近畿地方の静かな住宅街で、会社員の男性(34)は長女(5)とふたり、ひっそりと暮らしている。 1年前までは、妻(当時33歳)と長男(同9歳)との4人家族だった。みんなで生駒山にピクニックに行き、弁当を仲良く食べた。 数日後、妻は自宅で長男を手に掛け、自らの命も絶った。仕事から帰宅した男性が、冷たくなった遺体を発見した。 〈迷惑かけてすみません。娘のことをよろしくお願いします〉――。 食卓に置かれた便箋に、妻の言葉が遺(のこ)されていた。 ■ 妻は何をするにも一生懸命だった。親のネグレクト(育児放棄)のため施設で育ったせいか、特に育児には人一倍、熱心だった。 長男が4歳で発達障害と診断されると、専門書を読みあさり、発達障害児の母親のグループに参加。良い療育の教室があると聞いては掛け持ちした。 長男は幼稚園でかんしゃくを起こして友達をたたき、脱走することもあった。小学校では授業に集中できず、3