマージュ』がダントツに面白い。監督の半自伝的な要素がある作品だそうで、監督自身が韓国の最初の女性映画監督についてドキュ

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  • クイルが聴かない音楽は誰のためにかかるのか~『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3』を見てきた。 www.youtube.com ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーはノーウェアの整備を続けていたが、ロケット(ブラッドリー・クーパー)が突然襲撃され、大ケガをして倒れてしまう。ロケットの治療を試みる一行だが、ロケットを作った企業が設定したコードを入手しないと治療ができないことがわかる。どうやら作り主がロケットを狙っているらしいということは理解しつつ、一行はロケットを作ったハイ・エボリューショナリー(チュクウディ・イウジ)の会社であるオルゴコープに向かう。 現在のような形のガーディアンズ・オブ・ギャラクシーはこれで三部作完結ということで、これまでの話を綺麗にまとめた作品である。一方でだいぶここまでのガーディアンズ・オブ・ギャラクシーシリーズとは違う新しいことをしており、けっこう大人な感じの作品にもなっている。3作の中では一

    クイルが聴かない音楽は誰のためにかかるのか~『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • ハリソン・フォードのアップデート~『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』 - Commentarius Saevus

    『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』を見た。 www.youtube.com 吟遊詩人のエドガン(クリス・パイン)と戦士のホルガ(ミシェル・ロドリゲス)は親友同士で、窃盗で投獄されていたが刑務所の仮釈放審査を利用して逃げ出すことに成功する。2人はかつての盗賊仲間で現在は出世して領主になっている詐欺師のフォージ(ヒュー・グラント)に引き取られているはずのエドガンの娘キーラ(クロエ・コールマン)を探しに行くが、父親ぶりたいフォージはキーラにデタラメを教え、エドガンとキーラを引き裂いてしまう。エドガンは昔の盗賊仲間をまた集め、新しい仲間も加えてキーラを取り戻すための作戦を練るが、実はフォージの領地では大きな陰謀が進行していた。 もとになっているゲームを知らなくても楽しめる作りで、気軽に見られるコミカルな冒険ものである。魔法の杖をめぐる展開などはちょっと強引すぎると思えるところもある

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  • エヴリン、イヴ、エヴリーウーマン~『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    ダニエルズ(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)監督による『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を見た。 www.youtube.com 中国系のエヴリン(ミシェル・ヨー)はアメリカでコインランドリーを営んでいるが、税金の申告が大変で店はヤバい状態、夫ウェイモンド(キー・ホイ・クァン)からは離婚を切り出されそうだし、レズビアンの娘ジョイ(ステファニー・スー)とは折り合いが悪く、さらに春節で頑固な父(ジェームズ・ホン)までやって来ているということで、人生がいっぱいいっぱいである。ところがそんなエヴリンが税金の申告に行ったところ、夫のウェイモンドが突然、マルチバースの別のユニバースであるアルファバースからやってきたアルファウェイモンドになってしまう。エヴリンは、どうも自分はアルファバースでは大変な大物らしいということを知る。しかもアルファバースバージョンのジョイことジョブ

    エヴリン、イヴ、エヴリーウーマン~『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • そこはカンザスじゃないみたいよ~『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    ウェス・アンダーソンの新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』を見た。 www.youtube.com とても説明のしづらい映画である。カンザスの新聞社のフランスにある支社みたいなところが『フレンチ・ディスパッチ』なる英語の別冊雑誌を出しており、そこの編集長アーサー・ハウイッツァー・Jr.(ビル・マーリー)がお亡くなりになって雑誌が廃刊されることになる。その最終号の記事をオムニバスっぽい形で描くというものである。一応、話が4つ+エピローグというような形式になっている。1話目はサゼラック(サゼラック)が自転車でこの雑誌社のあるアンニュイの町について案内するレポート、2話目はベレンセン(ティルダ・スウィントン)が語る刑務所に服役していた画家ローゼンターラー(ベニチオ・デル・トロ)の話、3話目はクレメンツ(フランシス・マクドーマンド)が学生運動をレポートする話

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  • フランス映画『エール!』のリメイク~『コーダ あいのうた』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『コーダ あいのうた』を見た。 www.youtube.com 舞台はマサチューセッツ州の港町グロスターである。耳の聞こえないロッシ一家で唯一、聞こえるメンバーである娘のルビー(エミリア・ジョーンズ)はCODA(Children of Deaf Adultsを指す語と音楽用語を引っかけている)は両親と兄の手話通訳をつとめつつ、家業である漁に勤しみながら高校に通っていた。ところがルビーは合唱クラスで自分に歌の才能があることがわかり、音楽のヴィラロボス先生(エウヘニオ・デルベス)に音大進学をすすめられる。 フランス映画の『エール!』(2014) にそっくりだと思って見てたら、どうもリメイクらしい。『エール!』は農業国フランスということで家業が農場だったのだが、『コーダ』はアメリカの港町が舞台になっている。最近、マサチューセッツ州の港町の話というと『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)

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  • さかのぼるって何?文学や映画における、時間が過去から未来に直線的に進まない作品のタイプ分類 - Commentarius Saevus

    第七回歴史コミュニケーション研究会に出席した。 報告内容についてはこちらとかこちらで既に詳しい説明があがっているからいいとして、私が気になったのは第二部「さかのぼり世界史A」である。というのも、なんか普段文学や芝居、映画のナラティヴに触れている人にとっては「さかのぼり世界史」は当はさかのぼってないんじゃないかという疑惑があり、実は初めての査読論文が小説をタイムラインに起こしてみるというものだった私にはなかなか気になるところで…と、いうわけで、独断と偏見で「時間が過去から未来に直線的に進まない作品のナラティヴ分類」を今後のためにやってみようと思う。こういう時系列の分析って読解テクニックとしてけっこう文学や映画の人は学校で習ったりふだんの経験で身につけたりするんだけど、いい参考文献見つからなかったので何も見ないで自分の手業で書いてるからちょっと不適切なところがあるかも…いい文献あったら誰かコ

  • ハムレットが『スター・ウォーズ』に出てる!~『DUNE/デューン 砂の惑星』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『DUNE/デューン 砂の惑星』を見た。フランク・ハーバートによる原作があるのだが、ホドロフスキーによる実現しなかった映画化計画あり(経過は『ホドロフスキーのDUNE』というドキュメンタリーになっている)、デヴィッド・リンチによるいわくつきの映画化(編集権などのトラブルでアラン・スミシー名義の版が出回っていたりする)あり、ドラマあり、これまで何度か映像化の試みがあったものである。大変スケールが大きく、長い話で、こちらの映画化は第一作の半分くらいを扱っている。 www.youtube.com 未来の宇宙帝国が舞台である。名門アトレイデス家とハルコンネン家は長年対立していたが、ハルコンネン家は非常に高価なスパイスの産地である砂漠の惑星アラキスの採掘と交易からくる財力で力をつけていた。ところが皇帝の命でアトレイデス家がアラキスに赴任することになる。アトレイデス公爵家の御

    ハムレットが『スター・ウォーズ』に出てる!~『DUNE/デューン 砂の惑星』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    symbioticworm
    symbioticworm 2021/11/03
    “シャラメを主演に『ハムレット』の映画を作るべきだと思う”
  • そもそもプロムを粉砕したいという気持ち~『ザ・プロム』 - Commentarius Saevus

    『ザ・プロム』をNetflixで見た。 www.netflix.com インディアナ州の地方都市エッジウォーターで、レズビアンの高校生エマ(ジョー・エレン・ペルマン)がプロムに参加したいと考えたせいでプロムじたいが中止されそうになるという事件が起こる。このニュースを聞いたブロードウェイの落ち目の俳優4人が宣伝のため、エマを支援するという名目でエッジウォーターに入る。売名目的だった4人だが、だんだんエマのために親身になってしまい… ホリデー気分で見るミュージカルとしては非常にそつなく作られている作品である。いかにもゲイアイコンっぽいミュージカルスターのディーディー(メリル・ストリープ)、キャンプで人の良いゲイのミュージカルスターであるバリー(ジェームズ・コーデン)、『シカゴ』のロキシー役を狙っているアンジー(ニコール・キッドマン)など、歌も演技も達者な役者陣がアクの強いキャラを演じで盛り上げ

    そもそもプロムを粉砕したいという気持ち~『ザ・プロム』 - Commentarius Saevus
    symbioticworm
    symbioticworm 2021/04/01
    “そもそもプロムを粉砕すべきなのでは”
  • アイルランドの『イングロリアス・バスターズ』~『ウルフウォーカー』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『ウルフウォーカー』を見た。『ブレンダンとケルズの秘密』や『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』を作ったカートゥーン・サルーンの最新作である。 child-film.com 舞台は1650年のキルケニーである。イングランドから移民してきた狩猟名人ビル(ショーン・ビーン)の小さな娘ロビン・グッドフェロー(オナー・ニーフシー)は自由に狩猟をしたり遊んだりできず、家事をさせられて腐っていた。こっそり家を抜け出したロビンは、森で人間の体が眠っている間はオオカミ、起きている間は人間の少女として行動できるウルフウォーカーである赤毛のメーヴ(エヴァ・ウィッテカー)に出会い、親しくなる。 カラフルで動きや編集にも気を遣った非常に美しいアニメーションで、ロビンとメーヴの友情や、父親であるビルの親としての成長を細やかに描いた作品である。オオカミの表現では視覚だけではなく嗅覚などにも注意が払われ、いろいろな感覚を

    アイルランドの『イングロリアス・バスターズ』~『ウルフウォーカー』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • 期限つきのユートピア~『燃ゆる女の肖像』(試写、ネタバレ注意) - Commentarius Saevus

    試写でセリーヌ・シアマ監督『燃ゆる女の肖像』を見た。 www.youtube.com 舞台は18世紀のフランスで、語り手である女性画家マリアンヌ(ノエミ・メルラン)の回想という枠に入っている。マリアンヌはとある孤島に呼ばれ、屋敷の令嬢エロイーズ(アデル・エネル)のお見合い用の肖像画を描くことになる。ところがエロイーズは頑なに結婚を拒んでいて肖像画を描かれることを拒否しており、さらにエロイーズの姉は結婚を拒否して自殺したらしいので、エロイーズの母(ヴァレリア・ゴリノ)は警戒してマリアンヌを画家ではなく散歩の付き添いだということにし、エロイーズの顔を覚えさせてこっそり絵を描かせようとする。エロイーズとマリアンヌは次第に親しくなり、さらに女中のソフィ(ルアナ・バイラミ)とも仲良くなるが… ものすごくロマンティックな正統派の恋愛映画である。マリアンヌとエロイーズが親しくなっていく様子が丁寧にゆっく

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  • 生きることとは映画を撮ること~『ペイン・アンド・グローリー』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    ペドロ・アルモドバル監督『ペイン・アンド・グローリー』を見てきた。 www.youtube.com 主人公である中年の映画監督サルバドール(アントニオ・バンデラス)は、貧しい生まれから映画監督として成功したものの、このところ愛する母ハシンタの死と大病が続いて心身共にボロボロになっていた。創作意欲を失っていたサルバドールだが、自分の過去作のリマスター版が作られるということで仲違いしていた役者のアルベルト(アシエル・エチェアンディア)に連絡をとる。病気の痛みを和らげるため、アルベルトにヘロインを教えてもらうサルバドールだったが… アルモバドルがずっとこだわっている母と子のテーマを突き詰めた作品である。非常に凝った構成で、サルバドールの現在と子供時代のフラッシュバックが交互に出てくるのだが、最後にこのフラッシュバックは実は実際の記憶というよりもサルバドールが再起して撮り始めた新しい自伝的な映画

    生きることとは映画を撮ること~『ペイン・アンド・グローリー』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • あの子のルーツはどこにある~『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(少しだけネタバレあり) - Commentarius Saevus

    ライアン・ジョンソンの新作『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』を見た。 www.youtube.com アガサ・クリスティのオマージュみたいなお屋敷ミステリである。老いたミステリ小説家のハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)が突然亡くなり、遺産を目当てにした遺族たちがニューイングランドの立派なお屋敷に集まってくる。そこに匿名の依頼主から依頼を受けた探偵ブノワ・ブランク(ダニエル・クレイグ、字幕では「ブラン」になってたがたぶん「ブランク」っていう発音のほうが近いと思う)がやってきて調査を開始。さらに、遺産が全額、遺族ではなく専属看護師だったマルタ(アナ・デ・アルマス)に行くことになっていることがわかり、屋敷は大騒ぎに… 古典ミステリのパロディみたいな大仰な展開に、芸達者な役者たちが集まって楽しそうに演技で大暴れするという内容で、ミステリ好きならたまらない感じの話である。コンセ

    あの子のルーツはどこにある~『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(少しだけネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • とても丁寧な作品だが、地味といえば地味~『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』を試写で見てきた。 www.youtube.com ロンドンの正統派ユダヤ教徒コミュニティのラビの娘で、アメリカで写真家の仕事をしているロニート(レイチェル・ワイズ)が、父の死の知らせにで帰国するところから始まる。ロニートは昔、同じコミュニティの出身であるエスティ(レイチェル・マクアダムズ)が好きだったのだが、同性愛や女性の自由な振る舞いを認めないユダヤ教コミュニティと折り合いがつけられずに出て行ったままになっていた。エスティはロニート友人であるラビのドヴィッド(アレッサンドロ・ニヴォラ)と結婚し、敬虔なユダヤ教徒として暮らしていたが、再会して恋がまた燃え上がってしまう。 大変丁寧に描かれた作品で、主演陣の演技はとても良いし、エスティとロニートの恋情が爆発する場面などは非常に情熱的なのだが、一方で私はこういうあまり笑うところのない丁寧な恋愛ものという

    とても丁寧な作品だが、地味といえば地味~『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    symbioticworm
    symbioticworm 2020/01/30
    お、『Disobedience』日本でも上映されるのか。
  • UFOは儲けるチャンス!~『ひつじのショーン UFOフィーバー!』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『ひつじのショーン UFOフィーバー!』を見てきた。言わずと知れた『ひつじのショーン』シリーズの映画で、アードマンのクレイアニメ新作である。 www.youtube.com ショーンたちが暮らしている牧場の近くにあるモッシンガムに宇宙船がやってきて大騒ぎになり、牧場主はUFOテーマパークを作って儲けようとする。テーマパーク準備を担当させられた犬のビッツァーが苦労している一方、ショーンは宇宙船でやってきたエイリアンの子供(ルーラという名前らしい)に遭遇。ルーラが家に帰れるよう、ショーンはいろいろと協力をするが… ルーラはけっこう古典的な宇宙人っぽい姿形をしているのだが、一方でイヌとか小動物に似た要素も取り入れられており、大変かわいらしいクレイアニメの造形になっている。宇宙のロマンなんかゼロで、とにかくこのチャンスに儲けようとする牧場主はまあいつもどおりの頼りなさ、仕事を押しつけられるビッツァ

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  • ピンターか、シェーファーか?~舞台劇みたいな映画『サラブレッド』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『サラブレッド』を見てきた。お金持ちの令嬢だが継父とうまくいっていないリリー(アニャ・テイラー=ジョイ)が、無感動でタフなアマンダ(オリヴィア・クック)と親しくなり、ドラッグの売人で未成年女子にちょっかいを出すのが好きなティム(アントン・イェルチン)を引き込んで継父殺害を企むというスリラーである。 thoroughbreds-movie.jp PJの『乙女の祈り』やピーター・シェーファーの戯曲『エクウス EQUUS(馬)』なんかを下敷きにしているんだろうな…という感じのスリラーなのだが、一方で話のクライマックスを少女ふたりの感情的な絆に落とし込むよりは、アマンダが感情のないサイコパス的な少女であるということが逆に自己犠牲につながるというオチにしているのが面白い。実は感情が無いのはアマンダじゃなくて、一見感情的なリリーなのでは…?と思われるところがある。ベクデル・テストはこの2人の勉強に関す

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  • 何度フラれても、ちゃんと自分で立ってる~『ロケットマン』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『ロケットマン』を見た。言わずと知れたエルトン・ジョンの伝記映画である。 www.youtube.com 脚がリー・ホール、ジェイミー・ベルが出演していて、ミュージカル版『ビリー・エリオット』に音楽を提供したエルトン・ジョンの伝記映画ということで、かなり『ビリー・エリオット』に関連が深い作品だ。話の構造も似ており、芸術家としての才能を持っているがあまり良い環境で育ったとはいえない少年の物語である。とはいえ、伝記というにはかなりファンタジーの要素が入っており、ミュージカルでもあるし(エルトンの代表曲が人生の岐路にあわせて出てくる)、だいぶ脚色があると思われる。 お話は舞台衣装を着たままのエルトン(タロン・エジャトン)が依存症のミーティングにやって来て自分の半生を回想するという枠に入っている。エルトン(名はレジナルド・ドワイト)はあまり仲の良くない両親のもとで育ったが、幼い頃からピアノの才

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  • 「あるトランス女性が見た北村紗衣『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』」に応える - Commentarius Saevus

    新刊『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』第4章の「女性映画としてのトランスジェンダー女子映画」について、トランス女性の方から以下のような批判を頂きました。この批評は『タンジェリン』と『ナチュラルウーマン』を扱ったものですが、これについてこちらのブログでは「『タンジェリン』や『ナチュラル・ウーマン』がトランス女性の出演するトランス映画であることに一定の評価はしつつも、そのなかで出てくるステレオタイプ的な女性像などを論難し、全体としては「古くさい」ものと評価するという内容」で、「ありがちなシス(トランスでないひと)がトランスに向ける、差別的と言ってもいいようなもの」だと評しています。 snartasa.hatenablog.com 私はシス女性であり、トランス女性に対してマジョリティとしての特権性を有する立場にあります。その特権性からトランス女性を傷つけた事態を重く受けとめています。こちらの記事

    「あるトランス女性が見た北村紗衣『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』」に応える - Commentarius Saevus