中国・上海市で開催された世界最大級の家電見本市「AWE(Appliance & Electronics World Expo)2024」(2024年3月14~17日)を取材していると、中国Haier Group(ハイアールグループ)のブースで不思議な展示を見つけた。同社の冷蔵庫「DELICACY」シリーズの新型モデル「Boguan 660」のチルド室に、2個の方位磁石が設置されていたのだ(図1)。
千葉県流山市のデータセンター(DC)の建設計画が、地域住民の反対で頓挫した。かつてDCは都心部の商業地域や工業地域に建てられることが多かった。ところが近年は大規模DCが住宅のある郊外地域に作られるようになったことで、住民から「迷惑施設」扱いされている。立地に細心の注意を払わなければ、今後もDC建設は頓挫しかねない。 千葉県流山市:第一種住居地域だった土地に大型DCの建設計画 2023年12月に頓挫したのは、東京都渋谷区に本社を置く「流山綜合開発K」という企業が、流鉄流山線流山駅の駅前、流山市役所の目の前にある1万2877平方メートルの土地で進めていた、地上4階・地下1階建てで高さ28メートルのDC建設計画だ。流山綜合開発KはこのDC開発のために設立した特定目的会社だ。 開発区域はもともと「飛地山」と呼ばれていた場所で、ある企業の保養所が建てられ、山は樹木に覆われていた。2018年ごろにマン
みずほフィナンシャルグループ(FG)が、2024年内にもシステム運用業務に生成AI(人工知能)を本番導入する。勘定系システム「MINORI」を中心とした重要システムが対象だ。監視システムから受け取ったエラーメッセージに応じて、オペレーターに対応内容を提示する。2023年に構築した運用業務の新システムと合わせて、8割のメッセージを自動処理できる体制も視野に入れる。エラー対応の正確性確保に生かしたい考えだ。 「もともとは電話でやり取りしていたが、さばき切れない。一連のシステム障害での反省だ」――。みずほフィナンシャルグループ(FG)の山本健文執行理事IT・システム統括部共同部長は、過去のシステム運用体制を巡る課題を口にする。主要システムの監視システムが発するメッセージの種類は10万超。その量は障害発生などのピーク時には1時間当たり1万件を超えるという。 2021年のシステム障害前後、みずほの運
米国の核融合スタートアップであるHelion Energy(ヘリオン・エナジー)が、同社として第7世代となる磁場反転配位(Field-Reversed Configuration:FRC)型核融合実験設備である「Polaris(ポラリス)」の一部を稼働させ、FRC型プラズマを作成したとブログなどで明らかにした(図1)。 いわゆる「ファーストプラズマ」である。2023年11月末に成功したようだ。FRC型でないプラズマの生成は2023年7月時点で成功している。 今後は、これらの実験データに基づいて装置を改修し、核融合出力の向上を目指すという。早ければ2024年中に発電実験を始める計画だ。 FRC型核融合は、トカマク型核融合でも、レーザー核融合でもない第3の核融合発電方式といえる。 プラズマを生成し超高速でぶつける 具体的には、まず、細長い装置の両端でドーナツ状のプラズマパルス(プラズモイドとも
米OpenAI(オープンAI)は米国時間2024年2月15日、テキストの指示を基に最長1分の動画を出力できる生成AI(人工知能)「Sora」を発表した。一般公開せず、デザイナーや映画の制作者などだけにアクセスを許可。当面は専門家からモデルのフィードバックを受け付ける。同社は「AGI(汎用人工知能)を達成するための重要なマイルストーンになると考えている」とした。 Soraはテキストを動画に変換するAIモデルで、ユーザーのプロンプトを理解するだけでなく、「その指示が物理世界にどのように存在するかも理解している」(オープンAI)。高度な動画生成能力に加えて、最長1分という尺の長さも特徴。米Runway(ランウェイ)の動画生成AI「Gen2」は最長16秒、米Meta(メタ)の「Emu Video」は最長4秒にとどまる。 Soraが生成した動画の例。プロンプトは以下の通り。「暖かく光るネオンとアニメ
国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)に基づく社会活動が活発になり、ESG投資やグリーンインフラの実装といった取り組みが着実に進んでいる。こうした取り組みによって多様な生物が生息し、人が緑や自然を身近な存在と捉えられる都市整備が目立ってきた。 一方で、人が生活や経済活動などを展開する拠点である建物とその周辺に生息する生物との関係にあつれきが生じるケースも散見されている。その代表例の1つが、鳥や小動物などによる糞害だ。 本連載では、「一級建築士矩子の設計思考」(鬼ノ仁/日本文芸社)のキャラクターを使って新規に描き下ろしたイラストとともに、建築の危ないデザインを考える。 糞による被害は、美観を損ねるといった外見的な事象にとどまらない。クリプトコックス症やオウム病といった感染症に加え、寄生虫による疾病や健康被害をもたらすリスクもある。他方、鳥の捕獲や卵やひながいる巣の撤去などは鳥獣保護管
国土交通省の出張所長の男性がランニング中に歩道で滑って大けがを負った事故を巡る訴訟で、福岡地裁は道路の安全性に不備があったとして管理者の福岡県那珂川市に約280万円の損害賠償を命じる判決を言い渡した。男性は坂になった路面上のぬれたコケで転倒し、5mほど滑り落ちた。判決では、市と男性の過失割合を6対4と認定した。 転倒事故があった那珂川市の市道。6度ほどの下り勾配になっている。事故発生後、市はコケを除去し、擁壁の漏水対策を実施した(写真:日経クロステック) 事故現場は、山を切り開いて造った那珂川市の市道だ。男性が2020年8月10日午前8時45分ごろ、歩道をランニング中に萩ノ原峠付近の下り坂で転倒し、複数の肋骨を折る大けがを負った。男性は市道の管理に瑕疵(かし)があったとして、国家賠償法に基づき市に約1652万円の損害賠償を求めて福岡地裁に提訴した。 23年10月19日の判決で、福岡地裁は市
2023年10月10日午前8時30分ごろに発生した「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」の障害。全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は復旧に向けた対応を実施しているが、11日午前11時時点で解消のめどは立っていない。 全銀システムは東京と大阪の2カ所のセンターで並行運転し、システムを構成する各種装置や通信回線などをすべて二重化してある。顧客に影響が出るシステム障害が発生するのは1973年の稼働以降、50年間で初めてとなる。 今回、不具合が生じたと考えられるのは、金融機関が全銀システムに接続する際に使う中継コンピューター(RC)のプログラムだ。送金元の金融機関から送金先の金融機関に対して支払う「内国為替制度運営費(旧銀行間手数料)」の設定などをチェックする機能に不具合が生じたと見られる。 きっかけは保守期限到来に伴い、10月7~9日の3連休中に14の金融機関で実施したRCの更改
清水建設などのJVが、千葉県発注の護岸工事で設置した仮締め切り堤防の大型土のうを勝手に一部撤去し、その箇所から豪雨時に越水していたことが分かった。県の調査で他にも4カ所で、土のうを撤去したために必要な堤防高を満たしていないと判明した。県が2023年9月29日に明らかにした。 6個の大型土のうが撤去されていた明光橋下流の仮締め切り堤防。近くの護岸でひび割れを補修する際、必要な土の調達を怠り、土のうを解体して中の土を使用していた。越水発生2日後の2023年9月10日に撮影(写真:千葉県) 千葉県茂原市などで23年9月8日、台風13号に伴う記録的な大雨で広範囲にわたって浸水被害が発生した。県は、10月末をめどに有識者会議を立ち上げ、当該箇所からの越水と浸水被害との関係などを調べる。 問題があったのは、千葉県が茂原市と長生村で進めている2級河川一宮川の護岸工事だ。2工区に分かれ、いずれも清水建設と
2023年7月14日に発生した「イプシロンS」ロケット第2段地上燃焼試験爆発事故について宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製モーターケースの一部が想定以上の高温になって強度が低下し、燃焼時の内部圧力に耐えきれなくなって爆発した可能性が高いと公表した。 現在のところ、モーターケースが高温になった原因をJAXAは、「推進剤燃焼異常」「インシュレーション断熱不良」の2つにまで絞り込んでいる。 固体ロケットモーターの持病 実はこの2つは、20世紀半ばの固体ロケットモーター開発初期から、トラブルの2大原因だった。固体ロケットモーターが抱える持病といってもよい。この課題を解決するため、徹底した研究が行われてきた。その結果、先述した「推進剤燃焼異常」と「インシュレーション断熱不良」は共に「製造時の欠陥・不良」に帰着すると分かっている。 詳細は後述するが固体ロケットモ
秋田県横手市のJR横手駅東口で進む再開発事業が施工ミスに揺れている。アンカーボルトの位置を誤って施工したにもかかわらず、施工者が工事監理者に報告せずにビルの建築工事を進めていた。施工を担当した共同企業体(JV)を代表する横手建設(秋田県横手市)が2023年7月7日に発表した。このビルへの移転作業を進めていた団体が入居を延期したり、同じJVが請け負った工事が中断したりするなど、影響が広がっている。 この再開発事業では、公益施設、事務所・ホテルなどの複合施設、分譲集合住宅など計4棟を建設する。延べ面積は計約2万8400m2だ。実施主体は、事業地区内の地権者でつくる横手駅東口第二地区市街地再開発組合。総事業費は約110億円に上る。 施工ミスがあったのは、地上7階建ての複合施設「B-1棟」。延べ面積は約7500m2、構造種別は鉄骨造だ。施工者は横手建設・半田工務店・伊藤建設工業JV。22年6月に着
米Meta(メタ)は米国時間2023年7月18日、大規模言語モデル(LLM)「Llama 2」をリリースした。能力は米OpenAI(オープンAI)のLLMである「GPT-3.5」に匹敵するという。米Microsoft(マイクロソフト)との提携を拡大し、同社のクラウドサービス「Azure」を使って企業向けに提供する。 メタは、前モデルに当たるLLM「Llama」を研究用途に限って無料で提供していた。Llama 2は研究用途に加え、一般用途でも無料で商用利用可能なモデルとしている。 サイズ別に70億、130億、700億パラメーターの3種類のモデルを用意する。いずれも2兆トークン(おおよその単語数)の文章データで学習しており、入力の上限は4096トークン。教師あり学習によるファインチューニング(Supervised Fine-Tuning、SFT)と人間によるフィードバックを3モデルともに実施済
人の手を借りて目的を達成する「弱いロボット」の開発で知られる豊橋技術科学大学の岡田美智男教授。人とロボットの幸せな関係を探り続ける研究者は、「ChatGPT」をどう捉えているのか。人はAI(人工知能)といかに共生すればいいのかヒントを探る。 「弱いロボット」とは、どんな存在なのでしょうか。 猫型の配膳ロボットをご存じでしょうか。ファミリーレストランなどで導入されています。あれのすごいところは、ホールの中をよたよたと動き回って周りの子どもに通路を開けてもらったり、配膳ロボットなのにテーブルまで料理を運んだ後は、お客さんに手伝ってもらったりすることで配膳を成し遂げている点。ちゃっかり人に手伝わせているんです。けれど手伝った方も悪い気はしない。共存しているというか、互いにやれることを持ち寄って強みを引き出し弱みを補っています。 このロボットは、中国企業が開発して日本のファミレスなどに普及させた。
最近になってにわかに注目を集め始めた核融合発電技術だが、実用化は早くても2030年代半ば。やや保守的な評価では2050年かそれ以降という見方も多い。ところが、2024年にも発電を始めるというベンチャーが出てきた。 それはこれまでよく知られている大きく2つの方式、具体的には日本を含む数多くの国家が開発に参加し、フランスに建設中のITERのようなトカマク方式と、2022年11月に米国でレーザー光のエネルギーを超える核融合エネルギーが得られたレーザー核融合方式のどちらでもない、第3の方式「FRC(磁場反転配位)型プラズマ」に基づく注1)。核融合反応で中性子を出さず安全性が高く、簡素な設備で、しかも蒸気タービンを使わずに発電できる革新的な方式である。
国連が2022年7月に発表した「世界人口推計(World Population Prospects:WPP)2022」によれば、2050年の世界人口は約97億人(中間値)と、2021年よりも約18億人増加する見通しだ。国連食糧農業機関(FAO)の推定によると、この増加と富裕化を続ける人口を養うために、2050年までに農業生産量を現在より60%も増やす必要があるという。かなり大きな数字である。 一方で、FAOによると、世界の食用作物の最大40%が、植物病害虫の被害によって失われており、これによる農産物貿易の損失は、年間2200億ドル以上にのぼるという。農業生産量を大幅に増やすためにも病害虫被害の低減は喫緊の課題になっている。 これまで病害虫の駆除には、主に化学合成農薬が用いられてきたが、近年は病害虫が「薬剤抵抗性」を持つようになり、農薬が効かなくなってきたことが指摘されている。薬剤抵抗性とは
モダナイゼーション案件を数多く見てきた筆者の経験を基に、実際に起こり得る問題や現場の葛藤を架空の「事件簿」として紹介する本連載。今回紹介するのは、最先端のゲームプラットフォームを提供するA社で起こった事件だ。 40年ぶりのシステム再構築を襲った大誤算 A社は、ゲームソフト会社とライセンス契約を結ぶことでゲーム分野のビジネスを拡大してきた。ところが同社のライセンス管理と支払い請求を長期にわたって支えてきたシステムの老朽化が問題になり、40年ぶりに刷新することになった。 システムを刷新すれば、経営者が自社の状況を迅速に把握して意思決定ができるようになる。ただ現行システムは財務会計と管理会計が複雑に入り組んでおり、再構築は一筋縄ではいかないと予想された。そこで複数の会社でCIO(最高情報責任者)を務めてきた「プロCIO」のB氏が新たに参画することになった。 3年間に及んだプロジェクトが終わりに近
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