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ブックマーク / amberfeb.hatenablog.com (9)

  • なぜ空想は書かれたか?——山田風太郎『八犬伝』感想 - 宇宙、日本、練馬

    山田風太郎『八犬伝』をこのところ読んでいました。以下、感想。 曲亭馬琴は構想していた。海の向こうで紡がれた大古典、『水滸伝』を下敷きに、宿縁によって集った勇士たちが正義をなす物語を。八犬士たちが躍動する「虚」の世界と、曲亭馬琴の身にふりかかるよしなしごとを描く「実」の世界、28年にわたって繰り返される往復の果て、やがて虚実冥合の境地に至る......。 山田風太郎による『南総里見八犬伝』の翻案は、同作の骨組みを取り出して鮮烈な活劇へと再構成した「虚の世界」と、その作者曲亭馬琴の生活世界を舞台とする「実の世界」を互い違いに描く構成。「虚の世界」は執筆以前に葛飾北斎などの知人に馬琴が語ったものという位置づけになっており、大胆な省略がエクスキューズされているが、まさにこの省略ゆえに活劇としてのダイナミズムはいかんなく発揮されていてめっぽうおもしろい。室町期に飛び散る血しぶきの鮮烈さは、山田風太郎

    なぜ空想は書かれたか?——山田風太郎『八犬伝』感想 - 宇宙、日本、練馬
    tegi
    tegi 2022/07/21
    読み直したくなった
  • 黄昏と殺伐の時代の生存戦略——テレビアニメ&アニメ映画ベスト10で振り返る2010年代 - 宇宙、日本、練馬

    はやいもので、もう2020年も暮れようという感じでございますが、2010年代からあまり遠く離れないうちに、わたくしにとっての2010年代の経験とはなんだったのか、書き留めておこうと思います。この試みはなかなか難儀なもので、総花的に語ろうとするといつまでたっても終わらず中途で投げ出してしまったのですが、さしあたってこの10というリストを作成し、そこにわたくしの経験を託すという仕方であれば、零れ落ちるものは膨大になるでしょうが、ひとまず形にすることはできるだろうと思いまして、その方針でやっていくことにしました。 さしあたってテレビアニメ10、アニメ映画10をセレクトし、わたくしの10年代を語っていきます。わたくしのフィクション経験を広くカバーしたい気持ちがあるため、制作会社や制作者などの固有名がなるべく重複しないかたちで選出しました。よって純粋なベスト10とはやや趣が異なるわけですが、や

    黄昏と殺伐の時代の生存戦略——テレビアニメ&アニメ映画ベスト10で振り返る2010年代 - 宇宙、日本、練馬
    tegi
    tegi 2020/12/31
    単純に自分の好きな作品が多くてわあいとなってしまった
  • 服を買いに行く服がない、あるいは『Fate/Grand Order』の序盤が異様につらいという話 - 宇宙、日本、練馬

    『Fate/Grand Order』の序盤のつらさ、それは服を買いに行く服がないというつらさなのである。 昨日の生放送で、『Fate/Grand Order』2000万ダウンロードキャンペーンの一環として、星5サーヴァントの配布が発表されました。 【カルデア広報局より】 2000万DLを記念したキャンペーン「2000万DL突破キャンペーン」は2020年4月29日(水)18:00より開催予定! お知らせ内にキャンペーンの詳細を掲載いたしましたのでご覧ください!詳しくは→https://t.co/WmnNMPz7EV #FGO pic.twitter.com/nRbDyG54nw — 【公式】Fate/Grand Order (@fgoproject) 2020年4月25日 これまで、星4サーヴァントは何回か配布されており、わたくしもその恩恵に浴してきた一人なのですが、星5サーヴァントの配布は

    服を買いに行く服がない、あるいは『Fate/Grand Order』の序盤が異様につらいという話 - 宇宙、日本、練馬
    tegi
    tegi 2020/04/26
    そういえば自分も冬木途中で放り投げていた時期があったのだった。今ではあのつらさすら愛おしいですが…
  • ニック・キャラウェイにとってジェイ・ギャツビーの偉大さとは何か - 宇宙、日本、練馬

    スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』という小説がある。言うまでもなく、極めて著名な作品である。幾度も映画化され、それらのうちのいくつかを私たちは容易にみることができる。そして、ありがたいことに、日語にも何度も訳され、いくつもの翻訳を手に取ることができる。ここで書き留めたいのは、それらの差分である。結論を言えば、いま新品を手に入れることのできる3種の日語訳、野崎孝訳、村上春樹訳、小川高義訳は、それぞれ別の結末をもつ。 別の結末を持つ、といっても、それは3種の日語訳がまったく違うあらすじをもつ、ということを意味しない。そんなことがおきては、それは翻訳の領分を大きく超える仕事がなされているか、いずれかの翻訳に致命的かつ大掛かりな誤りがあることになる。そんなことは、たぶん、ない。 それではなぜ別の結末を持ちうるのかといえば、これはギャツビーという男の物語が、ニック・キャラウ

    ニック・キャラウェイにとってジェイ・ギャツビーの偉大さとは何か - 宇宙、日本、練馬
    tegi
    tegi 2019/09/23
    おもしろい!ぼくは野崎訳が好きで、でも作品の印象は村上のいうものに近い気が。
  • フォースの外へ――『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』感想 - 宇宙、日本、練馬

    『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』を字幕版でみました。以下感想。 遠い昔、遥か彼方の銀河系。惑星を牛耳るマフィアにこき使われ、日々犯罪に精を出して生きる青年、ハン。彼は目指していた、ここではない、どこかを。 若きハン・ソロを主役とした『スターウォーズ』シリーズのスピンオフ。『最後のジェダイ』の感触がいまだ生々しいこのタイミングでの公開は、いささか分が悪いのではと思わないではないが、ロン・ハワード監督の手によって現代的でウェルメイドな娯楽映画になっていたように思います。シーンとシーンのあいだを結構大胆にカットして退屈を許さない編集がその「現代の娯楽映画」的な印象をとくに強めている。2時間20分あまりの短くない時間を退屈せず楽しめました。 さて、いままでの『スターウォーズ』がそうだったように、若きハン・ソロの物語も、「何処か遠く」に行きたいと願う若者の物語であり、それこそがこの銀河系

    フォースの外へ――『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』感想 - 宇宙、日本、練馬
    tegi
    tegi 2018/07/02
    "魔法世界をホグワーツから解き放った『ファンタスティックビースト』と結構似てるよね"
  • ラジオの得難いささやかさ――『きみの声をとどけたい』感想 - 宇宙、日本、練馬

    『きみの声をとどけたい』をみました。今日から上映だってのを知ったのが先週『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』をみたときの予告だったんですが、見逃さなくてよかったです。以下感想。 市内を路面電車が通る海沿いの街、日ノ坂町。私たちが鎌倉という名で知る場所とよく似た場所に、彼女は住んでいた。高校2年の夏休み、偶然雨宿りした場所が、彼女の世界を変えてゆく。 声に出したことは当になる、という祖母の教えを信じる高校生、行合なぎさが、ミニFMのラジオ放送を通じて、友人関係、あるいは彼女の未来にまつわる問題を解きほぐしていく。素朴で邪気のないキャラクターデザインが作品の雰囲気を決定していて、シリアスな展開でも過度にギスギスはせず、柔らかな雰囲気が全体を貫いている。ミニFM局を中心に編成された日ノ坂町のひと夏をゆったりと過ごしていくような感覚がある。 FM局にあつまった人間たちのうち、物語の語り

    ラジオの得難いささやかさ――『きみの声をとどけたい』感想 - 宇宙、日本、練馬
    tegi
    tegi 2017/08/27
    "さりげなく、そして得難い友人としてある、『きみの声をとどけたい』はそういう映画だった"
  • Run for your life ――『ポッピンQ』感想 - 宇宙、日本、練馬

    『ポッピンQ』をみました。以下感想。 高知県の海沿いの街に住む中学3年生小湊伊純は、卒業式を間近に控えて屈とした気持ちを抱えていた。陸上のタイムが伸びないこと、親の都合で春から東京に引っ越すことになってしまったこと、そして過去の失敗。そんな彼女が偶然に異世界に迷い込み、そこで同じく後悔を抱えた少女たちと出会うことで、物語は始まる。 少女たち5人が、異世界での経験を経て後悔を振り切って成長し、再び現実世界へと帰ってゆく『ポッピンQ』の物語は、きわめてウェルメイドな「行きて帰りし物語」で、おそらくはメインターゲットである女子小学生・中学生に大事なことを伝えたい、という真摯さが全体のトーンを規定しているという印象。僕はあまり文脈を理解しないのだけれど、東映アニメーションの魔法少女もの、『プリキュア』的な作品群の延長線上に位置づけられる作品なのだろうなと。 教育的なメッセージを単に伝える、という

    Run for your life ――『ポッピンQ』感想 - 宇宙、日本、練馬
    tegi
    tegi 2016/12/30
    “悪役が、なんというか、圧倒的に『STAR DRIVER 輝くのタクト』じゃねえか!みたいになって映画館で一人快哉を叫びました”
  • 戦争を語る構えについて―『野火 Fires on the Plain』感想 - 宇宙、日本、練馬

    『野火』を渋谷ユーロスペースでみました。Twitter上で褒めてる人が多かったので見に行かねばと思っているうちに日がすぎてしまったのですが、これは劇場に足を運んで当によかった。見始めてしまったら逃げ場無しという状況に加えて大音響で鳴り響く叫びと哄笑と蠅の羽音。家で観るのとは没入感が雲泥の差どころではないと改めて感じました。以下で適当に感想を。 弛緩した戦場 アジア太平洋戦争末期。フィリピン、レイテ島。かつて外部にある敵を打ち倒すためにそこに渡った兵士たちは、敗色濃厚になるにつれその敵の姿を見失い、最大の敵はもはや自身の内にあるもの、飢えと病となっていた。肺を患い外部の敵と戦う能力を喪失した田村一等兵は、ただ密林のなかを彷徨いつづける。彼は何のために歩き続けるのか。その彷徨の果てに、彼はどこに辿り着くのだろうか。 『野火』は、旧日軍の兵士たちが最後にはどのような状況に陥っていたのかを、彼

    戦争を語る構えについて―『野火 Fires on the Plain』感想 - 宇宙、日本、練馬
    tegi
    tegi 2015/09/02
    "わからないからといって、それについて語ってはならない、ということではない、ということも同時に雄弁に語っている"
  • 目指すは楽園、駆けるは荒野―『マッドマックス 怒りのデス・ロード』感想 - 宇宙、日本、練馬

    『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を3D吹き替え版でみました。もうね、最高としか言いようがないやつじゃないですか。最高でした。以下で感想を。ネタバレがあります。 楽園を目指す者たち 荒野を一人で旅する男、マックス・ロカタンスキー。なんかめっちゃやばい奴であるイモータン・ジョーの部下の数の暴力によりあっさり捕縛された彼は、「輸血袋」として裏切り者の女大隊長、フュリオサを追うイモータン・ジョーと愉快な野郎どもにとともに不毛の荒野、デスロードを疾走することになる。主人公なのにモノ扱いされ車のフロントに磔にされる姿が最高にロック。 しかしマックスは主人公、いつまでも「輸血袋」をやってるわけにはいかない。命からがら脱出し、フュリオサと彼女とともに「緑の地」をめざす女たちになんやかんやで協力するような形になる。逃げる女(とマックス)、追う野郎ども、という極めてシンプルな構図。その逃走劇が『怒りのデ

    目指すは楽園、駆けるは荒野―『マッドマックス 怒りのデス・ロード』感想 - 宇宙、日本、練馬
    tegi
    tegi 2015/06/28
    ”『怒りのデス・ロード』における対立は、男と女のそれというよりは彼岸に恋い焦がれるものと、あくまで此岸で生きようとするものの対立なのだ”
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