警察庁などによると、2019年の自殺者は2万169人。03年の3万4427人をピークに10年から10年連続で減少したが、現代社会の中でなお多くの人が死に追い込まれている。住職を務める長寿院(成田市名古屋)は20年以上前から「自死志願者の駆け込み寺」と呼ばれ、老若男女の苦しみに耳を傾けてきた。 「楽に死ぬ方法なんてない。体は生きたいと思っているんだ。生きる方法を考えよう」。6月下旬、東北地方の30代女性からの電話に呼び掛けた。新型コロナウイルスの影響などから職を失い、先行きが見えず、自ら人生を閉じようとしていた。泣きながら話す女性に、ゆっくりと相づちを打ちながら「父、母、祖父、祖母、先祖を10代さかのぼれば1024人、20代さかのぼれば104万8576人がいる。自分の命は自分だけのものじゃない」と伝えた。 寺に生まれ、育ち、僧侶として生きる使命を自然と抱いた。大学卒業後、釈迦(しゃか)の教え