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書評と科学に関するnamawakariのブックマーク (45)

  • 書評 「招かれた天敵」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    招かれた天敵――生物多様性が生んだ夢と罠 作者:千葉聡みすず書房Amazon 書は進化生物学者千葉聡による天敵を利用した生物的防除の歴史を扱う大作.千葉は「歌うカタツムリ」でカタツムリを題材に淘汰と浮動の進化観をめぐる壮大な進化学説史を語ってくれたが,書では生物的防除の成功と失敗の歴史を滔々と語り,そのストーリーテラーの才能をまたも披露してくれている. 序章にあたる「はじめに」では,「自然」という著しく複雑で多様な系に対して科学の手法であるモデル化で対応することの限界とリスクが指摘され,より良い解決を望むなら歴史を知ることが有益ではないかと示唆されている.書は有害生物防除についての歴史を知るために書かれているのだ. 第1章 救世主と悪魔 冒頭はレイチェル・カーソンの「沈黙の春」から始まる. 1939年に殺虫効果が発見されたDDTは人体への危険がほとんどないと認識され,マラリア撲滅の切

    書評 「招かれた天敵」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
  • 『進化理論の構造 I・II』は誰が読むのか? - leeswijzer: een nieuwe leeszaal van dagboek

    スティーヴン・ジェイ・グールド[渡辺政隆訳] (2021年11月20日刊行,工作舎,東京, 808 + 1,120 pp., 体価格9,000円 [I]/11,000円 [II],ISBN:978-4-87502-534-4 [I] | ISBN:978-4-87502-535-1 [II] → 目次 [I] |目次 [II] /版元ページ [I]|版元ページ [II]) この『進化理論の構造』の原書が出版された2002年であれば,グールドが書き留めた現代進化生物学の “戦記物語” の記述をリアルに実感できる読者層は少なくなかっただろう.しかし,20年後のいまこの訳を手にする読者にとっては大昔の “源平盛衰記” となってしまうかもしれない.これはの側(著者の側)の問題ではなく,読み手の側の事情による.たとえば,主著『適応と自然選択:近代進化論批評』の訳が工作舎から出たジョージ・C・

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  • 『学術出版の来た道』書評 - leeswijzer: een nieuwe leeszaal van dagboek

    有田正規 (2021年10月7日刊行,岩波書店[岩波科学ライブラリー・307],東京, vi+148+10 pp., 体価格1,500円, ISBN:978-4-00-029707-3 → 目次|版元ページ) 読了.これは超オススメ.とくに現役研究者には必読書.学術出版社と学術誌のたどってきた歴史を見渡しつつ,現在のアカデミアの状況がなぜこうなってしまったのかを冷静に記述する.第4章までは学術書・学術論文の出版史が中心だが,第5章以降が出色だ.コンパクトながら,学術出版社の経営・学術誌ビジネスモデルの変遷・オープンアクセス誌の光と影・インパクトファクター煉獄・学術誌包括契約(ビッグディール)・OAメガジャーナルなど主要な問題点がすべて列挙されている. 書『学術出版の来た道』を読み終えて考え込まざるを得ないのは,すぐに実行できるような解決策が「ない」こと,にもかかわらずこのまま放置すれ

    『学術出版の来た道』書評 - leeswijzer: een nieuwe leeszaal van dagboek
    namawakari
    namawakari 2021/10/24
    “『学術出版の来た道』”
  • 『科学を語るとはどういうことか:科学者、哲学者にモノ申す[増補版]』コメント - leeswijzer: een nieuwe leeszaal van dagboek

    須藤靖・伊勢田哲治 (2021年5月30日刊行,河出書房新社,東京,342 pp., 体価格2,000円,ISBN:978-4-309-25427-2 → 版元ページ) 須藤靖は「私は科学哲学が物理学者に対して何らかの助言をしたなどということは訊いたことがないし,おそらく科学哲学と一般の科学者はほとんど没交渉であると言って差し支えない状況なのであろう」(p. 16)と述べている.しかし,科学哲学に関する須藤靖のこの主張は,彼のホームグラウンドである “物理学” では正しい認識かもしれないが,ワタクシのように “生物体系学” の現代史を知っている者にとってはただの偏狭な間違った認識と言うしかない.個別科学ごとに「科学と科学哲学との関係」はそれぞれ異なるからだ.十数年前に出した:三中信宏 2007. 科学哲学は役に立ったか:現代生物体系学における科学と科学哲学の相利共生.科学哲学, 40(1

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  • 『種を語ること、定義すること:種問題の科学哲学』書評 - leeswijzer: een nieuwe leeszaal van dagboek

    網谷祐一 (2020年12月20日刊行,勁草書房,東京, viii+238+xv pp., 体価格3,200円, ISBN:978-4-326-10288-4 → 目次|版元ページ) 【書評】※Copyright 2021 by MINAKA Nobuhiro. All rights reserved 肩透かしから学ぶ「種問題」の現在「《種》とは何か?」「《種》はどのように定義できるのか?」—— 生物体系学において長きにわたって戦わされてきた「種論争」のなかで幾度も問われ続けてきたこれらの疑問は現在もなお解決できてはいない.地球上の生物多様性を語るとき,誰もが “共通通貨” として使うに値する《種》の概念があればさぞかし役に立つだろう.しかし,過去何世紀にも及ぶ種論争の泥沼から抜け出られる気配はいまだにない.ワタクシはこの種論争は解決されることに意義があるのではなく,いかにしてそれととも

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  • 『統計学を哲学する』読売新聞書評 - leeswijzer: een nieuwe leeszaal van dagboek

    大塚淳 (2020年10月30日刊行,名古屋大学出版会,名古屋, iv+242 pp., 体価格3,200円, ISBN:978-4-8158-1003-0 → 目次|版元ページ) 読売新聞大評が公開された:三中信宏「科学哲学の新たな到来 —— 統計学を哲学する 大塚淳著 名古屋大学出版会 3200円」(2020年12月6日掲載|2020年12月14日公開). 科学哲学の新たな到来 評者は方々の大学や農業試験場で統計学を教えた経験が長い。統計学と聞けばすぐさま難解な数学や数式を連想して震え上がる受講者を前に、「統計学の真髄は数学ではない」と説くことから始める。ばらつきのある不確定な現象に大昔から直面してきた人間には素朴な統計的直感が備わっている。統計学はヒトのもつ認知心理的基盤を無視できない。科学哲学もまた同様に確率論と統計学の基礎と深く関わっている。 書は、古典的な頻度主義統計学から

    『統計学を哲学する』読売新聞書評 - leeswijzer: een nieuwe leeszaal van dagboek
    namawakari
    namawakari 2020/12/25
    “統計学はもともと既知のデータから未知の仮説への橋渡しをする非演繹的な帰納推論…その背後には単なる数学的論理にはおさまりきらない哲学(存在論・意味論・認識論)上の諸問題が横たわっている”
  • シン=トゥン・ヤウ、スティーブ・ネイディス(久村典子訳)『宇宙の隠れた形を解き明かした数学者 カラビ予想からポワンカレ予想まで』 - 備忘録

    宇宙の隠れた形を解き明かした数学者 カラビ予想からポアンカレ予想まで 作者:シン=トゥン・ヤウ,スティーブ・ネイディス発売日: 2020/10/07メディア: 単行 微分幾何学者で数理物理の世界に大きな名を残す数学者シン=トゥン・ヤウの自伝。原題は”The Shape of a Life One mathematician’s search for the universe’s hidden geometry”。全体がヤウの一人称で書かれており、もう一人の著者であるネイディスの役割は、よくわからない。 客家の出であるという著者の出自から、父を早く亡くし、極貧の中にあっても教育に重きを置く家庭環境に支えられ、20歳でUCバークレーに進学する、といったところから書の物語は始まる*1。著者の名は、超弦理論のブームもあり、カラビ予想の解決、カラビ=ヤウ多様体の発見といったところからよく知られて

    シン=トゥン・ヤウ、スティーブ・ネイディス(久村典子訳)『宇宙の隠れた形を解き明かした数学者 カラビ予想からポワンカレ予想まで』 - 備忘録
    namawakari
    namawakari 2020/11/19
    ペレルマンについて。
  • 『SS先史遺産研究所アーネンエルベ:ナチスのアーリア帝国構想と狂気の学術』読売新聞書評 - leeswijzer: een nieuwe leeszaal van dagboek

    ミヒャエル・H・カーター[森貴史監訳|北原博・溝井裕一・横道誠・舩津景子・福永耕人訳] (2020年2月29日刊行,ヒカルランド,東京, 797 pp., 体価格9,000円, ISBN:978-4-86471-827-1 → 目次|版元ページ) 読売新聞大評が公開された:三中信宏「ナチスを支えた科学者 —— SS先史遺産研究所アーネンエルベ」(2020年5月3日掲載|2020年5月11日公開)※書は厚さ800ページで9000円.挑戦的な価格設定ではあるがけっして高くはないだろう. ナチスを支えた科学者 書を手に取ったのは何かの因縁だろう。以前、第二次世界大戦中の進化生物学について調べる機会があったとき、英語圏とほぼ同じ1940年代にドイツ語圏での進化理論の総合を成し遂げた中心人物である人類学者ゲルハルト・ヘーベラーやアーリア人種の優越性を実証しようとした植物遺伝学者ハインツ・ブリュ

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  • 『アリストテレス:生物学の創造[上・下]』読売新聞書評と読書メモ - leeswijzer: een nieuwe leeszaal van dagboek

    アルマン・マリー・ルロワ[森夏樹訳] 『アリストテレス 生物学の創造[上]』(2019年9月17日刊行,みすず書房,東京, viii, pp. 1-291, 63, 体価格3,800円, ISBN:978-4-622-08834-9 → 目次|版元ページ) 『アリストテレス 生物学の創造[下]』(2019年9月17日刊行,みすず書房,東京, iv, pp. 293-586, 35, 体価格3,800円, ISBN:978-4-622-08835-6 → 目次|版元ページ) 読売新聞大評が掲載された:三中信宏「よみがえる哲人の業績 —— アリストテレス 生物学の創造 上・下…アルマン・マリー・ルロワ著」(2020年1月19日掲載|2020年1月27日公開) よみがえる哲人の業績 生物学の歴史をさかのぼれば、アリストテレスにたどりつく。しかし、「アリストテレス以来2000年の歴史をもつ生物

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  • アレクサンダー・トドロフ『第一印象の科学』 - 西東京日記 IN はてな

    教員という職業柄、人の顔はたくさん見ている方だと思うのですが、たまに兄弟でもないのに「似ている!」と感じる顔があったり、双子で顔のパーツは当に似ているのに並んでみると少し顔の印象が違ったり、顔というのは当に不思議なものだと思います。 まずは、下の写真の2つの顔を見て下さい(書3pの図1)。この2人が選挙にでていたらどちらが勝ちそうでしょうか? おそらく、多くの人は左側の人物を選ぶでしょう。なんとなく有能そうに見えます。 実はこれ、左側は対立候補よりも有能そうだと人びとが感じた顔をモーフィング(合成)したもので、右側は彼らの対立候補の顔をモーフィングしたものです。 そして、人びとは顔写真を見ただけで勝つ候補を7割程度の確率で予測できるというのです。この実験は各国で行われており、同じような結果が出ています(顔から有能さが推測できるのか? それとも顔で選んでいるのか?)。 この他にも、この

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  • すべては生き延びるために - 泣きやむまで 泣くといい

    短文のレビューだし、Facebookのほうに投稿するつもりだったのだけれど、なんだか不具合でうまくいかないので、ずっと更新のできていないブログに。 おさなごころを科学する: 進化する幼児観 作者: 森口佑介 出版社/メーカー: 新曜社 発売日: 2014/03/10 メディア: 単行 この商品を含むブログを見る 一読して、著者が当に優秀な方だなあ……と。 認知発達についての説明は研究によって書き換えられていく部分もある上に、アプローチも多様なので読者を混乱させないように展開させていくのが大変だと思う。それを「乳幼児観」の変遷や上積みとして、きれいにまとめている。 著者自身の研究に基づく乳幼児観の部分を一番興味深く読めた。「それぞれの時期の行動はすべて適応的だ」というメッセージが、さまざまな特性をもつ子どもと関わる自分たちのような支援者にも馴染むからだろう。 乳幼児期の実行機能が限られて

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  • 科学主義と、通底する立場の存在 金山「武谷三男論 科学主義の淵源」 - オシテオサレテ

    昭和後期の科学思想史 作者: 金森修出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2016/06/30メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見る 金山浩司「武谷三男論 科学主義の淵源」『昭和後期の科学思想史』金森修編、勁草書房、2016年、3–47ページ。 力作である。武谷三男は著述家としてのその長い経歴のなかで、じつにさまざまな問題について発言してきた。その膨大な著作群を読みとくことで、いくつもの論点を共通してささえている彼の根的な考え方をあきらかにしている。その考え方とは、「科学主義」である。武谷によれば、人間はがんばって自然のあり方をあきらかにしていけるし、またそうしてきた。ここでの人間というのは、あらゆる制約から自由に、客観的に自然を探求する者を指す。制約とは資政治の論理といった「非科学的」な要因である。これは裏をかえせば、経済的・社会的・政治的な要因は科学にとって

    科学主義と、通底する立場の存在 金山「武谷三男論 科学主義の淵源」 - オシテオサレテ
  •  「交尾行動の新しい理解」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    交尾行動の新しい理解-理論と実証 作者: 粕谷英一,工藤慎一出版社/メーカー: 海游舎発売日: 2016/03/15メディア: 単行この商品を含むブログ (2件) を見る 書名は「交尾行動」となっているが*1,実際には性役割,近親交配回避,性淘汰理論のここ20年の進展を解説し,さらにグッピーとマメゾウムシについての性淘汰の実証リサーチの詳細が紹介されているになる. 性役割や性淘汰に関する進化理論は70年代から90年代にかけて大きく進展し,日でも行動生態学の教科書がいくつも刊行されてその理論的な詳細が紹介されてきた.理論はその後も性的コンフリクト,精子競争と隠れたメスの選択,拮抗的性淘汰をめぐって前進しているが,ここ20年ぐらいは日語書籍としてはあまり紹介されておらず,包括的な解説としてはわずかにデイビス,クレブス,ウエストの教科書に簡単な解説があるのみという状況だ.書はこの分野に

     「交尾行動の新しい理解」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
  •  「人はなぜ格闘に魅せられるのか」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    人はなぜ格闘に魅せられるのか――大学教師がリングに上がって考える 作者: ジョナサン・ゴットシャル,松田和也出版社/メーカー: 青土社発売日: 2016/02/26メディア: 単行この商品を含むブログ (5件) を見る 書は英文学博士で米国の大学の非常勤講師である著者が,総合格闘技(MMA:Mixed Martial Arts)のリングに上がることになるというはちゃめちゃでキレッキレの体験談とともに,男性心理における格闘技の位置付けを論じているだ.書にはスティーヴン・ピンカーがカバージャケットに推薦文を寄せていて,私はそれにつられて読むことにしたものだ.原題は「The Professor in the Cage: Why Men Fight and Why We Like to Watch」 著者ジョナサン・ゴットシャルは2008年に「The Rape of Troy」というホメロ

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  • Daily Life:戸田山和久『科学的実在論を擁護する』書評

    March 27, 2016 戸田山和久『科学的実在論を擁護する』書評 戸田山和久『科学的実在論を擁護する』名古屋大学出版会 2015 http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0801-3.html 書は戸田山氏による格的な科学的実在論の研究書である。 まず、日語でよめる実在論論争史の紹介として、現時点で書がもっとも充実したものだということは間違いない。20世紀における論争の紹介内容は、シロスのScientific Realism: How Science Tracks Truth (Psillos 1999)という定評ある研究書を下敷きにしていることもあり(これについてはあとで触れる)、信頼性は非常に高い。また、21世紀になってからの動きとして、チャクラバティの「半実在論」(semi-realism)やスタンフォードの「新しい帰納法」など

  • 『ヘッケルと進化の夢:一元論、エコロジー、系統樹』 - leeswijzer: een nieuwe leeszaal van dagboek

    佐藤恵子 (2015年9月20日刊行,工作舎,東京, 418 pp., 体価格3,200円, ISBN:9784875024668 → 目次|版元ページ) 【書評】※Copyright 2015 by MINAKA Nobuhiro. All rights reserved ヘッケル山脈の裾野ははてしなく かつて岩波文庫に『生命の不可思議』(後藤格次訳,1928年刊行,全2冊)が入るくらいには知名度があったエルンスト・ヘッケルだが,現在では図版集『生物の驚異的な形』(小畠郁生監修|戸田裕之訳,2009年4月30日刊行,河出書房新社,141 pp., 体価格2,800円,ISBN:9784309252247 → 紹介|目次|版元ページ[新装版])を除けば,ヘッケルの日語訳著作はほとんど入手できなくなってしまった. しかし,地球上の生物多様性とその系統的体系をその卓越した画才を発揮して存

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  • 吉川浩満『理不尽な進化』 - logical cypher scape2

    進化論についての言説史的な(?)エッセー(?)。どういうなのか一言で説明するのはちょっと難しいが、「何故非専門家は進化論について誤解するのか」「何故グールドは混乱した議論を展開したのか」という問いをたて、非専門家やグールドがアホだからとはせずに、進化論にはそういう罠が仕掛けられているのではないかと論じていく。 進化論という取り上げているテーマ自体は、科学・生物学ではあるが、問いの立て方や議論の展開は、人文書的であると思う。 科学哲学や生物学の哲学か、といえば、そういうところもないわけではないが、いわゆる「科学哲学」や「生物学の哲学」と書はやはり興味関心の所在が違う。 あるいは、一種の「批評」かもしれない。 批評の面白みの一つとして、「この○○を使って××を読み解くのか」という組合せの妙、みたいなものはあると思う。これが妙になるかトンデモになるかは、書き手の腕次第ということになるが。 こ

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  • 吉川浩満『理不尽な進化――遺伝子と運のあいだ』 - katosのブログ

    理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ 吉川 浩満 朝日出版社 2014-10-25 売り上げランキング : 1300 Amazonで詳しく見る by G-Tools 読んでためになるだけでなく、何というか、心が洗われるようなだった。 書のはじめの方で明かされるモチーフは、専門的な科学としての進化論の基的な考え方を過不足く解説しつつ、それと大衆的な進化論のイメージあるいは「世界像」としての進化論との懸隔を明らかにしながら、(後者を前者に近づけようという科学的啓蒙とは別の関心から)その「懸隔」そのものの私たちにとっての意味を問う、といったところ。ここではひとまず専門家と素人との懸隔が問題であるように見える。しかし叙述が進むにつれて、それはドーキンスとグールドとの懸隔であり、また実はグールドの内部にあってその人自身を苦しめたはずの葛藤であり……と変奏され、さらにはそれが科学理論と世界像、自然

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  • Daily Life:『神は妄想である』書評(昔書いたもの)

    May 15, 2014 『神は妄想である』書評(昔書いたもの) (リクエストがあったので、かつて『日経サイエンス』に掲載したドーキンス『神は妄想である』書評の長いバージョンを以下に再掲します。途中[  ] でくくってあるところは字数制限のため掲載バージョンではカットした部分です。初出:『日経サイエンス』2007年9月号、110ページ) 神は妄想である―宗教との決別 [単行]リチャード・ドーキンス早川書房2007-05-25 神について聞かれた科学者の多くは「神がいるかどうかは科学の扱う領域ではない」と答えるだろう。実際、宗教との軋轢をさけるにはうまい答え方だ。しかし当に神は科学で扱えない問題なのだろうか。 書でリチャード・ドーキンスはあえて一歩を踏み出し、科学的な仮説としての「神仮説」を検討する。この宇宙の事実についての主張である以上、神仮説からも 予測できることがいろいろある。そ

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  •  久米郁男『原因を推論する』 - 西東京日記 IN はてな

    読んでいたら、奥さんに「何その漠然としすぎたタイトルは?」と言われたですが、このは、政治学、そして社会科学全般の研究方法について解説した入門書になります。 講談社現代新書の隠れた名著、高根正昭『創造の方法学』をアップデートしたと言えば、『創造の方法学』を読んだ人にはピンとくると思います。 世の中ではさまざまな問題が起こり、その原因が探られています。 最近は流行らなくなりましたが、一時期流行った「キレる少年」なんかだと、その原因として「ゆとり教育」だとか「テレビゲーム」とか「朝べていない」とか、いろいろな原因が専門家やコメンテーターによって語られるわけです。 このでも、平成22年に内閣府が行った「第4回 非行原因に関する総合的研究調査」の中で、非行少年にはそれ以外の少年よりも朝べない割合が高い、というデータが示されたということが述べられています(124p以下)。 「やはり

     久米郁男『原因を推論する』 - 西東京日記 IN はてな
    namawakari
    namawakari 2014/01/16
    “高根正昭『創造の方法学』をアップデートした本”これはよさそう。