筑波こどものこころクリニック院長/小児科医の鈴木直光氏は著書『新訂版 発達障がいに困っている人びと』のなかで、発達障がいとどのように向き合うべきかを記しています。発達障がいは治療ができない難病ではありません。本記事では、その治療について、実例をもとに解説していきます。 「落ち着きがない息子」はADHDか? 私が市立病院に勤めていた時のことです。当時、小学1年生であったG君は、母親とともに、診察に来ました。 母親が待ち時間に待合室で記入した問診票を見ると、誰彼かまわず馴れ馴れしい態度をとる、綺麗に並べたがる、自己中心的なところがありトラブルも多い、自転車&縄跳びが苦手といった症状があったようです。多動型のADHDがメインで、少々自閉スペクトラム症が入っているという印象を受けました。 「何が心配ですか」と私が尋ねると、母親は静かに語り始めました。 「落ち着きがなく、よく離席して廊下や校庭へ行く