「読めないほどの汚い字には可能性がある。」 文字による情報伝達を根本から否定するようなこの言葉であるが、読める読めないの限界への挑戦と考えることもできる。「漢字のとめ・はね・はらい」を見本通りになぞっても発見できない可能性に辿り着くことができるかも知れない。歴史が示すように将来、漢字がいまと同じかたちであるとは限らない。 いまから40年以上前、将来の漢字のあるべき姿を探求したのが長野利平氏だ。今回はその著書である『日本常用略字の体系 - 21世紀の漢字』(1983年、海事プレス)『草書・楷書・流書 - 第四世代漢字への挑戦』(1975年、あかがね印刷出版)を紹介したい。(冒頭の話は本書とは無関係である) ※書影は再現イメージです。 この2冊はタイトルから想像できるような書道の本でもなければ、過去の俗字や異体字を体系化した研究書でもない。手で書きやすく、機械でも処理しやすい略字体開発をまとめ