グノーシス主義は、キリスト教において、その黎明期から、非正統として反駁された思想です。 グノーシスというと、善悪二元論とか霊肉二元論といったキーワードが出てきます。この二元論的世界観が、まず非キリスト教的とされてきました。 キリスト教では、究極善である神の聖性を一つの極みとする、いわば「一元」的な世界観をとります。聖性の不足、欠如はあっても、神の聖性と匹敵するような負の頂点を認めません。例えるなら、グノーシスは、マイナス極とプラス極がある世界観であり、キリスト教は、ゼロからプラス極しかない世界観です。キリスト教において、悪・地獄・悪魔といった概念は、神の絶対性に匹敵するものではなく、いわば聖性の欠如の度合いです。 そして、グノーシス主義の二元論では、精神や霊的な存在は善、物質や身体は悪とする捉え方がされました。この捉え方からキリストをみるなら、イエスの身体的存在は幻のようなものに過ぎず、イ