魚の締め方は漁師の経験に頼ることが多いが、山形県水産研究所は鮮度保持に最適な冷却温度などを科学的に分析している=同研究所提供 日本海沿岸では、これまでほとんど取れなかった南方系の魚の豊漁が続いています。地元ではほとんど食べる習慣がありません。漁獲の急増によって、漁法や流通のあり方まで変更を迫られています。第3章は、日本海を北上してきたサカナに注目します。 第3章 北上する魚たち(1) 地域の漁業のかたちを変えてしまうほどの「バブル」は、突然訪れた。 「近ごろ、見たこともない魚が網にかかっているぞ」 山形県鶴岡市の漁師、本間和憲さん(53)は2005年ごろ、先輩の漁師たちからそんな話を聞くようになった。山形県の漁業は、底引き網によるタイやノドグロなどの水揚げが中心だったが、体長が70センチくらいある「サワラ」が網にかかりだしたのだ。食べてみると、脂のうまみが口の中に広がり「こりゃいいわ」と驚