『女はいつからやさしくなくなったか 江戸の女性史』(中野節子)というタイトルを目にして、「昔の女性はもっと優しかったの? じゃあダンナのお小遣いも上げてあげるべき?」と思ったあなた。安心してください。江戸時代以前に理想とされた「やさしい」は「艶」という意味合いが強くあった。つまり、今風に言えば「エロやさしい」というところだろうか。 本作は、江戸時代前期に書かれた「女性向けの教訓書」を主な参考資料として、「社会に求められた女性像」の変遷を追っている1冊だ。「エロやさしい」から「貞節」へ。そして現代の「家庭を守る主婦」に繋がる流れを、豊富な文献とともに解説している。 そもそも「エロやさしい」とはどういうことなのか。 著者は次のように述べる。 気高く、情が深く、女性性が豊かである、そしてさらにエロチックな側面をもっている。(中略)情が深いというのも、他人に共感できる能力に長けているということだが