この国にカジノがないのが不思議なくらい日本人は賭け事が好きである。どんな田舎に行っても派手なパチンコ屋があり、平日の昼間からにぎわっている。競馬場には毎週何万人もの善男善女が訪れ、来週の日本ダービーでは何百億円もの馬券が売れる。 ▼自転車、ボート、オートバイとギャンブルの種は尽きないが、歴史と伝統で江戸時代の富籤(くじ)を祖先に持つ宝くじの右に出るものはない。貧乏人にとっては、わずかな元手で一獲千金の夢が見られ、興行元にとってはぬれ手で粟(あわ)のごとくカネが転がり込むとあって関西から瞬く間に江戸に流行が広がり、寛永年間には禁令が出ている。 ▼8代将軍吉宗の時代になると、寺社の修復資金調達に限って公認され、湯島天神、目黒不動、谷中の感応寺が「江戸の三富」と呼ばれた。その後も庶民の娯楽として大いにはやったが、天保年間に老中・水野忠邦が全面禁止してしまう。 ▼まじめな彼にしてみれば、働かずして