スウィート・アメリカン・メモリー 20代のはじめに、アメリカの語学学校に通っていた時期があった。学校があったのは東部のはずれにあるインディアナ州。大都会でもなく、かといって大自然もなく、ついでにこれといった名物もなく。米国人からは困惑気味に「ヘイ、なんでわざわざインディアナ???」と必ず聞かれてしまう、押しも押されもせぬ地方中堅都市である。 モータースポーツ好きの日本人なら「インディ500」を知っている人はいるかもしれない ホームステイ先の家庭は、若い夫婦だった。毎晩の食事の用意は、妻のアマンダの仕事だったが、仕事で帰りが遅い日にはマフィンやベーグルサンドを買ってきてくれて、それで夕飯を済ませることが多かった。 数あるテイクアウトメニューのなかでもっとも嬉しいのが、地元で人気の「Yats」というレストランが提供しているチリ・チーズ・エトフェであった。 エトフェの味というのは不思議なもので、