コロナ禍で注目された地方移住。都会ではなく山奥で仕事をする人がどんどん増えている時代である。そんな今こそ「なにもない田舎」と言われる地域の資源を再発見する機運も高まっている。 【写真】この記事の写真を見る(4枚) ここでは、人口が減少した地域でビジネスを成功させた事例を経営エッセイストの藻谷ゆかりさんがまとめた本『 山奥ビジネス 』(新潮社)より一部を抜粋。熊本県山都町の老舗酒蔵の、ゲーム「刀剣乱舞」を通じて手にした縁による立て直しについて紹介する。(全2回の2回目/ 後編を読む ) ◆◆◆ 1770年(明和7年)創業の老舗、通潤酒造12代目の山下泰雄は1963年生まれ、三人きょうだいの長男である。山下は老舗酒蔵の跡取りとして子供のころから祖父にかわいがられ、「長男である自分が、通潤酒造を継ぐのが当たり前」と思っていた。 高校から熊本市内に下宿し、大学は大阪大学経済学部に進学して数理経済を