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ブックマーク / morningrain.hatenablog.com (65)

  • 2023年の本 - 西東京日記 IN はてな

    今年は読むペースはまあまあだったのですが、ブログが書けなかった…。 基的に新刊で買ったの感想はすべてブログに書くようにしていたのですが、今年は植杉威一郎『中小企業金融の経済学』(日BP)、川島真・小嶋華津子編『習近平の中国』(東京大学出版会)、ウィリアム・ノードハウス『グリーン経済学』(みすず書房)、リチャード・カッツ、ピーター・メア『カルテル化する政党』(勁草書房)、黒田俊雄『王法と仏法』(法蔵館文庫)といったは読んだにもかかわらず、ブログで感想を書くことができませんでした…。 このうち、植杉威一郎『中小企業金融の経済学』はけっこう面白かったので、どこかでメモ的なものでもいいので書いておきたいところですね。 この1つの原因は、秋以降、ピケティ『資とイデオロギー』という巨大なスケールのを読んでいたせいですが、それだけの価値はありました。 というわけで、最初に小説以外のを読んだ

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  • 2022年の本 - 西東京日記 IN はてな

    気がつけば今年もあと僅か。というわけで恒例の今年のです。 今年は小説に関しては、朝早起きしなくちゃならない日が多かったので寝る前に読めず+あんまり当たりを引けずで、ほとんど紹介できないですが、それ以外のに関しては面白いものを読めたと思います。 例年は小説には順位をつけているのですが、今年はつけるほど読まなかったこともあり、小説小説以外も読んだ順で並べています。 ちなみに2022年の新書については別ブログにまとめてあります。 blog.livedoor.jp 小説以外の 筒井淳也『社会学』 「役に立つ/立たない」の次元で考えると、自然科学に比べて社会科学は分が悪いかもしれませんし、社会科学の中でも、さまざまなナッジを駆使する行動経済学や、あるいは政策効果を測ることのできる因果推論に比べると、社会学は「役に立たない」かもしれませんが、「それでも社会学にはどんな意味があるの?」という問題

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  • 2021年の本 - 西東京日記 IN はてな

    なんだかあっという間にクリスマスも終わってしまったわけですが、ここで例年のように2021年に読んで面白かった小説以外と小説でそれぞれあげてみたいと思います。 小説以外のは、社会科学系のがほとんどになりますが、新刊から7冊と文庫化されたものから1冊紹介します。 小説は、振り返ると中国韓国台湾といった東アジアのものとSFばかり読んでいた気もしますが、そうした中から5冊あげたいと思います。 なお、新書に関しては別ブログで今年のベストを紹介しています。 blog.livedoor.jp 小説以外の(読んだ順) 蒲島郁夫/境家史郎『政治参加論』 政治学者で現在は熊県知事となっている蒲島郁夫の1988年の著作『政治参加』を、蒲島の講座の後任でもある境家史郎が改定したもの。基的には有権者がどのように政治に参加し、そこにどのような問題があるのかを明らかにした教科書になります。 教科書とい

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  • パク・ソルメ『もう死んでいる十二人の女たちと』 - 西東京日記 IN はてな

    ここ最近、多くの作品が翻訳されている韓国文学ですが、個人的には、『ギリシャ語の時間』や『回復する人間』のハン・ガンと、『ピンポン』や『三美スーパースターズ 最後のファンクラブ』のパク・ミンギュがちょっと抜けた存在のだと思っていましたが、このパク・ソルメの作品もすごいですね。 1985年生まれの女性作家で、ハン・ガン(1970年生まれ)やパク・ミンギュ(1968年生まれ)に比べると若いですが、一種の「凄み」を感じさせます。 まず、冒頭に置かれているが「そのとき俺が何て言ったか」という作品ですが、いきなり理解不能な暴力が描かれています。 カラオケ店のオーナーと見られる男は客の女性に「一生けんめい」歌うことを要求するのですが、その姿は映画『ノーカントリー』でハビエル・バルデムが演じた殺し屋のシガーを思い起こさせるもので、読み手にも異常な圧力で迫ってきます。 書は訳者の斎藤真理子による日オリジ

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  • スーパークレイジー君の当選によせて - 西東京日記 IN はてな

    2021年1月31日の埼玉県戸田市の市議会議員選挙(定数26)において、2020年の都知事選でもそのパフォーマンスが話題なったスーパークレイジー君こと西誠氏が25番目の912票の得票で初当選しました(政治家としてもスーパークレイジー君として活動するとのことなので、以下もスーパークレイジー君で)。 都知事選では「百合子か、俺か」のキャッチフレーズやそのパフォーマンスからイロモノ候補かと思っていたのですが、政見放送を見たら非常に真面目な主張をしていて驚いた記憶があります。 今回の当選を受けて、マスコミでも話題を集めていますが、今回のスーパークレイジー君の当選には「驚いた」「ウケる」といった要素だけではなく、日の選挙や民主主義を考える上での重要な問題が含まれていると考えるので、以下、2つの面から考えてみたいと思います。 1. 日の地方議会の選挙制度の問題 今回の戸田市議会議員選挙の結果は以

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  • 2020年の本 - 西東京日記 IN はてな

    例年通り、今年読んで面白かった小説以外の(社会科学のばかり)と小説を紹介ます。 今年はコロナの影響で自宅勤務になったりして「いつも以上にが読めるのでは?」などとも思いましたが、子どもがいる限り無理でしたね。そして、小説は読むスピードが随分鈍りましたし、そのせいか長編が読めなくなったというか、読まなくなった。短編集ばかりを紹介しますがご容赦ください。 なお、新書に関しては別ブログで2020年のベストをまとめています。 blog.livedoor.jp 小説以外の(読んだ順) 木下衆『家族はなぜ介護してしまうのか』 なんとも興味をそそるタイトルですが、書は、認知症患者のケアにおける家族の特権的な立場と、それゆえに介護専門職というプロがいながら、家族が介護の中心にならざるを得ない状況を社会学者が解き明かしたになります。 最終的には次のような答えが導き出されているのですが、そのプロセス

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  • 小熊英二、樋口直人編『日本は「右傾化」したのか』 - 西東京日記 IN はてな

    ここ最近話題になっている「右傾化」の問題。「誰が右傾化しているのか?」「当に右傾化しているのか?」など、さまざまな疑問も浮かびますが、書はそういった疑問にさまざまな角度からアプローチしています。 実は、国民意識に関しては特に「右傾化」という現象は見られないが、自民党は以前より「右傾化」しているというのが、書の1つの指摘でもあるのですが、そのためか、執筆者に菅原琢、中北浩爾、砂原庸介といった政治学者を多く迎えているのが書の特徴で、編者は2人とも社会学者であるものの、社会学からの視点にとどまらない立体的な内容になっていると思います。 目次は以下の通り。 総 説 「右傾化」ではなく「左が欠けた分極化」  小熊英二 第I部 意 識 1 世論 世論は「右傾化」したのか  松谷満 2 歴史的変遷 「保守化」の昭和史――政治状況の責任を負わされる有権者  菅原琢 第Ⅱ部 メディア・組織・思想 1

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    namawakari
    namawakari 2020/12/08
    “ 「保守化」あるいは「若者の保守化」は、選挙結果の裏にある複雑なメカニズムをスキップして、わかりやすい話に落とし込むために使われたマジックワードのようなものなのです”
  • エマニュエル・サエズ/ガブリエル・ズックマン『つくられた格差』 - 西東京日記 IN はてな

    ピケティの共同研究者でもあるサエズとズックマンのこのは、格差の原因を探るのではなく、格差を是正するための税制を探る内容になっています。序のタイトルが「民主的な税制を再建する」となっていますが、このタイトルがまさに書の内容を示していると言えるでしょう。 富裕層への最高税率が引き下げられたこと、法人税が引き下げられたことなどが格差の拡大に寄与しているということは多くの人が感じていることだと思いますが、同時に、富裕層への最高税率が引き上げられたら富裕層海外へ逃げてしまう、法人税を引き上げたら企業が海外に逃げてします、経済成長にブレーキが掛かってしまうという考えも広がっています。そして、こうしたことを考えると結局は消費税(付加価値税)をあげていくしかないという議論の見られます。 こうした考えに対して、書は富裕層や企業からもっと税金を取るべきであり、それは可能であるという主張をしています。

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  • 谷口将紀『現代日本の代表制民主政治』 - 西東京日記 IN はてな

    書では1ページ目にいきなり下のようなグラフが掲げられており、「この図が、書の到達点、そして出発点である」(2p)と述べられています。 グラフのちょうど真ん中の山が有権者の左右イデオロギーの分布、少し右にある山が衆議院議員の分布、そしてその頂点より右に引かれた縦の点線が安倍首相のイデオロギー的な位置です。 これをみると、国民の代表である衆議院議員は、国民のスタンスよりもやや右に位置しており、衆議院議員から選出された安倍首相はさらに右に位置しています。 どうしてこのようなズレがあるにもかかわらず、安倍政権は安定しているのか? それが書が答えようとする問いです。 書は、著者と朝日新聞社が衆議院選挙や参議院選挙のたびに共同で行っている「東京大学谷口研究室・朝日新聞社共同調査」をもとに、各政党、各議員のイデオロギー位置を推定し、さらに有権者への調査を重ねていくことで、「小泉以降」の日政治

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  • ダロン・アセモグル&ジェイムズ・A・ロビンソン『自由の命運』 - 西東京日記 IN はてな

    『国家はなぜ衰退するのか』のコンビが再び放つ大作。「なぜ豊かな国と貧しい国が存在するのか?」という問題について、さまざまな地域の歴史を紐解きながら考察しています。 と、ここまで聞くと前著を読んだ人は「『国家はなぜ衰退するのか』もそういう話じゃなかったっけ?」と感じると思いますが、書は分析の道具立てが違っています。 前著では「包括的制度/収奪的制度」という形で国の制度を2つに分けて分析することで、経済成長ができるか否かを提示していました。「包括的制度」であれば持続的な経済成長が可能で、「収奪的制度」であれば一時的な成長はあっても持続的な経済成長は難しいというものです。 ただし、この理論にはいくつかの欠点もあって、「収奪的制度」という同じカテゴリーに、アフリカの失敗した国家からかなりしっかりとした統治システムを持つ中国までが一緒くたに入ってしまう点です。「どちらにせよ支配者が富を奪ってしま

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  • 2010年代、社会科学の10冊 - 西東京日記 IN はてな

    2010年代になって自分の読書傾向は、完全に哲学・思想、心理、社会、歴史といった人文科学から政治、経済などの社会科学に移りました。その中でいろいろな面白いに出会うことができたわけですが、基的に社会科学の、特に専門書はあまり知られていないと思います。 人文科学のは紀伊國屋じんぶん大賞など、いろいろと注目される機会はあるのに対して、社会科学のはそういったものがないのを残念に思っていました。もちろん、いいは専門家の間で評価されているわけですが、サントリー学芸賞などのいくつかの賞を除けば、そういった評価が一般の人に知られる機会はあまりないのではないかと思います。 そこで社会科学のの面白さを広めようとして書き始めたこのエントリーですが、最初にいくつか言い訳をします。 まず、「社会科学の」と大きく出たものの、法学や経営学のはほぼ読んでいませんし、以下にあげたを見てもわかるように社会

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  • 2019年の本 - 西東京日記 IN はてな

    毎年恒例のエントリー。今年はまず小説以外の(と言ってもほぼ社会科学のですが)を読んだ順で9冊紹介します。 小説に関しては去年は順位をつけませんでしたが、今年は順位をつけて5冊紹介します。 ちなみに新書のほうは以下に今年のベストをまとめてあります。 blog.livedoor.jp ・ 小説以外の ジョージ・ボージャス『移民の政治経済学』 移民は受入国にどんな影響をあたえるのでしょうか? 経済を成長させるのでしょうか? それとも減速させるのでしょうか? あるいは移民の受け入れによって損する人と得する人が出てくるのでしょうか? このアメリカのハーバード・ケネディスクールの教授で、長年移民について研究してきた著者が、移民のもたらす影響をできるだけ詳しく分析し、上記の問に答えようとしたになります。 日でもこれから「移民は是か非か」、「移民は日経済を救うのか?」といった議論がなされて

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  • ジェリー・Z・ミュラー『測りすぎ』 - 西東京日記 IN はてな

    民間企業だけでなく、学校でも病院でも警察でも、そのパフォーマンスを上げるためにさまざまな指標が測定され、その指標に応じて報酬が上下し、出世が決まったりしています。 もちろん、こうしたことによってより良いパフォーマンスが期待されているわけですが、実際に中で働いてみると、「こんな指標に意味があるのか?」とか「無駄な仕事が増えただけ」と思っている人も多いでしょうし、さらには数値目標を達成するために不正が行われることもあります。 この現代の組織における測定基準への執着の問題点と病理を分析したのが書になります。著者は『資主義の思想史』などの著作がある歴史学部の教授で、大学の学科長を務めた時の経験からこのテーマに関心をもつことになったそうです。文190ページほどの短めのですが、問題を的確に捉えていますし、紹介される事例も豊富です。さらに、現在「新自由主義」という曖昧模糊とした用語で批判されてい

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    namawakari
    namawakari 2019/07/07
    これは面白い論点。
  • アレクサンダー・トドロフ『第一印象の科学』 - 西東京日記 IN はてな

    教員という職業柄、人の顔はたくさん見ている方だと思うのですが、たまに兄弟でもないのに「似ている!」と感じる顔があったり、双子で顔のパーツは当に似ているのに並んでみると少し顔の印象が違ったり、顔というのは当に不思議なものだと思います。 まずは、下の写真の2つの顔を見て下さい(書3pの図1)。この2人が選挙にでていたらどちらが勝ちそうでしょうか? おそらく、多くの人は左側の人物を選ぶでしょう。なんとなく有能そうに見えます。 実はこれ、左側は対立候補よりも有能そうだと人びとが感じた顔をモーフィング(合成)したもので、右側は彼らの対立候補の顔をモーフィングしたものです。 そして、人びとは顔写真を見ただけで勝つ候補を7割程度の確率で予測できるというのです。この実験は各国で行われており、同じような結果が出ています(顔から有能さが推測できるのか? それとも顔で選んでいるのか?)。 この他にも、この

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  • 野口雅弘『忖度と官僚制の政治学』 - 西東京日記 IN はてな

    タイトルからすると、ここ最近の安倍政権を批判したにも思えますが、そこは『官僚制批判の論理と心理』(中公新書)で、ウェーバーをはじめトクヴィル、アーレント、フーコー、ルーマンなどを参照しながら官僚機構の肥大化と官僚批判のメカニズムを論じてみせた著者、もっと広い視野と長いスパンで官僚制を論じています。 中身は著者がさまざまな雑誌などに発表してきたものと書き下ろしの「政治学エッセイ」からなっており、現在の官僚制の問題だけではなく、「アイヒマンは当に『悪の陳腐さ』を表す人間だったのか?」など、いろいろな論点を含んでいます。 ここでそのすべてを紹介する余裕はないので、一番面白く感じた最後の第11章からさかのぼる形で簡単に内容を紹介していこうと思います。 目次は以下の通り。 序章 今日の文脈 第1章 官僚制と文書―バルザック・ウェーバー・グレーバー 第2章 脱官僚と決定の負荷―政治的ロマン主義をめ

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  • 善教将大『維新支持の分析』 - 西東京日記 IN はてな

    ここ最近、「ポピュリズム」という言葉が、政治を語る上で頻出するキーワードとなっています。アメリカトランプ大統領に、イギリスのBrexit、イタリアの五つ星運動にドイツのAfDと、「ポピュリズム」というキーワードで語られる政治勢力は数多くいるわけですが、では、日における「ポピュリズム」といえば、どんな勢力がそれに当てはまるでしょうか? そこで、小泉純一郎や都民ファーストの会と並んで、多くの人の頭に浮かぶのが、おおさか維新の会でしょう。特に代表を務めていた橋下徹は多くの論者によって代表的な「ポピュリスト」と考えられていました。 「橋下徹という稀代のポピュリストによって率いられ、主に政治的な知識が乏しい層から支持を調達したのが維新である」というイメージは幅広く流通していたと思います。 しかし、このはそうしたイメージに対し、実証的な分析を通じて正面から異を唱えるものとなっています。 目次は以

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  • 2018年ベストアルバム - 西東京日記 IN はてな

    去年の年末のふくろうずの解散発表、今年のチャットモンチーの解散と邦楽に関しては喪失感の大きかった去年から今年ですが、洋楽ではYoung FathersとCar Seat Headrestを発見することが出来て(両者とも1stアルバムではないのですが…)、もう少しだけ音源探し生活が続けられるのではないかと思いました。 というわけで、今年は7枚紹介したいと思います。 1位 Young Fathers/Cocoa Sugar TV On The Radioが好きな人はぜひ!というバンド。 ブラックミュージックのリズムが非常なタイトな形で再編成されていて、初期のTV On The Radioを思い出させます。 音楽はTV On The Radioを思い起こさせる、という以外はなかなか説明しがたいのですが、3MCでラップグループのような編成なのですが、音はけっこうバンドサウンドっぽいところが面白いと

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  • 2018年の本 - 西東京日記 IN はてな

    毎年恒例ということで、今年は小説以外のから新刊(文庫化含む)を読んだ順で6冊、少し前のから2冊を紹介したいと思います。 小説に関しては去年にひき続いて今年もあまり読めず…という感じで、なおかつ突き抜けたようなすごい小説は読めなかったので、例年とは違い読んだ順で順位を付けずに5冊紹介します。 なお、新書に関しては別のブログで「2018年の新書」をまとめています。 ・ 小説以外の 今井真士『権威主義体制と政治制度』 サブタイトルは「「民主化」の時代におけるエジプトの一党優位の実証分析」。権威主義体制がいかに成立し、またそれがいかなる時に「民主化」するのかということを主にエジプトを事例にあげながら分析したになります。 中東は今まで「民主化の失敗事例」として一種の逸脱として捉えられることが多かったですが、これを「権威主義体制の成功事例」と捉え、さらにその中でも一党優位制→「アラブの春」によ

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  •  ケネス・シーヴ、 デイヴィッド・スタサヴェージ『金持ち課税』 - 西東京日記 IN はてな

    帯に「民主主義は累進課税を選択しない。選択させたのは、戦争のみだった」との言葉がありますが、これは書の主張を端的に表している言葉といえるでしょう。 20世紀の前半には累進課税が強化されて格差の縮小が見られたが、後半からは累進課税の弱まりによって格差が拡大しつつあるということはピケティの研究などによって知られていますが、このでは、その累進課税の強化が戦争の犠牲に対する補償という論理で導入され、戦争による大規模動員がなくなるとともに支持を失っていったということを示しています。 貧乏人は常に累進課税の強化を望んでいるようにも思えますが、実はそうではないのです。 目次は以下の通り。 第1部 課税をめぐる議論 第1章 政府が富裕層に課税する理由 第2章 市民の平等な扱い 第2部 政府はどのようなときに富裕層に課税してきたか 第3章 過去2世紀の所得税 第4章 相続財産への課税 第5章 文脈のなか

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  •  アマルティア・セン『アイデンティティと暴力』 - 西東京日記 IN はてな

    少し前に読んだで感想を書きそこねていたのですが、これは良いですね。現代における理想主義の一つの完成形ともいえるような内容で、理想主義者はもちろん、理想主義を絵空事だとも思っている現実主義者の人も、ぜひ目を通して置くべきだと思います。 著者はご存知、アジア人初のノーベル経済学賞を受賞したインド出身のアマルティア・セン。彼の講演をもとにしたもので、読みやすく、またセンの思考のエッセンスが詰まっています。 書の元になった講演の一部はボストン大学で2001年の11月から翌4月にかけて行われたものです。ちょうどアメリカの9.11テロの直後であり、イスラームと西洋諸国の「文明の衝突」が叫ばれた時期でもあります。 もちろん、センはこうした衝突に反対する立場をとります。センはアイデンティティの重要性を認めつつ、「1人に1つのアイデンティティ」という考えを否定し、「アイデンティティの複数性」を主張す

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