山田風太郎『八犬伝』をこのところ読んでいました。以下、感想。 曲亭馬琴は構想していた。海の向こうで紡がれた大古典、『水滸伝』を下敷きに、宿縁によって集った勇士たちが正義をなす物語を。八犬士たちが躍動する「虚」の世界と、曲亭馬琴の身にふりかかるよしなしごとを描く「実」の世界、28年にわたって繰り返される往復の果て、やがて虚実冥合の境地に至る......。 山田風太郎による『南総里見八犬伝』の翻案は、同作の骨組みを取り出して鮮烈な活劇へと再構成した「虚の世界」と、その作者曲亭馬琴の生活世界を舞台とする「実の世界」を互い違いに描く構成。「虚の世界」は執筆以前に葛飾北斎などの知人に馬琴が語ったものという位置づけになっており、大胆な省略がエクスキューズされているが、まさにこの省略ゆえに活劇としてのダイナミズムはいかんなく発揮されていてめっぽうおもしろい。室町期に飛び散る血しぶきの鮮烈さは、山田風太郎