進化論を否定しようというのでなければ、 エピソード記憶や自我意識も、進化の過程で生まれたと考えるのが妥当だろう。 つまり、 エピソード記憶を持つ個体の方が、 過去の経験から学び、同じ失敗を避けようとする (例えば危険な目にあったモノから逃げる) ことによって生存確率を高めることができて、 自然淘汰を経ていくうちにその記憶する能力が強化されていく。 そして、 エピソード記憶を持つ個体の中に、 あるとき突然変異によって自我の芽生えのようなものが生じた。 「自分」という自我意識が強くなればなるほど、 自分という存在が「かけがえのない」ものに思えるようになり、 自己を大事に思うようになる。 すなわち「死への恐怖」が生まれる。 「死」を忌避する個体の生存確率が高まるのは自明であり、 自我意識はどんどん強固なものへ (死がどんどん怖ろしいものへ) と進化し、 ついには自己同一性概念 (アイデンティティ