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ナショナルジオグラフの検索結果41 - 80 件 / 103件

  • ギターに使う希少な黒檀の森、アフリカで再生へ

    カメルーン南西部コンゴ盆地の森で、黒檀の苗木を植えるノエル・ナケレ・ドボ・ンコウリさん。「これらの木は私たちの遺産です」(PHOTOGRAPH BY TIM MCDONNELL) アフリカ、カメルーン南西部にあるコンピア村の熱帯雨林。ノエル・ナケレ・ドボ・ンコウリさんがなたを振り回し、生い茂るつるを切って道を開いていく。ンコウリさんは数メートルごとに立ち止まると、赤土に穴を開けて黒檀(コクタン、エボニー)の苗木を植え付ける。黒檀は、彫刻やピアノの鍵盤、家具のアクセント、弦楽器の指板(ネックの表面に張った板)として珍重されている漆黒の木材だ。 ンコウリさんをはじめ、一帯の村人たちは2018年から、5000本以上の黒檀を植樹している。木材として利用できる大きさに育つまでには100年かかるが、ンコウリさんは未来の世代のための投資と考えている。カメルーンのあるアフリカ中部では、農業や樹木の伐採が原

      ギターに使う希少な黒檀の森、アフリカで再生へ
    • 大量絶滅後の100万年を示す貴重な化石を発見

      岩石を割って発見された、6600万年前の大量絶滅を生き延びた脊椎動物の頭骨。見えているのは、古生物学者タイラー・ライソン氏の手。(PHOTOGRAPH BY HHMI TANGELED BANK STUDIOS) 恐竜の時代を終わらせた大量絶滅の直後、生命はどのように復活したのか。その概略が、米コロラド州で見つかった数百もの化石から明らかになり、10月24日付けの学術誌「サイエンス」に論文が発表された。 発掘された化石は、保存状態の良い少なくとも16種の哺乳類のほか、カメ、ワニ、植物など。大量絶滅から100万年後までに生息していたと見られる。 6600万年前、小惑星が地球に衝突し、地球上の生命は大打撃を受けた。衝突の余波で、ほとんどの恐竜をはじめ、全生物種のおよそ4分の3が絶滅したとされる。ただし、大量絶滅のすぐ後の時期については化石がほとんど見つかっておらず、多くの古生物学者がフラストレ

        大量絶滅後の100万年を示す貴重な化石を発見
      • ハトを食べる東欧の巨大ナマズ、西欧で在来魚の脅威に

        東欧原産のヨーロッパオオナマズ。成長すると体長3メートルにもなる。 (PHOTOGRAPH BY STEPHANE GRANZOTTO / NPL / MINDEN PICTURES) フレデリック・サントゥール氏が、ヨーロッパ最大の淡水魚の貪欲な食性を初めて目にしたのは、南フランスの町アルビにある中世の橋の上でのことだった。 眼下を流れるタルン川に浮かぶ小さな島を、ハトが歩き回っていた。ハトは、砂利に覆われた川岸近くを泳ぐ巨大なナマズの群れには気づいていないようだった。突然、1匹のナマズが水から飛び出し、陸に乗り上げてハトを捕まえた。ハトの羽が舞い散った。ナマズは口にハトをくわえ、のたうちながら川に戻って行った。 タルン川に浮かぶ小島の周りを泳ぐヨーロッパオオナマズ。油断しているハトを捕らえようとしている。 (PHOTOGRAPH BY REMI MASSON / NPL / MINDE

          ハトを食べる東欧の巨大ナマズ、西欧で在来魚の脅威に
        • 殺虫剤で渡り鳥が「遅延」、激減と関連か、北米

          北米に生息する渡り鳥のミヤマシトド。米国で殺虫剤として最も多く使用されているネオニコチノイドで処理された種子を食べた後、急激に体重が減少し、渡りが遅れたことが新たな研究でわかった。(Photograph by Margaret Eng) 農薬として世界で最も広く使われているネオニコチノイド系殺虫剤と、北米の渡り鳥の激減を結びつける研究結果が、9月12日付けで学術誌「Science」に発表された。 渡り鳥のミヤマシトド(Zonotrichia leucophrys)は、近年北米で急速に数を減らしている。今回の研究では、殺虫剤で処理された種子1~2粒分に相当するネオニコチノイドを摂取したミヤマシトドは、体重が急激に減り、その後の渡りが遅れることが示された。野生の鳥が受ける殺虫剤の被害を、実際の生態系のスケールで追跡できた初の研究だ。 しばらくすると鳥は回復したが、渡りの遅れによって生存と繁殖の

            殺虫剤で渡り鳥が「遅延」、激減と関連か、北米
          • まるでむき出しの木星、ガス惑星の核、初の発見

            太陽系外惑星TOI-849bは、主星のすぐ近くの軌道を回る。海王星とほぼ同じ直径をもつ大きな惑星だが、岩石からなり、信じられないほど密度が高い。(ILLUSTRATION BY MARK GARLICK, UNIVERSITY OF WARWICK) 地球から約730光年、銀河系のスケールで言えばさして遠くないところで、太陽に似た恒星の周りを回る不思議な惑星が見つかった。主星からの距離が非常に近く、大きくて、密度が高い。他にこのような惑星は、太陽系内はもちろん、はるか彼方の宇宙でも見つかっていない。 TOI-849bと名付けられたこの灼熱の惑星は、これまでに観測された岩石惑星の中で最も重く、地球40個分もの質量がある。これだけ質量が大きければ、木星のような巨大ガス惑星になるはずなのに、なぜかほとんど大気がない。現在の惑星形成理論では、この天体の形成過程を説明することはできない。 「TOI-

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            • 『ジュラシック・パーク』で大活躍の恐竜、本当はこんな姿だった

              卵からかえるひなの世話をするディロフォサウルス・ウェテリリの復元図。(ILLUSTRATION BY BRIAN ENGH) 1993年の映画『ジュラシック・パーク』のなかに、悪役のひとりが運悪くディロフォサウルス(Dilophosaurus wetherilli)に出くわし、殺される場面がある。人間よりも小さく、好奇心旺盛なディロフォサウルスは本性をむき出しにすると、エリマキトカゲのような首のフリル(えり飾り)を広げ、鋭い鳴き声を立て、悪役の目に毒入りの唾を吐きかける。 このシーンによって、ポップカルチャーにおけるディロフォサウルスのイメージはすっかり固定されてしまったが、実際のディロフォサウルスは、映画で描かれている外見とは大きく異なっていた。 「私は、『最も有名な“知られざる”恐竜』と呼んでいます」と話すのは、米アリゾナ州化石の森国立公園の古生物学者アダム・マーシュ氏だ。同氏は、ディ

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              • 気温38℃でも森は育った、温暖化で「熱帯林が危機」は誇張?

                アマゾンの熱帯雨林。将来、こうした森林の気温が上昇したとしても、必ずしも樹木が枯死するわけではないことが、新たな研究により明らかになった。(PHOTOGRAPH BY MALTE JAEGER, LAIF/REDUX) 世界で最も高温の熱帯雨林は、南米アマゾンではなく、米国アリゾナ州ツーソン郊外の砂漠にある。閉鎖空間の人工生態系「バイオスフィア2」の中だ。 1990年代初頭に施設内に植えられた、熱帯の樹木に関する研究の成果が最近になって報告され、驚くべき事実が明らかになった。ここの樹木は熱帯林が今世紀中に到達すると見積もられているどの推定よりも高い温度に耐えているという。 最近、森林科学者に希望を与える研究成果が多く発表されている。今回の研究もその1つだ。地球がもっと高温になり、大気中の二酸化炭素濃度が高くなっても繁栄できるような予想外のメカニズムが植物には備わっているのかもしれない。 熱

                  気温38℃でも森は育った、温暖化で「熱帯林が危機」は誇張?
                • メコン川に大異変、世紀の低水位を記録、深刻な食料危機の恐れも

                  ラオスのサヤブリ・ダムから約300キロ下流のメコン川。2019年10月28日に撮影。環境保護活動家や、メコン川の多様な生態系に支えられて暮らす住民たちは、河床が干上がっている現状について、激しい抗議の声を上げている。(PHOTOGRAPH BY SUCHIWA PANYA, AFP/GETTY IMAGES) 東南アジアのメコン川では、何カ月も前から、漁網にからまりながらふらふらと泳ぐ希少種のイルカ(カワゴンドウ)が目撃されている。彼らの本来の生息地であるカンボジア北部からは遠く離れた場所だ。現在、保護活動家が手遅れになる前に救出しようと計画を練っているが、時間はあまり残されていない。 カンボジアの民話には、イルカが比喩的な役割で登場することがある。衰弱し、方向を見失ったこのイルカは、まさに進むべき道を見失ったメコン川のようだ。イルカの運命と同様に、メコン川もまた大きな岐路に立たされている

                    メコン川に大異変、世紀の低水位を記録、深刻な食料危機の恐れも
                  • 2800万光年離れた銀河におそらく惑星を発見、史上最遠

                    渦巻銀河とX線連星系「M51-ULS-1」。(Source: Chandra X-Ray Observatory) はるか2800万光年離れた銀河に、土星サイズの惑星が潜んでいるらしいとする研究成果が10月25日、学術誌「Nature Astronomy」に発表された。確認されれば、これまで発見された中で最も遠くの惑星となる。 2800万年前、遠く離れた渦巻銀河で、青く若い恒星が苦境に陥っていた。 この恒星は、強力なパートナーの天体(おそらくはブラックホールか中性子星)との連星系だったが、パートナーの重力は極めて強く、若い恒星の外側を吸収していった。恒星からプラズマが引き剥がされると、太陽の100万倍もの強さのX線が放出された。(参考記事:「星を食べる中性子星のX線フレアを観測」) その後、X線で輝くこの星の手前を何物かが通過し、われわれの視界から数時間にわたってこの星の光を遮った。 それ

                      2800万光年離れた銀河におそらく惑星を発見、史上最遠
                    • 古代の超巨大噴火を生き延びた人類がいた、従来説に異論

                      インド、ダバの遺跡で発見された石器。約7万4000年前の超巨大火山の噴火による環境の激変を、この地の集団は生き残った可能性を示唆している。(COURTESY OF CHRIS CLARKSON) およそ7万4000年前、現在のインドネシア、スマトラ島の超巨大火山(スーパーボルケーノ)が大噴火を起こした。トバ噴火と呼ばれるこの出来事は、過去200万年で最大規模の火山噴火だった。数千キロ先まで火山灰を振りまき、幅100キロにおよぶ噴火口を出現させた。以来、噴火口は湖となっている。 この超巨大噴火が、世界的な寒冷化を引き起こしたとする説がある(トバ・カタストロフ理論)。火山灰やすすが空を覆い、南アジアでは長期にわたって森林が失われたというのだ。ただ、これが事実だとしても、インド中央部の人類は激しい環境変化の中を生き延びたとする研究成果が発表された。 インド、マディヤ・プラデシュ州にあるダバの発掘

                        古代の超巨大噴火を生き延びた人類がいた、従来説に異論
                      • ツンドラで山火事が多発、科学者らに衝撃、熱波のシベリアで

                        ロシアで最も寒い地域の一つ、ヤクーチア中央部で燃える森林。ヤクーチア地方は83パーセント以上が森林に覆われている。今年の山火事はかなり北の方まで燃え広がり、科学者たちを驚かせている。(PHOTOGRAPH BY YEVGENY SOFRONEYEV, TASS/GETTY IMAGES) 人為的な気候変動に加えて晴天が続いたことにより、ここ数カ月の間、シベリアが猛暑に襲われている。この熱波は、6月に北極圏の気温を38℃まで上昇させたのみならず、大規模な山火事にも拍車をかけており、永久凍土層のあるツンドラまでが現在、炎に包まれている。 気温が低く、水分が多く、凍っているために、本来であれば燃えるはずのない地域で山火事が相次いでいるというこの事態に、生態学者や気候科学者は懸念を募らせている。彼らが恐れているのは、この火災が北極圏における急激な変化のさらなる兆候かもしれないこと、そして、局地的に

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                        • 絶滅危惧の深海サメ、コロナが危機に拍車か

                          ガラパゴス諸島沖を泳ぐアカシュモクザメ。ヒレや肝油の需要が高い。国際自然保護連合は近絶滅種(critically endangered)に指定している。(PHOTOGRAPH BY MICHELE WESTMORELAND, NATURE PICTURE LIBRARY) 絶滅が危惧されているアカシュモクザメ(Sphyrna lewini)は、深さ300メートル以上の深海でも獲物を探す。サメには浮袋がないが、どうやって深海のすさまじい水圧のなかで浮力を保つのだろうか。 その秘密はスクアレンとも呼ばれる肝臓の油にある。水より比重が軽く、多くのサメの生存に欠かせない浮力を提供するこの物質は、実は人間にとっても重要な役割を果たす。免疫反応を強めてワクチンの効果を高める「アジュバント」(抗原性補強剤)として使われているからだ。(参考記事:「新型インフルワクチンでサメがピンチ」) 世界の製薬企業は、

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                          • ビーバーのいる森は火災に強い、研究

                            米グランド・ティートン国立公園のシュワバッカー・ランディングで泳ぐビーバー。(PHOTOGRAPH BY CHARLIE HAMILTON JAMES, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 米国西部で森林火災が猛威を振るっている。カリフォルニア州では120万ヘクタール以上が焼け、オレゴン州では50万人以上が自宅からの避難を余儀なくされた。そんな中、我々が火災と闘ううえで、心強い仲間がいることがわかった。ビーバーだ。 学術誌「Ecological Applications」に9月2日付けで発表された研究によると、ビーバーがダムや池を作り、水路を掘ることで、動植物にとっての防火シェルターが生まれていることが判明した。場合によってはこれが森林火災の延焼を止めることさえある。 「すぐ隣で火事が起こっていても平気です」。そう話すのは、米カリフォルニア州立大学チャンネル・アイランド校の

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                            • コロナで注目の自転車 世界を変えたスマホ級の大発明 - 日本経済新聞

                              歴史は繰り返す。まったく同じではなくとも、確かに繰り返す。コロナ禍で自転車の需要が急増し、サイクリングとウォーキングに新たに焦点を当てた都市の再開発に各国が数十億ドルをかけようとしている今、19世紀後半の自転車の登場がいかに世界を変えたかは、振り返る価値があるだろう。自転車は、極めて破壊的な技術だった。少なくとも今日のスマートフォンと同じ程度には。価格も手頃で、速くてスタイリッシュな交通手段で

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                              • 研究者も困惑 火星の大地に響きわたる謎の「脈動」

                                火星の内部構造を明らかにするために設計された火星探査機インサイト。写真中央に見えるのは高感度の地震計で、火星で発生するあらゆる振動を観測している。(PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH) NASAの火星探査機「インサイト」は、2018年11月に火星の赤道に近い広大な平原に着陸した。それ以来、火星の地質活動や内部の様子を探るため、超高感度の地震計など様々な機械を使って記録を取り続けている。 (参考記事:「火星着陸へ、NASAの探査機インサイトを解説」) そのインサイトからもたらされた最新の謎や新たな発見が6本の論文にまとめられ、20年2月24日付の科学誌「Nature Geoscience」と「Nature Communications」に発表された。 それらによると、火星の大地には奇妙な脈動が響きわたり、活断層帯があり、今も磁場があってしかも振動していることなどが明

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                                • マルハナバチが絶滅に向かっている、原因は高温

                                  マルハナバチの一種(Bombus impatiens)。マルハナバチは、送粉者として不可欠な存在だが、多くの種は猛暑などの要因により危機にさらされている。(PHOTOGRAPH BY CLAY BOLT, MINDEN PICTURES) マルハナバチは、地球上で最も重要な「送粉者」の1つだ。毛に覆われた体でブンブン飛び回り、野生の植物はもちろん、トマトやブルーベリー、カボチャなどの農作物の授粉を担う。(参考記事:「花粉の運び屋たち」) しかし、マルハナバチは窮地に立たされている。新たな研究により、マルハナバチの数は昔よりはるかに減っていることが明らかになった。北米のどの地域においても、1974年以前に比べ、50%近く減少しているという。(参考記事:「北アメリカでマルハナバチが激減」) さらに、以前はよく見られた数種が生息地から姿を消し、局所的な絶滅が起こりつつある。例えば、カナダのオンタ

                                    マルハナバチが絶滅に向かっている、原因は高温
                                  • 中国、センザンコウのウロコを伝統薬の承認リストから除外

                                    アフリカ南東部のモザンビークで密猟者から救出され、野生に戻されたサバンナセンザンコウ。中国では、センザンコウの保護レベルが改定され、センザンコウのウロコが伝統薬の承認リストから除外された。自然保護の活動家たちは、この措置によって、8種すべてが絶滅の危機に瀕しているセンザンコウの減少が遅れるように願っている。 (PHOTOGRAPH BY JEN GUYTON, NATURE PICTURE LIBRARY) 中国はこのほど、世界で最も多く違法取引されている哺乳類センザンコウを救済する措置をとった。2020年の中国の伝統薬の承認リストから、これまで何十年も記載されてきたセンザンコウのウロコを除外したのだ。センザンコウのウロコは長年、母乳の出をよくする薬から関節炎の薬まで、さまざまな中国の伝統薬の素材として合法的に売られてきた。 ウロコが薬に使われるせいで、世界中のセンザンコウ(アジアに4種、

                                      中国、センザンコウのウロコを伝統薬の承認リストから除外
                                    • 古代マヤ、大噴火の後にピラミッド建設、復興の象徴か

                                      中米エルサルバドルにあるマヤ文明のピラミッド(写真手前)。発掘調査により、1500年前のイロパンゴ火山噴火との驚くべき関係が明らかになった。(COURTESY OF AKIRA ICHIKAWA) 今からおよそ1500年前、現在の中米エルサルバドルにあるイロパンゴ火山が史上最大級の噴火を起こし、膨大な量の火山灰や軽石を噴出させた。これらは麓の谷を覆い尽くしただけでなく、広範囲に広がり、北半球の寒冷化を引き起こしたとみられる。 この大噴火によって噴出した火山灰は「ティエラ・ブランカ・ホーベン(若い白土)」と呼ばれ、古代マヤ文明の一時的な衰退を促したと考えられてきた。しかし、9月21日付けで学術誌「Antiquity」に発表された論文は、一概にそうは言えないことを示唆している。噴火後、火口からわずか40キロほど離れた地域で、これまで考えられていたより早い時期に、大型のピラミッドが建設されたとい

                                        古代マヤ、大噴火の後にピラミッド建設、復興の象徴か
                                      • 人にもできる! 音で周囲を知覚する「反響定位」のしくみ

                                        カナダのブリティッシュコロンビア州の近海で、海面のすぐ下を泳ぐセミイルカ。音が空気中の5倍の速さで伝わる海では、反響定位を用いるのは理にかなった戦略だ。(PHOTOGRAPH BY PAUL NICKLEN, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 自分が出した音が物に当たって跳ね返ってくる反響を利用して、距離や物の大きさを知る動物がいる。いわば、自然が編み出したソナーシステムの「反響定位(エコーロケーション)」という知覚の方法だ。 コウモリの大半の種、ハクジラ全種、小型哺乳類など、1000種以上の動物が反響定位を用いる。多くが夜行性か、地中に掘った穴や海中にすむ動物で、光が乏しい環境で餌を見つけるために反響定位を利用している。音波を発する方法は、のどを振動させる、羽ばたきをするなど、いくつか存在する。 例えば、夜行性のアブラヨタカや、暗い洞窟の中で狩りをする一部のアナツバメは

                                          人にもできる! 音で周囲を知覚する「反響定位」のしくみ
                                        • デルタ株が急拡大、ワクチン接種率の低い地域ほど危険

                                          2021年7月7日、ロシアのサンクトペテルブルクにあるマリインスキー病院の新型コロナウイルス感染症ユニットで、防護服を着た医療従事者が消毒用キャビンを歩いている。1日あたりの死亡者数が過去最多を更新したロシアでは2021年7月4日、1日あたりの新規感染者数が2万5000人を超えた。現在、ロシアでは感染力の強いデルタ株が主流となっている。(PHOTOGRAPH BY OLGA MALTSEVA, AFP VIA GETTY IMAGES) 米国で新型コロナウイルスワクチンの接種を完全に終えた人の割合は、全人口の48%にとどまる。ワクチンの確保に苦慮している国も多い。そんな中、公衆衛生の専門家らは、既知の新型コロナウイルスのうち最も危険で広まりやすい(伝播性が高い)変異株であるデルタ株が、世界中で患者や死者の急増を引き起こすのではないかと懸念している。 2021年3月にインドで初めて確認された

                                            デルタ株が急拡大、ワクチン接種率の低い地域ほど危険
                                          • ロシア製ワクチンに「重大な懸念」 米国研究所長

                                            ワクチンバンクを保存機器から取り外す検査技師。2020年8月6日、ロシアの国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所とロシア直接投資基金が開発するCOVID-19ワクチンを製造する、モスクワにある同研究所で。(PHOTOGRAPH BY ANDREY RUDAKOV, BLOOMBERG VIA GETTY IMAGES) ロシアが新型コロナウイルスのワクチンを承認し、供給体制を整えているとのモスクワの報道に対し、米国で新型コロナ対策をけん引する国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は、「ワクチンを作り上げることと、それが安全かつ有効であることを証明することは別」との見解を示した。 これは、ナショナル ジオグラフィックが8月13日に独占放送したイベント「Stopping Pandemics(パンデミックを止める)」の基調インタビューの中で、ファウチ氏が発言したもの。 「ロ

                                              ロシア製ワクチンに「重大な懸念」 米国研究所長
                                            • あなたの知らないトーテムポール | ナショナルジオグラフィック日本版サイト - カナダ太平洋岸の先住民は、漂着した日本などの難破船に使われていた鉄をはがしナイフを作っていた

                                              北米大陸の先住民が生み出したトーテムポール。その製作には、材料となる巨木が不可欠だ。世界有数といわれるカナダの温帯雨林の巨木がなければ、トーテムポールが生み出されることはなかっただろう。 カナダの太平洋沿岸、ブリティッシュ・コロンビア州(BC州)に巨木の森を育んでいるのが、日本列島の南を流れ行く黒潮だ。この暖流は、北太平洋海流などと名前を変えながら太平洋を東へ進み、BC州の沿岸あたりに到達する。 この海流のおかげで、BC州は緯度の割には暖かい。加えて、暖流が運んでくる水蒸気をたっぷり含んだ空気が内陸に向かう途中でカナディアンロッキーにぶつかり、手前のBC州に大量の雨を降らせる。この暖かさと雨によって、BC州には豊かな温帯雨林の森が広がり、巨木が育つ。なかでも柔らかくて加工しやすいレッドシダーの巨木が、トーテムポールの材料となる。 しかし、巨木があるだけではトーテムポールを作ることはできない

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                                              • ストーンヘンジに地下トンネル計画、英政府が承認、賛否両論

                                                英国政府は、世界遺産ストーンヘンジの近くを通る交通渋滞がひどい道路を、トンネルを掘って地下に移設すると発表した。 (PHOTOGRAPH BY STEVE PARSONS, PA IMAGES/GETTY) 英国政府がストーンヘンジの世界遺産登録エリアの地下に、4車線のトンネルを建設する計画を承認したことで、論争が巻き起こっている。 現在ストーンヘンジのそばを走るハイウエーA303は、道幅が狭くて交通渋滞がひどいことで悪名高い。そこで総工費22億ドル(約2300億円)の改善計画が進んでいるが、問題となっているのはこの計画の一部である長さ3.2キロのトンネルだ。 このトンネルは、考古学者や環境保護活動家、そしてストーンヘンジを崇める人々から強い反対があったにもかかわらず、承認された。賛成派は、トンネルにより本来の景観を取り戻し、年間160万人を超える観光客がより良い体験ができるようになると主

                                                  ストーンヘンジに地下トンネル計画、英政府が承認、賛否両論
                                                • 除草剤で赤ちゃんワラビーのペニス小さく、母親が摂取、研究

                                                  ワラビーは豆粒ほどの大きさの未熟な状態で生まれ、母親の腹にある袋(育児のう)の中で育つため、他の多くの哺乳類に比べ、化学汚染物質などの外部からの脅威に影響を受けやすいという。(PHOTOGRAPH BY AUSCAPE, GETTY IMAGES) 除草剤のアトラジンは、日本を含め世界で広く使用されているが、動物の性的発達を阻害する可能性が様々な研究で指摘されている。最も使用量が多い米国とオーストラリアでは、小川や湖、飲料水から微量に検出されるケースも多い。 8月5日付けで学術誌「Reproduction, Fertility and Development」に発表された研究では、アトラジンがダマヤブワラビー(Macropus eugenii)の生殖器の発達を阻害したという結果が得られた。ダマヤブワラビーは、オーストラリアに生息するカンガルー科の有袋類だ。 メスのダマヤブワラビーに、450

                                                    除草剤で赤ちゃんワラビーのペニス小さく、母親が摂取、研究
                                                  • 絶滅動物サーベルタイガー、驚きの暮らしが判明

                                                    木漏れ日の中、森にすむ草食動物を食べるサーベルタイガー。遠景には、草原でバイソンを追うダイアウルフが見える。(ILLUSTRATION BY MAURICIO ANTÓN) 1万年ほど前に絶滅したサーベルタイガーの一種スミロドン・ファタリス(Smilodon fatalis)は、現在の米国西部地方に君臨する捕食動物だった。カリフォルニア州にあるラ・ブレア・タールピット(天然アスファルトの池)からは、化石化したスミロドンがこれまでに3000体以上採集されており、これを調査する研究者らは長年の間、スミロドンはライオンのようなタイプのハンターで、広い草原でバイソンやウマを追いかけていたと考えていた。 (参考記事:「新発見、牙のような剣歯の古代草食動物」) ところが、ラ・ブレアで採集された大量の歯の分析から、体重270キロ、犬歯の長さ18センチにもなるこの猛獣の、通説とは大きく違う姿が明らかになっ

                                                      絶滅動物サーベルタイガー、驚きの暮らしが判明
                                                    • 北極圏の夏の海氷、熱波で7月は最小を記録、15年後には消滅か

                                                      アラスカ州ウトキアグビク(旧バロー)沖の北極海。非常に冬が暖かかった2015年の6月に撮影。(PHOTOGRAPH BY KATIE ORLINSKY, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 2020年の7月に北極海を覆っていた海氷は、1979年に人工衛星による観測が開始されて以来、どの年の7月よりも少なかった。これにより、北極海が氷のない夏を迎えるという避けがたい未来に向けて、また一歩進んだことになる。 北極海の海氷は毎年、長く暗い冬の間に海面が凍って拡大する。その面積は3月に最大約1500万平方キロメートルに達し、北極海のほぼ全体を覆い尽くす。氷は夏の間に解けてゆき、最も小さくなるのは9月だ。 1980年代の7月には平均で、米国やカナダの面積にほぼ匹敵する約980万平方キロメートルが氷に覆われていた。対して今年の7月、北極海を覆う海氷の面積はわずか720万平方キロメートル

                                                        北極圏の夏の海氷、熱波で7月は最小を記録、15年後には消滅か
                                                      • ユリ科の黄色い花、人間を避け地味な色に進化、研究

                                                        ユリ科バイモ属の一種、Fritillaria delavayi。球根は中国の伝統薬として珍重されている。多く採取される場所では、カムフラージュして身を守るようになった可能性がある。(PHOTOGRAPH BY YANG NIU) 中国南西部の高地で、ある植物が見つかりにくくなっている。 ユリ科バイモ属の一種、Fritillaria delavayiだ(クロユリもバイモの一種)。年に一度、チューリップのような黄色い花を咲かせ、葉や茎も明るい緑色をしている。 ところが、本来なら目立つこの花や葉の色が、灰色や茶色に変化している場所があるという。これは、最大の敵から見つかりにくいよう進化した結果ではないかと、研究者は考えている。その敵とは、人間だ。(参考記事:「華麗なる擬態の世界」) 中国と英国の研究チームが2020年11月に学術誌「Current Biology」に掲載した論文によると、Frit

                                                          ユリ科の黄色い花、人間を避け地味な色に進化、研究
                                                        • 人類が宇宙に滞在し続けて20年目の日、人類の偉業ISS

                                                          2018年10月に国際宇宙ステーション(ISS)を離れた3人のクルーが撮影した写真。地球の青く薄い大気の上に、ISSが大きく浮かび上がっている。技術的にも外交的にも大きな成功を収めたISSでは、2000年11月2日以来途切れることなく人間が生活し、働いている。(ROSCOSMOS/NASA) 2000年のハロウィーン(10月31日)は歴史的な日となった。米国人1人とロシア人2人の宇宙飛行士を乗せたロシアのソユーズロケットが、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から、完成したばかりの国際宇宙ステーション(ISS)に向けて打ち上げられたのだ。 クルーは2日後にISSに到着。それから20年間、地球低軌道上のISSには人間が1日も途切れることなく生活し、仕事をしている。 ISSは、人類史上最も高価で技術的に複雑な建造物の1つだ。1500億ドル(16兆円弱)を投じて建設され、サッカー場ほどの大きさがあ

                                                            人類が宇宙に滞在し続けて20年目の日、人類の偉業ISS
                                                          • 北極圏で前代未聞の38℃を記録、何を意味する?

                                                            2019年7月5日、シベリアの町ジリャンカを流れるコリマ川の岸で遊ぶ子どもたち。気候変動が、シベリアの風景と経済を変えようとしている。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL ROBINSON CHAVEZ, THE WASHINGTON POST/GETTY IMAGES) 6月20日、北極圏に位置するロシア、シベリアの町ベルホヤンスクで、気温が過去最高の38℃を記録した。これを単なる突発的な出来事ととらえてはいけない。科学者たちによれば、今回の記録は地球が急速に高温化していることの証しであり、北極圏は今後ますます加速的に暑くなることを示しているという。 「ずいぶん前から、熱波のような異常気象はより頻繁になるだろうと警告してきましたが、思ったよりも早くそれが起こっているようです」と、デンマーク気象研究所の気象科学者、ルース・モトラム氏は言う。 1885年にベルホヤンスクで記録が開始さ

                                                              北極圏で前代未聞の38℃を記録、何を意味する?
                                                            • 北米の古代都市カホキアはなぜ衰退? 「過剰な伐採」説を否定

                                                              カホキアの中央広場。現在、この一帯は史跡となり、世界遺産にも登録されている。最近の研究から、この古代都市の住民は、それまで考えられていたような環境破壊を引き起こしてはいなかったことが明らかになった。(PHOTOGRAPH BY IRA BLOCK, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 世界遺産にも登録されている米国の古代都市カホキア。今から1000年ほど前、現在の米国イリノイ州にあるこの町は、メキシコより北の北米大陸で最大の人口を誇るまでに急成長した。そこで暮らす人々は、町の中だけで1万5000人、周辺部も入れるとその倍ほどだったと考えられている。しかし、わずか数百年後には人口が減りはじめ、1400年ごろには誰も住まない場所になってしまった。 ミシシッピ川の氾濫原にあったこの古代都市で多くのマウンド(墳丘)が見かってから、考古学者たちはその謎に挑み続けてきた。マウンドの中で

                                                                北米の古代都市カホキアはなぜ衰退? 「過剰な伐採」説を否定
                                                              • 太陽系外から来たボリゾフ彗星、意外な事実が判明

                                                                米ハワイのジェミニ天文台による「2I/ボリゾフ」の2色合成画像。太陽系内で観測された史上2例目の恒星間天体だ。青と赤の光は背景にある星で、彗星の動きを追ったせいで筋になって見えている。(COMPOSITE IMAGE BY GEMINI OBSERVATORY/NSF/AURA) 8月30日未明、アマチュア天文学者ゲナディー・ボリゾフ氏が奇妙な天体を発見した。太陽系の外からやってくる彗星だ。「2I/ボリゾフ」と名付けられたこの彗星は、太陽系の内側で観測された恒星間天体としては、史上2番目となる。(参考記事:「また太陽系の外から?急接近する奇妙な彗星を発見」) 現在、世界中の大型望遠鏡がボリゾフ彗星に注目し、天文学者らがその組成や軌道について興味深いデータを収集し始めている。 初めて観測された恒星間天体は、2017年に発見された「オウムアムア」だったが、見つかった時点ですでに太陽系を去りつつ

                                                                  太陽系外から来たボリゾフ彗星、意外な事実が判明
                                                                • クジラがアシカを「丸のみ」した衝撃写真、実情は

                                                                  ザトウクジラが偶然、アシカを「丸のみ」に。2頭はモントレー湾で同じカタクチイワシの群れを食べている最中だった。(PHOTOGRAPH BY CHASE DEKKER) 野生動物写真家のチェイス・デッカー氏は、ホエールウォッチング中にザトウクジラがアシカをまるごと口にのみ込む衝撃的な場面に遭遇した。 デッカー氏はこのとき、サンクチュアリー・クルージーズが主催するホエールウォッチングのガイドを務めていた。観察していたのは3頭のザトウクジラで、体長15メートルほどの最も大きいクジラが口を開けたとき、偶然「オスのアシカが持ち上げられた」という。 「見た瞬間、これまでに撮影した中で最も貴重な写真の1つだと確信しました」とデッカー氏は話す。「最も美しい写真ではありませんし、最も芸術的な写真でもありませんが、おそらく二度と撮ることのできない1枚です」(参考記事:「ヘビを丸のみにするカエル、衝撃写真の真相

                                                                    クジラがアシカを「丸のみ」した衝撃写真、実情は
                                                                  • 世界各国の新型コロナ対策、明暗分かれた原因は?

                                                                    2020年4月21日火曜日のドイツ、ベルリン中心部にあるアレクサンダー広場。新型コロナウイルスのパンデミックで、ほとんど人がいない。(PHOTOGRAPH BY EMILE DUCKE, THE NEW YORK TIMES VIA REDUX) 世界各地の感染症情報を伝えるメーリングリスト「ProMED-mail」に、4カ月前「中国の武漢で原因不明の肺炎が発生」という情報が流れた。新型コロナウイルスの大流行が始まることをしらせる最初の警告だ。現在、COVID-19は6大陸に広がり数十万人の死者を出し、世界的な経済危機も引き起こしている。 英インペリアル・カレッジ・ロンドンなどの世界中の研究グループは、各国における感染速度の抑制方法に劇的な違いがあること、そしてどの対策が全体として最も効果的だったかをデータで明らかにした。感染拡大の抑制に関して、他よりはるかにうまくやった国や州、都市もわか

                                                                      世界各国の新型コロナ対策、明暗分かれた原因は?
                                                                    • ライオン進化の歴史を解明、絶滅種をゲノム解析で

                                                                      朝日を浴びながら草むらを歩くアフリカライオン。タンザニアで撮影。(PHOTOGRAPH BY MELISSA GROO, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 今から3万年前、ライオン(Panthera leo)はさまざまな亜種に分かれ、4つの大陸に広がって生きていた。なかでもホラアナライオンはよく繁栄し、現在のスペインからユーラシア大陸を横断し、北米のアラスカやユーコンまで分布していた。その姿は先史時代の洞窟壁画に広く描かれている。 一方、アメリカライオンは、現生のアフリカライオンや絶滅したサーベルタイガーより大きく、北米全域とおそらく南米の一部にすんでいた。(参考記事:「絶滅動物サーベルタイガー、驚きの暮らしが判明」) 他にもアフリカ、中東、インドに多様な大きさや外見のライオンが生息していたが、大半がすでに絶滅している。しかし、科学者たちは遺伝学的な手掛かりを集め、絶滅し

                                                                        ライオン進化の歴史を解明、絶滅種をゲノム解析で
                                                                      • 新型コロナ、第二波はどうすればうまく防げるのか

                                                                        人間は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に勝つことができる。その理由はウイルスが単純なものだからだ。ウイルスは何らかの助けなしにはどこへも行けない。外気に長時間さらされれば大半が分解される。ウイルスが得意なのは増殖することだけだ。 もちろん問題は、この唯一のタスクに、コロナウイルスが非常に長けていることであり、米国をはじめ、ロックダウン(都市封鎖)などの制限を緩めつつあった国々は今、流行の再燃という壁にぶつかっている。 米国ではここ数カ月、毎日の新規感染数は2~3万の間で推移していたが、最近になって30の州で急上昇している。特にテキサス州ヒューストンではわずか2週間のうちに1日の新規感染者数が300から1300に急増、他の州も似た事態に直面している。 「被害が大きい地域の病院のICUや人工呼吸器のキャパシティは、限界に達しつつあります」と、米アリゾナ大学准教授で感染症疫学者のパー

                                                                          新型コロナ、第二波はどうすればうまく防げるのか
                                                                        • “最も汚染された街”デリーの大気汚染が秋に最悪に、インド

                                                                          ある朝、スモッグに覆われたインドの首都ニューデリーのプラガティ・マイダン駅付近。地下鉄デリー・メトロの柱に植物が植えられているのは、野焼きで秋冬に悪化する大気汚染を緩和するためでもある。(PHOTOGRAPH BY SAUMYA KHANDELWAL) 今年もまた、インドのデリー首都圏にあの季節がやって来た。灰色がかったオレンジ色のスモッグが立ち込める中、ドアや窓を固く閉めて空気清浄機を動かさなければならない。 インドの首都ニューデリーは世界で最も大気汚染が深刻な都市の一つだ。自動車、石炭火力発電所、料理用コンロなどが主な原因だが、悪化の度合いは時期によって変わり、最も悪化するのは秋だ。インド北西部のパンジャブ州とハリヤナ州で、コメ農家が次に植える小麦のために9月下旬頃から田畑を焼く煙が流れてくるからだ。

                                                                            “最も汚染された街”デリーの大気汚染が秋に最悪に、インド
                                                                          • 旧東ドイツ秘密警察の膨大な諜報記録 「シュタージ文書」が公文書館に

                                                                            かつて、ドイツ民主共和国(旧東ドイツ)の秘密警察シュタージは、厳しい監視体制を築き、自国民に対して諜報活動を行っていた。ジークフリート・ヴィッテンブルクさんは、そのシュタージが作成した自分に関する諜報ファイルを目の前にして椅子に座り、はやる気持ちを抑えてそれを開いた。時は1999年。ベルリンの壁崩壊と東西ドイツ統一から10年が経っていた。 「まるで、犯罪小説を読むような気分でした」と、ヴィッテンブルクさんは話す。 旧東ドイツ時代に写真家として活動していたヴィッテンブルクさんは、社会主義政権下に置かれた国民の生活を長く撮影していた。そのなかには、政府が外部に見せたくない貧困や物資の不足、抗議活動の様子の記録が含まれていたため、1980年代に開いた写真展では、一部の写真が検閲を受けた。そのような過去があったため、シュタージのファイルに何が記されているのか、ヴィッテンブルクさんが気になったのも無

                                                                              旧東ドイツ秘密警察の膨大な諜報記録 「シュタージ文書」が公文書館に
                                                                            • カモノハシを守れるか 数が減少、科学者たちは警鐘鳴らす

                                                                              研究者による調査の後、オーストラリア、ビクトリア州のマクマホンズ川に戻されたカモノハシの子ども。捕獲したカモノハシが30分以上水の外にいることがないように、研究者は急いで作業を進める。(PHOTOGRAGH BY DOUG GIMESY) 18世紀末、大英博物館で自然史コレクションの学芸員をしていたジョージ・ショーは、オーストラリアから送られてきた動物の皮を見て首をかしげた。それはまるで、水かきがついたカモの足とくちばしを、毛で覆われた哺乳類の胴体にくっつけたような不思議な代物だったからだ。学者でもあるショーは、最初、誰かが冗談で複数の動物の部位を縫い合わせたのかと思ったが、後に本物の動物であると認めた。(参考記事:「カモノハシが太古から変わらない理由 」) それから200年以上たった今も、カモノハシは科学者たちを驚かせ続けている。メスは哺乳類なのに卵を産み、オスは後ろ足の蹴爪に毒を持つ。

                                                                                カモノハシを守れるか 数が減少、科学者たちは警鐘鳴らす
                                                                              • 地球から一番近いブラックホールを発見、連星系に

                                                                                三連星系HR 6819を構成する天体の軌道の想像図。恒星系は、内側の軌道を運動する恒星(軌道を青で示す)と、新たに発見されたブラックホール(赤の軌道)と、外側の軌道を運動する第3の恒星(青の軌道)からなる。(ILLUSTRATION BY ESO/L. CALÇADA) 南半球では冬になると頭上に「ぼうえんきょう座」が見える。この星座の中に青い光の点が輝いている。青い光は1つの明るい星のように見えるが、実際には2つの星と1つのブラックホールという3つの天体からなる三連星系であることがわかった。現時点で、地球から最も近いブラックホールが見つかったことになる。 5月6日付けで学術誌「Astronomy & Astrophysics」に発表された論文によると、新たに発見されたブラックホールは太陽系から約1011光年のところにある恒星系HR 6819にあり、目に見える2つの星とともに軌道上を運動し

                                                                                  地球から一番近いブラックホールを発見、連星系に
                                                                                • エベレストの本当の高さは? ネパールと中国が最新の計測

                                                                                  2019年の登山シーズン、モンスーンの雲に覆われたエベレストの頂上。(PHOTOGRAPH BY FRANK BIENEWALD, LIGHTROCKET, GETTY IMAGES) 2019年5月22日、ネパール人測量家で登山家のキムラル・ガウタム氏(35歳)は、エベレストの山頂に立った。だが、感動的な風景に目を奪われることも、雄姿をカメラに収めることもなく、ガウタム氏はすぐに作業に取り掛かった。 もうひとりの測量家と3人のシェルパ族のガイドに助けられて、雪を被った山頂の最も高い場所にGPS(全地球測位システム)アンテナを設置すると、アンテナはいくつもの人工衛星を使って、その正確な位置を記録し始めた。次に、地中探知レーダーを使って足元の雪の深さを計測した。 ネパール政府に派遣されたガウタム氏らの目的は、エベレストの標高を再計測することだった。あれから15カ月以上が経過し、その結果発表が

                                                                                    エベレストの本当の高さは? ネパールと中国が最新の計測