緑の道を抜けて、ホールに入る。ガラス張りのロビーに設置されたライブ写真や巨大なリンゴのオブジェを眺めたあと、重い扉を開き、リクライニング式になっている座席に腰を下ろす。街中にあるホールで、安藤裕子の音楽を聴くというのは、ひどく贅沢な時間のように感じる。日常の真ん中で日常が消えていく。日々のあれこれで強ばった心が次第に解けていき、いつしか、家族や友人、大切な人と再会したような穏やかな気持ちになっていく。おかえり、ただいま。久しぶり、元気だった? さよなら、またね。きっと元気でいてね……。「今日がいちばん楽しいという日が、ずっと続くといいなと思いながら歌ってる」という安藤裕子の歌声には、何気ないけれども優しさを感じる、願いのような思いが込められているように思う。みんなの今日が、明日が善き日でありますように。観客も彼女に対して同じ気持ちでいる。今年で6年目を迎えた安藤裕子のアコースティックツアー