美しい春夏ジャケットというのは、永遠の課題である。 ナポリの夏は暑い。気温で言えばアラブ人も汗をかくほど高いし、冷房設備は80年代のアルファロメオ並に貧弱である。 にも関わらず、彼らはジャケットを手放すことなく携えている。それはジャケットが、エレガンスの象徴であるからである。 しかしそれとは別に、ナポレターノ達が春夏にもジャケットを愛用できる単純明快な理由がある。それは湿度が低いことである。 ナポリの夏は暑い。しかしジメジメしてはいない。フランス人のジョークと比較してもドライな気候のため、歩いていれば暑いが日陰は涼しい。 ガレリア・ウンベルト裏のバル…《De Rosa》のテラス席で、ナポリ式の冷たいカプチーノを飲みながら人生の時間を浪費している分には、ジャケットを着ていてもよほど快適なのである。 一方日本である。 日本でのんびりと人生の時間を浪費するのは難しい。情報量が多く、商業的な娯楽が