昆虫に関わる人の世界は、とかく変人に事欠きません。その様子をひと言で表すならば「欲望の塊」。珍しい虫を見たい採りたい、そのためなら寝食を投げ打つという、一般には理解の埒外にある欲望の坩堝。世間の冷たい視線という選別を潜り抜けてきた猛者たちのワンダーランドなのです。 石を投げれば変わり者に当たる昆虫業界にあってなお「奇人」の称号を独り占めにしているのが、好蟻性昆虫研究者の小松貴さんです。 はじめてお会いしたのは数年前、昆虫の魅力を紹介するイベントにご登壇いただいたときのこと。黒ずくめの服でゆらりと会場にたたずみ、不安になるほど口数の少ない方というのが当時の第一印象でした。しかし講演の時間になるや、魔法使いのマントと帽子を身にまとって登場し、聴衆の度肝を抜きます。星のついたスティックでスライドを指し示し、生きものたちの不思議な世界について教えてくれる語り口は、驚くほど巧みなものでした。 幼少の
イベントタイトルの「これが自由だ」は、岸さんは『メメモジャ』の連載第1回を読まれてTwitterに書かれていたひとこと。岸さんとメレ山さんにとっての「自由」とは――この春から新たな生活をスタートさせた方もいらっしゃると思います。そんな方の背中をそっと押してくれるような、人生における自由についてのお二人のお話です。 【ゲスト・岸政彦さんプロフィール】 岸政彦(きし・まさひこ) 社会学者。1967年生まれ、大阪在住。沖縄社会論、生活史方法論などを研究。主な書著に『同化と他者化──戦後沖縄の本土就職者たち』(ナカニシヤ出版)、『街の人生』(勁草書房)、『断片的なものの社会学』(朝日出版社・紀伊國屋じんぶん大賞2016受賞)、『質的社会調査の方法──他者の合理性の理解社会学』(有斐閣・共著)、『ビニール傘』(新潮社・第156回芥川賞候補)など。 岸政彦(以下、岸) いきなり本題に入りますが、ぼくは
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