アイヌとは誰のことか、どこから来て、どこへと向かうのか──芦原伸の『ラストカムイ』は、砂澤ビッキという昭和を生きたあるアイヌの足跡を丹念に追うことを通じて、かかる“厄介”な問いへと向き合った一冊だった。 札幌の森に吹く「四つの風」 アイヌとは誰のことか、どこから来て、どこへと向かうのか── 芦原伸の『ラストカムイ』は、砂澤ビッキという昭和を生きたあるアイヌの足跡を丹念に追うことを通じて、かかる“厄介”な問いへと向き合った一冊だった。普段、僕は書評や感想というものをあまり書かないのだが、この本についてはどうしても書かずにいられそうにない。それくらい、僕はこの『ラストカムイ』に食らってしまった。ツイッターで済まそうとも思ってはみたものの、それにしてはいささか長くなりすぎてしまいそうだ。折角なのでここにひっそりと、感じたところを書き綴ってみることにしたい。 本書の主人公である砂澤ビッキとは、北海