最近、エンニオ・モリコーネ(1928〜2020)が自身のことについて語った邦訳本が立て続けに2冊ほど出版された。2022年10月26日にフィルムアート社から出た『あの音を求めて モリコーネ、音楽・映画・人生を語る』と、2022年11月30日にDU BOOKSから出た『エンニオ・モリコーネ 映画音楽術 マエストロ創作の秘密――ジュゼッペ・トルナトーレとの対話』である。 映画ファン、音楽ファンにとっては説明不要のビッグネームではあるが、念のため説明しておこう。モリコーネは、1960年代にマカロニ・ウエスタン(ヨーロッパで撮られた西部劇)の映画に独創的な音楽を提供し、世界的に知られるようになったイタリアの作曲家である。1980年代に生み出された耽美的とさえいえる流麗な旋律――例えば、映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』における「デボラのテーマ」、映画『ミッション』における「ガブリエ