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By 稲妻ノ歯鯨 – Own work, CC BY-SA 4.0 2020年代は1990年代とはちがう BBC の東京特派員ルーパート・ウィングフィールド=ヘイズが書いた,日本についてのエッセイが広く話題になってる〔日本語版〕.ぼくも読んでみたけれど,ひどくいらいらしてしまった.このベテランジャーナリストは――2012年から日本に暮らして働いたすえに――日本の印象をまとめている.彼によれば,日本は停滞して硬直した国で,「ここに来て10年経って,日本のありようにもなじみ,次の点を受け入れるにいたった.日本は,変化しそうにない.」 でも,日本に暮らしたことがあって,2011年以降も年に1ヶ月間ほどここに来て過ごすのを繰り返してる人物として,そして,日本経済についてかなりの分量を書いてきた人物として言わせてもらえば,日本はまちがいなく様変わりしてる.すごく目につきやすくて重要なところがあれこれ
[Noah Smith, “Japan’s living standards are too low,” Noahpinion, May 24, 2022] 働きづめでも報われない国 日本からこんにちはこんにちは! 2週間の旅行でこっちにきてて,せっかくだから日本について何本か記事を書こうと思う.まずは,経済の話からはじめよう. たいていの人たちが日本について最初に気づくのは,各地の都市がいかにすばらしいかってことだ.とりわけ東京は,現代の驚異だ.キレイに刈り込まれた木々に取り囲まれて,設計のしっかりしたぴかぴかのビル群がそびえたっている.レストランやお店や各種の娯楽は目眩がするほど数知れず,どれもこれもすばらしい.どこも混み合ってるけれど,それでいていつもなぜか静謐を感じさせる.そして,ほんの数分歩けば電車の駅にたどり着いて,そこからどこでも必要な場所に向かえる.他のどんな国もおよばない
[Noah Smith, “The weak yen is an opportunity,” Noahpinion, November 24, 2022] じゃあ,なんで日本はその好機を利用してないのさ? ぼくが日本にはじめて暮らしたのは,2000年代中盤のことだった.当時,円の値打ちはすごく覚えやすかった――だいたい,1ドル=100円だったからだ.どんなものでも,日本で値札を見かけたら,頭の中で100で割ってやればだいたいどれくらいの値段なのかつかめた. 「1ドルだいたい100円」為替レートの時代は,約30年続いた.そして,2022年3月に,なにかがブツンといった.円が下がりはじめて,10月には少しのあいだとはいえ1ドル150円にまで下がって,それから1ドル140円にまで少しもどした: Source: Xe.com ドルにかぎらず,日本の実質為替レートはあちこちの貿易相手国に対しても下が
ウォーク政治活動を理解する上で最も重要なのは、これは伝統的なタイプの「反自由主義」とは異なっており、「反自由主義的リベラリズム」の一種であると考えた方がよいということだ。 Joseph Heath: Woke tactics are as important as woke beliefs Woke language hides illiberal tactics in liberal aims Posted by Joseph Heath on June 23, 2021 ここ数年、進歩主義を装った反自由主義が世を覆いつつあったが、ついにアメリカのリベラルたちは団結して行動を起こし始めた。リベラルたちは、「ウォーク」〔woke、社会問題に対して目覚めた(=wake)人々を指す〕の政治活動やイデオロギー的影響力の拡散を阻むために、いくつかの組織を創設したのである。〔ウォークと戦う〕リベラル
通説では,1990年にかの不動産バブルがはじけてから日本は「失われた○十年」に苦しんできたという話になっている.実のところ,一人あたり GDP を見ると,他の豊かな国々にくらべて日本の実績が見劣りしはじめた起点は1990年ではなく1997年に思える.97年といえば,アジア金融危機のあった頃だ. この「失われた○十年」論に対して典型的に向けられる反論では,こう語られる――日本が停滞しているように見えるのは,大半が人口の高齢化によるものであって,実際の生産性で見ると日本は2000年頃から問題なくやっている.新しく出た Fernandez-Villaverde, Ventura, & Yao の論文は,こう主張している: 多くの先進諸国では,この数十年で,高齢化にともなって,一人あたり GDP成長と労働年齢の成人一人あたり GDP 成長のちがいは大きくなってきている.日本のように一人あたり GD
移民受け入れを支持する人間として,ぼくは懐疑的な人や批判的な人に耳を貸すようにつとめてる.どんな国にも,自らがのぞむならどんな人間でも招き入れる権利がある――あるいは,入国を拒否する権利がある.移民の流入で自分たちの文化が変わってしまうのを人々が心配しているなら,それは完璧に許容されるべき態度だ. ただ,それと同時に,移民流入制限派の人たちは移民受け入れにともなう経済的な害悪をあれこれとたくさん主張している――賃金低下,政府財政への負担,などなど.それでいて,そういう主張はずっと証拠と矛盾しつづけている. たとえば,多くの証拠から,移民流入は――低技能移民の流入ですら――現地生まれの人たちの賃金や雇用の見通しに悪影響を及ぼしていないことが明らかになっている〔日本語版記事〕.最近出た Michael Clemens & Ethan Lewis の論文を見てみると,この研究はとても「きれい」な
気候変動に取り組むうえでの大きな困難の一つは、世の中に悪い情報源が蔓延していて、悪質な情報もばらまかれていることだ。左派の気候変動活動家たち(気候変動問題について何かしようと自身の時間と労力を費やす傾向が最も強い人たち)は、「100社の企業が世界の排出量の70%を引き起こしている」とか「10%の富裕層が排出量の半分を占めている」といった馬鹿げた主張をする疑似左派的な情報を入手してしまいがちだ。それから右派。彼らは、以前だと気候変動を否定することにやっきだったけど、最近になってグリーンエネルギーへの巨大な不信感(金融関係者を除けば、グリーンエネルギーは「恐怖、不確実性、疑わしい」)を煽り立てている。こうしたとりまく事象から、クタクタになってしまうんだ。結果、多くの人たちが、気候変動への議論を避けがちになってるんだと思う。 こうした状況には、本当にイライラしてしまう。世の中には、本当にたくさん
[Noah Smith, “The Japan that Abe Shinzo made,” Noahpinion, June 4, 2022] この半世紀で最重要の首相がもたらした3つの大きな変化 今回で,日本に関するシリーズは5本目になる.これが最後だ.第1回目(翻訳)では,日本の生活水準が低めなことを嘆いて,現金ベースの福祉政策を提案した.第2回目(翻訳)では,日本が経済成長を加速させるのに使えそうな産業政策をいくつか提案した.第3回目では,日本の停滞した企業文化とその直し方を論じた.第4回目では,日本のポップカルチャーに関する2冊の本の書評を書いて,日本が経済面で衰退しつつもそのポップカルチャーが世界を制覇したあらましについて述べた. この20年というもの,定期的に日本を訪れている.でも,今回の日本旅行ではとくに強い印象を受けた.2002年にはじめて日本に来たときから,この国の感触
Multinational culture isometric composition with people of different races and nationalities in folk costumes vector illustration しばらくアメリカに在住していたが、人種的正義を求める闘いで公理となっているものは、現実的な解決策となっておらず、逆に人種間の対立を世代をまたいで再生産してしまっていると思った。これをアメリカのリベラルは理解できておらず、多くの逆効果(マイノリティ・グループの一部を共和党の掌中に追いやっている等)を生んでいる。このエントリは、そう確信するに至った分析を極めて簡潔にまとめるのを目的にしている。他の場所や、今後のエントリで、この立場を裏付ける様々な論拠を示す予定だが、今回はひとまず、この私の見解がどのようなものか知ってもらうために、分かりや
武器に転用された相互依存を減らす トランプが試みて失敗したことを,いまバイデンと議会が試みている:中国企業が所有している動画アプリ TikTok の強制的な禁止だ.親会社の ByteDance が同アプリをアメリカ企業に売却しないかぎり,アメリカ国内での運営を強制的に停止しようと,バイデンたちは試みている.これには理由が2つある.そして,そのどちらも,「アメリカの子供たちの注意力が下がるのを防ぎましょう」とか「アメリカ企業を競争から救いましょう」といった話と関係がない. TikTok禁止に動いている理由は次の点にある: TikTok はアメリカ人ユーザーたちに関するデータを中国共産党に送信していて, しかもTikTok はおそらく中国寄りの検閲を受けており,アメリカ人ユーザーたちが中国共産党のさまざまな目標を支持するように誘導しようと試みている. ごく簡潔に,それぞれの理由について話そう.
How to build a state Words by Anton Howes, Works in progress, 28th August 2020 歴史を通じて、国家は、権力の維持に苦闘している。資金を調達したり、市民を統治するためには、民間の護衛官 [1]訳注:主に近代国家以前に、国家によって限定的に権力を与えられた準官吏や民間人のこと や〔民間人の〕用心棒に頼らざるをえなかったのだ。国家は、どのようにして今日の形態に移行したのだろう? 人は、政府が今日のような官僚制度をずっと昔から備えていたと簡単に想定してしまう。17世紀における〔特定利権者への〕独占権の広範な付与や、強大な権力を備えた領土保有貴族のような政治制度は、今より腐敗していた単なる時代遅れの異物のように見えているだろう。19世紀半ばになるまで、政府が医療や教育にほとんど関与していなかった事実は、人々の脳裏からは欠落
Paul Krugman “The Right Course for a Troubled Japan,” Krugman & Co., November 26, 2014. [“Structural Deformity,” The Conscience of a Liberal, November 20, 2014.] 苦しむ日本がとるべき道筋 by ポール・クルーグマン Stephen Crowley/The New York Times Syndicate 日本の安倍晋三首相が消費税増税の延期を模索してるのは,正しい.延期はいい経済政策だし,ぼくにとってはかなり新鮮な経験でもある――国のリーダーと会って,正しい政策の主張をして,その相手がまさにそのとおりにやってるんだもの.(もちろん,同じ主張をしてた人はぼく以外にたくさんいる.) ただ,懐疑の声もたくさんある.全面的に正当な疑いだ:
Paul Krugman, “Japan: Don’t Ruin A Good Thing”, September 19, 2013. 日本:いいところを邪魔すんな by ポール・クルーグマン Paresh/The Khaleej Times – Dubai, UAE/CartoonArts International/The New York Times Syndicate ここまでのところ、アベノミクスはホントにホントうまくいってる。「日本銀行は変わったんだ」、「宴もたけなわのところで酒瓶を片付けてしまうようなマネはしない」、「持続的なプラスのインフレ率を目標にする」とシグナルを送り、また、債務は高水準ではあるものの、なんらかの財政刺激をまもなく行うというシグナルも送ることによって、日本の当局者たちは、短期の経済実績で刮目すべき転回を成し遂げた。 でも、この短期の成功は、自己破滅的なお
Tyler Cowen “Why don’t people have more sex?” Marginal Revolution, May 9, 2005 以下は当ブログの熱心な読者であるマイケル・ヴァッサーのコメント どのような形態の帰結主義も,性的な行動の解釈に多大な困難を伴います。端的にいえば,説明できないセックスの不足があるのです。女性も男性もその他のほとんどの活動よりもセックスを楽しく思う(これは平均としての話で,私がそう感じるかは別の話です)ことを示す研究や,セックスが本質的に低コストであることを踏まえれば,おおざっぱな推定に推定したとしても,効用を最大化する人はほとんどの人よりもおそらく多くの時間をセックスすることに費やすように思えます。この点に関する経済学的な議論を何かご存知でしょうか。 僕らに必要なのは正当事由というよりも,取引を拒むことから利益が生じる理由だ。いくつか
Paul Krugman, “Why Economists Worry About Population Growth,” Krugman & Co., May 30, 2014. [“Demography and the Bicycle Effect,” May 19, 2014;”Cheese-eating Job Creators,” May 21, 2014.] なんで経済学者は人口成長を気にかけるの? by ポール・クルーグマン Edwin Koo/The New York Times Syndicate 経済学者アルヴィン・ハンセンが「長期停滞」(secular stagnation) の概念をはじめて提案したとき,彼は投資需要の低迷に人口増加の鈍化が果たす役割を強調した. 現代の議論は,この強調点をふたたび取り上げるようになっている:日本の労働人口減少は,あの国が抱えるいろん
The Japanese As A Creation Of The Christian Era POSTED ON SEPTEMBER 18, 2021 BY RAZIB KHAN 日本は、弥生人と縄文人の統合体であり、弥生人が優位になって列島に稲作をもたらした、というのがこのブログでも以前に言及した伝統的な解釈である。しかしサイエンス誌に掲載された新しい論文によるなら、もっと複雑かもしれない。 古代のゲノム解析は、日本人個体群に3つの起源があることを明らかにする。 先史時代の日本は、3000年かけて、狩猟採集から始まり、水田での稲作、そして国家の形成へと急速な変化を遂げた。列島の日本人個体群は、狩猟採集を行っていた縄文人と、農耕民の弥生人の二重の先祖を持つ、との仮説が長年受け入れられてきている。しかし、農耕民族の移動とそれに伴う、社会文化の変化がどのようにゲノム的影響を与えたのかは依然不
ChatGPTをはじめとする生成AI(人工知能)の目覚ましい成功は、機械の台頭が労働者にどのような影響をもたらし、最終的に我々の社会をどう変えるのかについて沸騰していた議論にさらに火をくべた。破滅派は、ロボットが人間に取って代わり、人類文明を滅ぼすだろうと予測している。楽観派は、成長に伴う苦しみは避けられないが、乗り越えれば、新たなる知的機械によって我々社会はもっと良くなるだろうと主張している。なんだかだいっても、人類は、過去の技術革命を特に悲惨な結果とせずに、うまく消化してきている。 しかし、歴史から学ぶのは、簡単ではない。AIによる革命は、我々社会に新たな予期せぬストレスをもたらすだろう。現在、技術のシフトのもたらす勝者と敗者について議論されているが、これは重要な側面を欠いている。技術シフト後に社会・政治的な混乱がどれだけ生じるかも重要だ。 この原理の極端な例として、ある特殊な労働者階
[Noah Smith, “People are realizing that degrowth is bad,” Noahpinion, September 5, 2021] 脱成長論者が提唱してる狂った構想は,地球を救う本物の対策からぼくらの気をそらしてしまう幻想だ. 「脱成長」を唱える人たちがいる――地球を救うために経済成長を停止する必要があるのだと,彼らは言う.今回は,これがすごくダメなアイディアである理由を解説する長文記事を書くつもりでいた.ところが,ぼくが書くまでもなく,すでにそういう文章を書いてる人たちやポッドキャストで語ってる人たちが他にいる.たとえば,ブランコ・ミラノビッチ,ケルゼイ・パイパー,エズラ・クラインといった人たちだ.そこで,かわりに今回は各種の脱成長論をカタログにまとめて,その要点をとらえることにしよう. ただ,その前にまずは,標準的な主張を見ておこう.そうす
Joseph Heath, “Vaccination is a collective action problem“, (In Due Course, February 5, 2015) 何週間か前、集合行為問題の理屈を理解することは多くの人にとって難しい、という投稿を書いた(ホッブズの難しいアイディア)。集合行為問題とは、人々のやりとりがよくない結果にいたるのだが、だれもそれを止める動機を持たない、という状況のことだ。 NHL選手(の間でのおたふく風邪の流行) [1] 2014年にナショナルホッケーリーグ − NHL – 選手の間で起きたおたふく風邪の流行 や トロントでの麻しんの流行で予防接種がニュースになっているので、私はこのところ毎日この問題を考えてしまう。ワクチン接種に関する議論にずっと私はイライラしているのだ。なぜかというと、みんな自分の子供にワクチン接種を受けさせない親は不合
ソーシャルメディア利用と精神衛生の悪化の相関を見出してる研究は山ほどある.でも,de Mello, Cheung, & Inzlicht によるこの研究こそが,ぼくにとっては真打ち登場って感じだ: 世間の論議では,よく,Twitter(現 X)がユーザーと社会に有害な影響を引き起こすと言われている.本稿では,合衆国の Twitter ユーザーたちの代表的標本から252人の参加者を得て調査を行うことで,この研究課題に取り組む.我々は,一日5回の質問を7日間にわたって継続した(6,218回の観察).調査結果から,Twitter 利用が幸福度の悪化および政治的二極化・怒り・帰属感覚の増加に関連していることが明らかになった.効果量は,社交的なやりとりが幸福度にもたらすものに近い.こうした影響は,人口統計上の特徴〔年齢や居住地域や就業状況など〕や性格特性を考慮しても一貫していた.データから推測される
From VoxEU, “Fake news and fact checking: Getting the facts straight may not be enough to change minds” Oscar Barrera, Sergei Guriev, Emeric Henry, Ekaterina Zhuravskaya (02 November 2017) 「フェイクニュース」は今や欧米の政治を語る上で欠かせない要素となった.このコラムでは,2017年の仏大統領選挙期間中に実施された実験を題材に「代替的事実(オルタナティブファクト)」が高い説得力を持つことを示す.ミスリーディングな数値データに基づく物語に触れた有権者たちはポピュリストの主張する方向に意見を変え,ファクトチェッキングはこの効果を打ち消す役に立たない.それどころか,デリケートな論点(たとえば欧州の難民危機)に
[Alex Tabarrok, “The Gender Gap in STEM is NOT What You Think,” Marginal Revolution, September 12, 2017] NBER の新しい論文 (pdf) で David Card と Abigail Payne が STEM〔科学・技術・工学・数学〕の男女差についておどろきの新しい説明を提示している.通説だと,そうした男女差は女性に関わることであり,いろんな力がはたらいて――〔全般的な〕差別,性差別,適性,選択…お好みの要因をどうぞ――女性が STEM 分野で勉強しにくくなっているのだと考える.Card と Payne が言うには,男女差のかなりの部分は男性たちと彼らの問題に関わるものだ.少なくとも,彼らが出している研究結果をぼくはそう解釈してるけど,どうも著者たちはじぶんたちが出した研究結果がどう
[Noah Smith, “Why immigration doesn’t reduce wages,” Noahpinion, December 30, 2020] 証拠に耳をかしてもらえるわけじゃないけれど… この記事では,移民がやってきても,その国で生まれ育った人たちの賃金が下がらない理由を解説する(ただし,一握りの特別な状況ではもしかすると少しばかり下がるかもしれない).ただ,その話に入る前に,ぜひ理解してほしいことがある:誰も,この記事で意見を変えないだろうってことだ.それには2つ,理由がある. 第一に,人々は社会科学の証拠をほんきで信じていない.頑健な研究結果のほぼすべてが同じ方向を示していても,最低賃金の効果について大学の経済学者たちの意見が実証研究によって変わるまで,何年も,何年もかかった.大学の経済学者ではないふつうの人となると,信頼できる社会科学がどういうものなのかって
Paul Krugman, “Don’t Raise Taxes Just Yet, Japan,” Krugman & Co., November 14, 2014. [“Japan on the Brink,” The Conscience of a Liberal, November 4, 2014.] とにかくいま増税しちゃだめよ,日本さん by ポール・クルーグマン Ko Sasaki/The New York Times Syndicate 現実の政策をめぐって1国をあげて論争になるとき――アメリカではそういう論争は起きていない.なにしろ,アメリカの右派は自分が「知ってる」ことがすべてで,証拠に目を向けることも間違いを認めることもないからだ――その意志決定は,中身の重要度を上回る意義をもつ.より広くその国が向かう方向をそうした政策が象徴しているからだ. さて,日本では再度の消費
本記事では、8つの計量手法を用いて、ユーロ圏、イギリス、アメリカについて、量的緩和と伝統的金融政策〔短期金利の操作〕を比較し、インフレへの影響を検証する。
Alex Tabarrok “Girls’ comparative advantage in reading can largely explain the gender gap in math-related fields” Marginal Revolution, September 3, 2019 前に「男子の方が数学・科学に比較優位がある?(optical_frog氏による訳)」という記事で,男子は女子よりも読解がずっと下手だから数学に比較優位があることを示す証拠をご覧に入れた(男子が数学に大きな絶対優位をもつわけではないのだ)。みんなが自分の比較優位に特化するとすると,このことが女子よりも多くの男子が数学教育課程に入ることを容易に促してしまう。たとえ女子に男子と同じかそれ以上の才能があったとしてもだ。このことは以前書いたとおり。 さて,これで生徒たちにこう告げたらどうなるだろう―
Paul Krugman, “Redefining The Middle Class,” Krugman & Co., February 7, 2014. [“The Realities of Class Begin To Sink In,” January 27, 2014] 中流階級を再定義する by ポール・クルーグマン Victor J. Blue/The New York Times Syndicate アメリカにはおかしなことがあれこれある.その1つは,長らく見られる傾向として,自分のことを中流階級だと考えてる人たちがとてつもなく広範囲にまたがっている点だ――そして,彼らは自分を欺いている.国際的な基準にてらせば貧困者ってことになるはずの低賃金労働者たちは,中央値の半分を下回る所得でありながらも,自分たちは中の下にあたる階層だと考えている.その一方で,中央値の4倍や5倍の所得を
Paul Krugman, “A Virtual Currency Raises Real-World Questions,” Krugman & Co., January 9, 2014. ビットコインが提起する現実世界の問題 by ポール・クルーグマン Nancy Palmieri/The New York Times Syndicate 実証経済学(実際の物事の仕組み)と規範経済学(物事のあるべき姿)の区別は,いつだって大事で,いつだって難しい. 実際,これまでぼくが書いてきたマクロ経済のいろんな問題では,すごく大勢の経済学者たちが,その区別をしっかりできないでいる.彼らは政治的な理由からでしゃばりな政府を嫌っていて,そこから,財政刺激がうまくいかない理由だとか,金融刺激が破滅的な結果をもたらすだろうといったことについて,ほんとにひどい論証を展開するにいたっている. でも,ここではマ
Paul Krugman, “Poor Billionaires, Victimized by Highfalutin Ideas,” Krugman & Co., March 28, 2014. [“High Fallutin’ Nazis,” The Conscience of a Liberal, March 18, 2014] あわれな億万長者,尊大な思想とやらに犠牲者気分 by ポール・クルーグマン MEDI/The New York Times Syndicate さあ,また一人ご登場ですぞ.格差について語るヤツはどいつもこいつもナチだと思ってる億万長者どのがまた現れた.今回は,ホーム・デポの共同創業者ケン・ランゴンだ.これについて,ぼくはとくに有用なことは言えない.言えることは,こういう連中はいっぱいいるにちがいないって所見くらいだ. つまりね,億万長者なんてそんなに大勢いな
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