「放射線による被ばく」と聞くと、原子力施設での事故を思い浮かべる。茨城県東海村での臨界事故では、被ばくで作業員2人が亡くなっている。原子力を担当する私は、過去の原子力事故の被ばく問題を取材していた。そんな時、ある専門家が次のようなことを私にふと漏らした。 「実は医療従事者の被ばくが深刻なんだよね」と。 「医師の被ばくが深刻?」いったいどういうことなのか。取材はこの一言から始まった。 (科学文化部 重田八輝) 1999年9月、茨城県東海村の核燃料加工工場で起きた臨界事故。作業員2人が大量の被ばくをし、その後亡くなった。当時、国内最悪の原子力事故と呼ばれていた。 原子力事故による被ばく医療がどこまで進んだのか、課題は残されていないのか。取材のため、東京・目黒区にある東京医療保健大学の名誉教授、草間朋子さんを訪ねた。草間さんは放射線防護の専門家である。原子力事故による被ばく医療に関して一通り、話