〈出てこないとやばい。警察とか大事になっちゃうよ〉 21歳の長男がこうして幾度LINEを送っても音沙汰がなかった母親からようやく返事が来たのは、最後に〈寂しい〉という一言だけのメッセージを送った時だった。 45歳の母親は殺人未遂の罪により、執行猶予中であった。1週間前、間借りしていた親類の家を何も言わずに飛び出し、執行猶予の条件として月2度あった保護司との面会を初めてすっぽかしていた。「今月中なら待ちます」と保護司は言ってくれたが、それを過ぎると保護観察所に連絡せざるを得なくなるという。もしかすると執行猶予を取り消されるかもしれないと長男は心配していた。 LINEに対しての母親からの返事には〈会おう〉と書いてあった。その日すぐに、母親は長男の職場近くのサイゼリヤまで会いに来てくれた。 「死ぬとか絶対に考えないでね。がんばって働いて僕がアパート借りるから、早くみんなで一緒に暮らせるようにしよ