脳の電気刺激が“セックスチップ”につながる可能性は? 食欲や性欲などの基本的な欲求を生み出している脳のシステムは何なのか──それを探るのが神経科学の大きな目標の1つだ。有名な生理学者オールズ(James Olds)は1956年,SCIENTIFIC AMERICANに寄せた「脳の快楽中枢」という記事で,丸1日絶食させたラットが餌につられて台から降りる様子について述べた。快楽中枢を刺激する電気ショックを餌にたどり着く前に与えると,ラットは餌をまったく食べずに快感にひたるようになった。 こうした実験によって神経機能の理解が進んで「食欲や性欲を調節する薬などが可能になるだろう」──当時は楽観的な時代でもあったので,オールズはそう結論づけている。 50年後の現在,オールズの予想はいまだ完全には実現していない。食欲抑制剤や性欲亢進剤はまだまだ改良が必要だ。だが近年,中枢神経系を刺激するというオールズ