何らかの事情で、生みの親が育てられない6歳未満の子どもを、血縁関係のない夫婦に実子として託す「特別養子縁組」。約30年前に作られた制度で、少しずつ認知は進んできました。 一方で、子どもに養子であることをいつ、どのように伝えるか。当事者たちには“真実告知”をめぐる葛藤がありました。真実告知に悩む親たち、養子であることを知らずに育ち“生みの親”を探す子どもたち――。特別養子縁組の現場から、母と子それぞれの幸せについて考えます。 私たちが訪れたのは、養子縁組をあっせんするNPO法人が運営する母子寮。予期しない妊娠で、子どもを生んでも育てることができない女性たちが共同生活する、全国でも珍しい施設です。ここへ来る女性のほとんどが、相手の男性や家族の助けを受けられず、経済的な困窮に陥っているといいます。 そんな女性たちの中で、私たちは高校生のカエデさん(仮名)に出会いました。カエデさんはすでに妊娠8か