140mmもの疲労亀裂(以下、亀裂)が走り、破断寸前に至った新幹線「のぞみ34号」(博多発・東京行、N700系16両編成)の台車事故。2017年12月にJR西日本(西日本旅客鉄道)で起き、台車の製造を手掛けたのは川崎重工業であることは広く報じられた。 国土交通省・運輸安全委員会はこの事案を重大インシデントに認定し、2019年3月には調査報告書(以下、報告書)を発表した。多くはこの事故を特定企業による特殊事例であり、報告書が公表された段階で「一件落着」とみなす。だが、「決して対岸の火事で済ませてはならない」と、日本の製造業にも川崎重工業の内情にも詳しい識者が警鐘を鳴らしている。 注意すべきは、作業者の「腕(技術や技能、ノウハウ、スキル)」に依存して仕上げる製品だ。具体的には、少量生産の大物部品や、いわゆる「一品物」と呼ばれる受注製品、開発サイドが決めた配合通りにはなかなか出来ない化学製品など