夜道を自転車で走る際に、並ぶ街灯に当てられ影が前へ迫(せ)り出してくる現象。平たく言えば光源が後方へ下がることで影が前方へ移動しているわけですが、おそらくこの表現をアニメで観たのは初めてだったと思います。本作のリアル度合いに関しては以前の記事でも触れたところですが、こういった描写を逃さずしっかりと抑えるからこそ本作の質感は保たれているのでしょうし、日常にある些細な風景までも描こうとする拘りにはさすがだなと言いたくなります。 それもただ現象や風景を再現するだけでなく、そこにしっかりと登場人物たちの感情を同期してくれるのが良いです。「私とお付き合いしてください」と森川に告白された陽人の高揚に合わせるよう、前へ迫り出す影のスピードが少しずつ早くなっていくのは特に顕著です。ここでは後方へガードレールが流れていくスピードも変化しているのですが、視線誘導的にも影の方がこのカットでは主役だったのだと思い