Arbeit Macht Frei(働けば自由になる)」とドイツ語で書かれた文字板がかかるアウシュビッツ元強制収容所の入り口=2006年5月29日、会川晴之写す 韓国・西江大の歴史家、林志弦(イム・ジヒョン)教授は新著「犠牲者意識ナショナリズム」(未訳)で、冷戦終結後に世界各地で目立つようになった歴史認識問題を読み解いた。 焦点を当てたのは、ホロコーストを巡るドイツとポーランド、イスラエルの問題であり、慰安婦問題などで衝突する日本と韓国の関係だ。ホロコーストと慰安婦問題を同列に並べることには違和感というか、落ち着かない思いを抱くことは否定しがたい。だが、冷戦終結後に呼び戻された「犠牲者としての記憶」が衝突を生む構図は共通している。 連載の最終回は、林教授のインタビューを柱に「犠牲者意識ナショナリズム」について考えてみたい。 「被害民族」と「加害民族」というステレオタイプ 林教授は「先祖が犠