国立科学博物館の研究主幹として哺乳類の標本の責任者の立場にある川田伸一郎さんは、モグラ博士として知られる。日本国内だけでなく、中国、台湾、ベトナム、タイなどのアジア諸国、さらにはアメリカやロシアなどでも、モグラのフィールドワークを行い、染色体研究を通じて、分類の解明に大きく寄与してきた。 モグラは、誰もが知っているけれど、よくよく考えると謎に満ちた生き物だ。そこで、今回は、モグラ博士・川田さんに、知られざるモグラの姿を教えてもらおう。博物館の標本についての問いはおいておき、まずはそこからだ。 「講演なんかを頼まれると、まず3つ質問をすることにしています。『モグラを知ってますか』『モグラを見たことありますか』『生きてるモグラ、見たことありますか』です。で、1つ目の質問に『知りません』という人はまずいないんですよ。日本人は、だいたい言葉をしゃべるレベルの子どもでも、もうモグラは知っているんです