HENRIK MOURITSEN 我々が日常的に使っている電子機器やAMラジオ信号による干渉が、渡り鳥の磁気コンパスを狂わせている恐れがあるという研究結果が、Nature 2014年5月15日号353ページに報告された1。この知見は、都市の存在が鳥たちの渡りのパターンに重大な影響を及ぼしている可能性を示唆している。 数十年にわたる実験から、渡り鳥の体内には地球の磁場を感知するコンパスが備わっており、鳥たちはこれを使って定位を行い、渡りの経路をたどることが分かっている。けれどもこれまで、人間が作り出す電磁放射がこのプロセスに影響を及ぼしていることを裏付ける証拠はほとんど得られていなかった。 磁気受容の研究を行う生物学者の多くは、電磁ノイズであふれた都市部から遠く離れた田舎で野外研究を行っている。この論文の著者の1人であるHenrik Mouritsenも、かつてはそうした環境で研究を行ってい