もちろんこれは歴史的事実とは異なる。歴史的事実としては、官僚制は君主制や権威主義体制の下で王や支配者に仕える統治機構として、長らく存在してきた。そうした官僚制の中には、民主化の際に抵抗を見せ、民主化後も議会にの統制に服しないものも見られた。しかし、たとえ事実としてそういった官僚制が存在するとしても、現代の民主制の下では正統性を得られない。正統性を備えない存在が長期にわたり持続することは不可能である。歴史的事実には反するフィクションであっても、社会契約説に基づき代表民主制を捉えることが、その性格を理解する上で有効であるのと同様、官僚制もまた、現代民主制における本人・代理人関係のなかに位置づけることが、その最適な理解の方法である。(42-43p) これは、この本の第2章にある「政治家たちと官僚制の関係は、本人・代理人(プリンシパル・エージェント)関係の典型例であり」という文章につけられた注です